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ブレーキングは疲れない

こんにちは。藍澤誠/Jの先生です。

今日は「腑に落ちる」という体験について書きたいと思います。

書籍やインターネットで情報が手に入るので、何か上達したいことがあるときに、私はさまざまなことを積極的に調べたり、できる限りイベントに参加したりして、いろいろな種類のことを学ぼうとしてきました。

でも、そうした機会で学んだコツなり方法論を、自分に適用しようと思うのですが、すべてではないものの、ほとんどがうまくいかないんです。

家事のコツとか計算のコツだとか記憶のコツだとか工作のコツなどは、見たり読んだりしてすぐに理解し、うまくいくものもあるのですが、特に「スポーツ」は動画や書籍で示されているコツを、なかなか自分のモノにできない。セミナーみたいなので実際に習ってもダメ。リフティングの技などの解説も、めちゃめちゃ丁寧に教えてくれているのに、少しはできるけれど、パフォーマーのようにはできない。ドリブルの理論もたくさん勉強したけれど、私には体現できなかった。

※最初に強調しておきますが、それらの動画や指導者が悪いわけではなくて、私が見本のように体現することができなかったということです。

しかし、2021年の11月下旬、記憶の範囲内においては、特にスポーツにおいては初めてと言ってよいくらい腑に落ち、体現できるようになったことがありました。

それは「ブレーキングからのステップワーク」です。

ブレーキングっていうのは、文字通り、主に走っている動作にブレーキをかける動作のことで、私がしているサッカーでは頻繁に生じる動作ですが、そのブレーキングについて「足に負担のかからないブレーキング(車でいうならブレーキを急に強く踏むようなブレーキングをしなくてすむような止まり方)」を、「GOTSメソッド」の、身体操作部門を担当している大森知さんに習いました。

ブレーキングのように「無意識で行っている基本的な動作について、改めて見直そう!」という提案はよくあることで、そして、大森さん以外にも、別のパーソナルトレーナーにブレーキングを習った経験があるので、初めて習った時(2021年9月)には

「知っていることをまた習った(※知っているだけでできないんだよね)」

という感覚でした。知っているけれど、それを実際のプレーでどう活かしたらよいのかわからないし、特にそのブレーキングについて、その後何か月も深く考えていくイメージは、その当時はありませんでした。だから改めてその仕組みに納得はすれども、前に習ったし、ネットでもよく見るけど、やっぱり自分はブレーキングがわかってないんだな、とダメさ加減を再確認できた程度でした。

しかし、です。

GOTSメソッドのもう一人のコーチ、「サッカー・フットサルの構造理解」を担当している内田淳二さんが、その大森さんのブレーキングをサッカーの動作に落とし込んで(2021年10月)、「ブレーキングから加速するまでを4つのステップに分解する」という形で説明してくれたあとに、事態は大きく動いていきました。

最初、内田さんの落とし込んだ解である「4つのステップ」は多すぎると思いました。習熟すれば2つのステップで十分にターンできるし、実際、自分が理想とするプレーと重ねたとき、4つのステップはとても不自然に感じられました。

ドリブルに適用してみても、4つの段階を踏んだステップは、速いようには感じられませんでした。というより、自分が以前に比べて「すごく下手になった」ように思いました。ボールがない状態の私のステップはバラバラでのろのろ、特にボール付きのドリブルはひどく、初心者そのものになりました。

でも――すごく下手になる、という感覚は悪いものではないです。

経験上、新しい何かをつかむときは、これまでのやり方を捨てるので、いったんすごく下手になります。「すごく下手になったということは、前のやり方を捨てられた、いい状態」と理解しました。これまでの全然変わらない自分を変えたくて習っているわけですから、劇的に変わることを目指しました。

そして、私の性格上、いい状態とはいえ、初心者状態はすごく嫌なので、何週間も練習していたのですが、いきなり気がついたんです。

「これまでやっていたブレーキングはめっちゃ疲れる!」

で、続いてこのように思いました。

「じゃあ、ブレーキングをぜんぶ改善するところから始めよう」(※一番最初の練習で大森さんに言われたことをようやく理解できた自分!)

詳しいやり方は専門的になってしまうので省きますが、新しいブレーキングは「それは誰が考えても疲れないのは当たり前だよね(疲れるのが難しいくらい)」というものなので、まったく疲れません。そしてブレーキングをする場面は、試合中、数えきれないくらいあるので、結果として、ブレーキング由来の疲労がなくなるので、プレーするのがすごく楽になりました。

このすごく楽というのは、なんていうんだろう、これまでは、試合中に何度もスクワットをしていたのが、もうそれをしなくて良いよ、楽にしていいよと言われたような楽さ?!

となると、思いつく限りの、ありとあらゆるシチュエーションで、ブレーキングの無駄を取りたくなる。しかもその無駄は簡単に取り除ける(獲得するのが難しいスキルではないので、理解すると私でもできる)。たとえるなら、毛玉だらけのセーターの毛玉を、毛玉取り器でぜんぶ取りたくなるみたいな感じで(※誰でも毛玉取り器は使える)試合中における自分のブレーキングをすべて改善したくなりました。スタミナも筋力もない私は、疲れたくないので、それは熱心に改善しました。

内田さんに4ステップを習った直後に、脱初心者状態を目指して、個人的に毎日練習していた段階では、「ブレーキングの楽さ」ではなく、「ドリブルの速さ」と「動作の滑らかさ」に意識がいっていたのですが、「疲れないブレーキングをする」という出発点(GOTSメソッドでは1の足と言います)に立てた後は、1のブレーキングを軸に、理想のステップワークを組み立てたらどうか、2の足、3の足、4の足にどのような役割を担わせたらよいか、という方向に研究が進展しました。

でも、このステップワークの方針もブレーキングと同じく、そもそも内田さんに、何度も何度も、毎週習っていたことなんです。ブレーキ動作は疲れるってことも、ブレーキングを改善すれば筋疲労は低減するということも何度も言われていました。言われていたんですが、腑に落ちていなかった。

習っている中は理解があいまいで(1日の仕事の後、すぐに1時間以上かけて車で練習場に行きすぐに練習というコンディションの悪さもかなりある)、ピントが思うように合わせられなくて、それで、練習後にトレーニングしたときの動画を何度も見たり(※大変ありがたいことに動画をもらえます)、個人練習を重ねて自分の頭でもう一度再構築しきれたとき(およそ2か月後)に、ようやく「最高のヒントを教えてくれてありがとうございます!」という晴れやかな理解に至りました。

私の場合は、どんな有益な情報でも、一度、バラバラにして、自分の頭で理解できるように再構築するというプロセスが必要なのかもしれません。一度で聞いてわからない点では残念な回り道なのですが、当時練習に参加できなかった息子ハルキに教えるという役割においては、理解していないところから体現にいたるまでの一連の流れをつかんでいたというのは、そして、もともと下手だった私が、上達する実例を見せられるのはすごく意味があることでした。

そんなわけで、ステップワークのタイミング、ブレーキの裏がえしのアクセルはどうすればいいか、スピードを筋力以外で作るには(※私が筋力がないため)どのような重心移動や軸の抜き方をすればよいかなどを探る方向に個人的な研究がどんどん進み、一回ひどくなったように感じられたドリブルは、負担のかからないブレーキと、筋力のいらないアクセルの関係をつかんだうえで組みなおすことができはじめたので、「完全リニューアル」というくらい新しく、しかも心地よいものに変容させることができました。

しかし、まだ、ドリブルでバンバン抜くことはできません。

メンタル的なブレーキングもそうだし、どういう場面でドリブルを発動するかの分類もできていないし、自分が何をやったらどういう状態になるというのをまったくつかみ切れていないし、相手の態勢から情報を得て自分のプレーを決定するという、超絶当たり前のことができないし、ボールがあるときとないときのステップワークの差をなくすためのアイデアが、ぜんぜん整理できていません。やりたいプレーに対し、どの筋力の出力が足りなくて、どの部位の柔軟性が必要なのかも正確には把握していません。

ただ、これらの課題は明確で、そしてどうすればよいかの仮説はある程度立っていますし、それは「コツを教えて欲しい」という受動的な状態ではなく、コツを自分でつかめた結果、そこから派生してきた課題と仮説なので、おそらくは、個人的な成果は得られると思っています。

他者が言っていることが「心底腑に落ちる」という体験はとても大きくて、そして、今までネット上でさんざん見てきた「形はわかるんだけれど、自分ではできなかった理想のドリブル」が、以前とはまったく違う、手の届くもののように映っています。今整理できていないことが整理でき、体現できるようになったら、この先にどんな世界が見えてくるんだろうと楽しみになっています(これらがすべて気のせいじゃなければいいのですが・・・)。

これまでは、スポーツにおいて「目からうろこが落ちる」とか、「発想が逆転した」とか、「大発見があった!」みたいな話を見たり聞いたりしても、「そうなんですね!」くらいの感想しか抱けなかった共感力・感受性の鈍い私でしたが、こうして自分の身を通して「腑に落ちる」、そして「この先が楽しみ」という感覚を得られたおかげで、自分自身の創作においても、誰かにとって、何らかの気づきになることがあるわけだから、自分の観点から研究し、創り、表現していくことは大切であると改めて思いましたし、人の創作物(スポーツや学問などを含む、広い意味での創作)に対しても、それが良いと直感したなら、謙虚に、誠実に、残念なプロセスを通ってでも理解することをあきらめないでいたいです。

今回の経験で、誰かが見つけた、大小さまざまな「発見」や「気づき」の喜びに対しても、少しは共感できるようになったと思うし、私の非人間的というか、自分勝手でダメダメな部分が、ほんの少しマイルドになった点は、ドリブルがうまくなるとか、疲れない走り方を手に入れたという、限定的かつ個人的な喜びよりも価値があることだと感じています。

そしてブレーキングの改善点が、プレーのあらゆる部分に現れていたように、自分の理想のプレーを目指す過程で、自分の不寛容さや、まだまだ鈍い部分が生活においてたくさんあることに気づけたのだから、サッカーにせよ、塾にせよ、小説にせよ、自分が理想とする表現に、創意工夫をもって近づけていく営みは、今後もずっと続けていきたいと改めて思った藍澤誠/Jの先生でした。

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