3月25日は原田宗典さんのバースデー
こんにちは。藍澤誠/Jの先生です。
3月25日は原田宗典さんのバースデーです。
原田さんについての思い出は語り切れないほどで、どこから書いたら良いのかわかりません。読者としてもそうだし、実際に「はらだしき村」の助役として何度もお会いしてたくさんの楽しい時間を過ごさせていただきました。
今日は原田さんとの実際の出会いではなく、本での出会いについて書きたいと思います。
私が大学生だったのは1990年代の半ばころで、その当時、原田宗典さんは『ダ・ヴィンチ』という文芸雑誌の人気作家ランキングの上位に名を連ねるような、超絶売れている現役バリバリの作家でした。しかし、私は原田さんのことをまるで知らずに、明治時代の古い作家や、世界の文豪などの作品を読んでばかりいました。受験生の時に世界史や現代文において、作家の名前ばかり暗記していて過去の偉人たちの本を実際に読んだことがまったくなく、詰込み一辺倒の勉強も終わり、すばらしく自由になったのだから、名前しかしらない本を手あたり次第読んでいこうという展開になったのです。
チェーホフや夏目漱石みたいなよく知られている文豪、マルクスやマックス・ウェーバーなどの有名な思想家、パスカルとかアリストテレスとかゲーテなど伝説的な偉人たちの本を手に取りました。10代後半だった私は、図書館で本を読むということをほとんどしたことがなかったので、何もかもが新鮮で、右も左も読んだことのない本だらけという状況が、本当に幸せに感じられました。通読するものはわずかで、たいていはつまみ食いするみたいにちょろちょろ眺めて、「へぇすごいねぇ」とライトな観光客のように、世界の思想や発想を見学気分で楽しんでいた毎日は、今こうして思い返しても幸せな気分になれます。
そんな読書生活を始めたばかりのある日、今では妻である(当時は彼女だった)マリネコさんが、「この人の本、すごく面白い!」とすすめてくれたのが『日常ええかい話』でした。マリネコさんも、妹のあっこちゃんから貸してもらったらしく、読んでみたら愉快なエッセイ。日常のことについて面白おかしく書き連ねていくスタイルは、図書館で読んでいた本たちとまったく違うので、それもまた圧倒的に新鮮に感じられ、エッセイだけでなく小説も書いているというので、『黄色いドゥカと彼女の手』を購入しました。
この書籍は短編集で、たぶん原田さんの作品の中でも人気があると思われる『ママ、ドント、クライ』も収録されていたと記憶していますが、短編集ということもあり、講義の合間など短い時間に文学的な空気を楽しめることができて、当時の自分の生活スタイルにフィットしていました。
原田さんの小説はエッセイとはまるで違い、シリアスな文学モード、原田さんを評するフレーズとしてよく用いられる「エッセイと小説は別人」みたいなことを私も感じましたが、、、当時私は周りから「面白真面目人間」というフジテレビみたいな評価を受けるような、面白さと(少し悪い意味での)真面目さが同居しているような性格で、自分でも自分のことがよくわからないという状況だったのですが、そういうもやもやがあったからか、原田宗典さんの「いさぎよい別人感」に強く惹かれました。
「なるほど! どちらの自分も表現していいんだ」――こんな整理されて納得したかは定かではないのですが、面白さと真面目さのどちらかを選ぶのではなく、どちらも別々に表現してしまおうというスタイルは、私にとってはすごくしっくりきて、その時点で買うことのできる原田さんの本を買えるものはすべて買い、完全なる原田宗典マニアのような大学生が誕生したのでした。原田さんはあり得ないくらい本を出していたので、買っても買ってもまだ先があるという感じでしたが、まだ買っていない原田さんの本を書店で見つけるたびに嬉しくなっていたあの頃は、最高に楽しかったです。
書くということで、目の前にいない、会ったこともない誰かを幸せにできる。間接的に救ったり、ぼんやりとした相手の考えに輪郭を与えてあげたりできる。小説やエッセイって素晴らしいな、と原田さんのお誕生日に改めて思いました。原田さん、お誕生日おめでとうございます。
これからもどうぞ健康で、そしてあらゆる状況を笑えるエッセイに、そしてマジカルなストーリーに変換する原田宗典であり続けてください!
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