月のパワーも借りちゃってるけどね 『ポニイテイル』★73★
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月明かりの下、ブラウニー図書館へ。
プーコが再びパナロさんに巻かれてバピューンと運ばれた少し後、それを追うように、ユニはあどを乗せて走っていました。あどはユニのクビに両手をまわして、ふり落とされないように必死でした。
ユニは体育館からかけ出ると、校舎の間を猛スピードでジグザグにすりぬけ、校庭を土けむりを上げながら走り、校門を抜けると直角に曲がり、最後の直線をフルスピードでダッシュしました。
「カッコイイよユニ!」
「ありがとうございます」
「ホントにカッコイイ! ユニコーン、速っ!」
巨大な13階建ての板チョコは、月光を受けて妖しくそびえ立っています。
その正面の、いちばん根元に白い小さなポニイの姿を発見しました。
たぶんまちがいなく、あれがウワサのペガです!
そしてなぜかペガにまたがって、ブラウニー図書館の前でスタンバっているあのガリガリ少女は——
「お~い。あどちゃ~ん!」
「ああ! プーコ!」
「ペガ!」
「ユニ!」
あどはユニにまたがりプーコはペガにまたがっていました。
これは組み合わせからいうと反対です。
「キサマ! 今日も学校休んだな! ウチらの誕生日なのに!」
「ごめん、メッチャ爆睡してた。さっきまでずっと」
「ウチ、もう、言いたいことがありすぎて破裂しそうだよ」
「ちょっとちょっとこんなそばで破裂しないでよね」
もともとプーコは気の毒なくらいやせっぽっちな女の子ですが、さらにほっそりとして、ユニの角のようです。
「プーコ、やせた?」
やせたと聞くと、プーコはたいてい気を悪くします。
「あどちゃんこそ、太った?」
プーコはにっこり笑いました。
「そうだ!」
あどはギリギリようやく、準備していたセリフが言えました。
「プーコ、おたんじょうび、おめでとう! すっごいプレゼントがあるんだよ!」
ブラックフォールでひろったユニコーンの角。
少女たちの目の前の、金色のポニイのたてがみに美しい角が立っています。
「これ! スゴイの! あ! でも、これはウチからじゃないか」
「いいえ。あどちゃんからのプレゼントということで良いでいいですよ。あなたが冒険して見つけてくれたのですから。あとで、図書館の屋上に上ったらプレゼントしますね」
ユニはやさしく言い添えてくれました。
「ユニ。ぼくの大親友ユニ! オレたち、おたんじょうび、おめでとう!」
とつぜん大きな声でそういったのはペガです。
ペガサスは、銀色の美しい翼を左右に広げ、ゆったりと大きく翼を羽ばたかせました。プーコを背中にのせたまま、ペガの体がフワーッと空中に持ち上がります。
「ペガ! 飛べるの?」
「ちょっと、月のパワーも借りちゃってるけどね。悔しいな」
ユニと同じようにペガの体は雪のように白く、ほのかに発光し、あたりをやさしく照らしています。プーコを背中にのせたペガは、そのままブラウニー図書館のまわりを、らせんを描くように気持ちよさそうなスピードで舞い上がっていきました。
グーーーール、グーーール、グーール、グール
夜空にまぶしい銀色の粉がふりまかれています。
加速しながらペガとプーコが巨大な板チョコをのぼっていくようすは、誕生日ケーキのチョコレートプレートに、白いクリームで文字を描いてもらうときみたいでした。黄色のまるいお月さまがチョコレートの向こうにかかり、デザートの黄桃のようです。
「ああ、おいしそう!」
「ちょっと、握ってください」
おくちポカーン状態で夜空を見上げるあどに、ユニは首を動かして、そっと自らの角を握らせました。
「あどちゃん、ちょっとだけど楽しかった。お別れのプレゼントです。いつでも思い出せるように、しっかり暗唱してくださいね」
ユニはペガとプーコを目で追いながら、『プーコとあどの歌』をうたってくれました。
まんまる まんまる おつきさま
たべすぎたときの あどのかお
あのしあわせそうなふくれつら
いますぐツノで つつきたい
まずはひとつき ふたつきみつき
しゅーっと つきはしぼみます
よくみてあのつき あらふしぎ
うかんだこのかお プーコみたい
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