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『ぐりとぐら(渡すのは赤い子篇)』
★絵本シェルフ★
『ぐりとぐら(渡すのは赤い子篇)』
塾ではときどき子どもに「将来何になりたいか」を確認する。時代なのか、恥ずかしがって隠す子はまずいない(昔の私だったら、夢なんて人に話したりはしなかったけれど)。具体的な職業がない場合は、「どんな人になりたいか」を聞く。
虹色きらら(もうすぐ小6)にインタビューすると
きらら「パティシエもいいんだけど・・・」
私「お菓子屋さんってこと?」
きらら「あ、うん。はい。でも」
想像してみる。虹色きららを少し上下にひっぱって背を伸ばし、コック帽と白い制服を着せてみた。かなり似合う。自由が丘とか、代官山とかおしゃれな街で働いてそうだ。
きらら「でも、動物関係の仕事もいいかなって最近は思ってる」私「そっか。迷っちゃうね」
学芸会のときに「一番目立たない役」を選ぼうとするくらいのきらら。じっさい学校へ発表を観にいくと、舞台の上のきららはすごく短いセリフを目立たないようにさらっと言えていた。
動物関係の仕事――これもよさそう。動物とだったら仕事によっては言葉を使わない。はずかしがりはちっともマイナスにはならないし、楽しくやっていけるかもしれない。
迷っちゃうね、という私の言葉に微笑むだけで返事をしないきらら。
どっちもかなえちゃえば、とも思う。
きっとそういう社会だ。
きららに限らず、夢をそのまま「ちゃんとした仕事」にできるかはわからないし、したいこととできること・得意なことは違うだろうけど、夢は楽しく学び、生きるための道しるべや推進力になる。
そして「仕事の定義」をやわらかく、現状に即して再定義すれば、それぞれの夢をかなえるのはそれほど難しくない気がする。
そんな虹色きららの母、C・まゆみんは以前書いた通り、ぐりとぐらが大好きということだったけれど、先日たまたま学校の廊下で会った。
なんの行事もない、平日の朝、校舎の一階、保健室の前。
なんだか懐かしい気がした。
私「え? どうして学校に?」C・まゆみん「今日は読み聞かせの日なんです」
妻のマリネコが以前教えてくれた情報を思い出した。まゆみんは絵本が大好きで、絵本の読み聞かせをときどき学校でしている。
読み聞かせか。子どもが学校に通うまでは存在も想像もつかなかった種類の「仕事」だ。まゆみんが将来の夢に絵本関係を入れていたかはわからないけれど、大好きな絵本と関われる「仕事」をできているのは、きっと幸せなことだと思う。
C・まゆみん「先生は何で?」私「ん?!」
私はというと「算数の朝学習の手伝い」のボランティアで来ていた。
普段から仕事でさんざんまる付けをしているから、私にとっては少しも特別なことではなく普通の行為だけれど、もし「将来学校の先生になりたい」と思っていた人が、「朝学習の手伝い」をできたら、夢の一部がかなったような充実感があると思う。
一人一人の顔を見て、元気が出るように明るい声をかけて。
大げさにほめたり、ちょっとしたギャグで笑わせたりして。
自分は子どものときサッカー選手になりたかったんだけれど、それは抽象すると
「自分が毎日あきることなく磨きをかけたプレーを、誰かが喜んだり感動してしてくれればうれしい」
ということなんだと思う。
まず自分は好きなものを楽しんで熱心にやる。
そして次の段階は、夢中になりながらも「誰かに伝える」という部分を忘れないように、熱心さのかたちをデザインする。ファン(お客さん・生徒・読者)を頭に常に置き、期待や要望に応える。
それができたら、自分が飽きないように新しさを求めていく。新しくもそこにある、長期的で安心感を与えられる状態を目指す。
私が考える「こんな塾の先生がいたらいいな」は、生徒やその家族の好みや夢を知って、自分の経験とミックスして、次の一手を提示できる先生。
思いついたらブレーキをかけないで、助手席に子どもたちをのせて、思い切ってアクセルを踏んだり、ゆったりと一緒に旅へ出る仕事。
ホワイトデーのクッキーとして、C・まゆみん&きららにプレゼントしたものがある。
SUSUCREのお菓子。webサイトにはこんな紹介文がありました。
「いつも 一緒」そんなイメージで大好きな絵本作家の山脇百合子さんにイラストを描いていただきました。
山脇百合子さんはもちろん、「ぐりとぐら」の絵ですね。
さまざまな人の思いや夢がミックスして仕事ができていく。
そういう仕事が「ちゃんとした仕事」だと思う。
かわいい丸い缶の中身は、webサイトのこちらで見られます。
「動物とお菓子とぐりとぐら」
母子の夢がミックスされたピンクの缶を渡すと、きららは嬉しそうというより驚いた顔をした。
以前の絵手紙と対になるメモを添えて、この1年の頑張りをねぎらう。
また新しいシーズンが始まる。新学年も楽しい年になりますように。
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