高原通信【修行編】総括
結論
私は”農家”が嫌いだ。いわゆる”農家”にはならない。
だが、農業をひとつのビジネスの手段として開発し、お金の心配なく好きなことに集中できる組織が作れそうだと確信した。(時間はかかりそうだが)
そもそも儲かるのか?
今回はサクランボ農家に修行に入ったが、ここでの収益の仕組みをざっくりと説明したいと思う。下記の数字は全て平均で丸めてある。
農地は約1.5ヘクタール
収穫期間:25日間
1日当たりの収穫量:280Kg
1日当たりのパート労働力:20人
1日当たりのパート労働時間:5時間
1日当たりのパート労働単価:1000円/時間
売上平均単価(顧客直売り):5000円/Kg
(参考:農協に卸す単価は約1000円/Kg程度)
売上:
25日×280kg×5000円=3500万円
パート人件費コスト:
25日間×20人×5時間×1000円=250万円
(参考:収穫期間の人件費は年間の人件費の70%を占める)
収穫時期だけの利益
3500万円―250万円=3250万円
何かの間違えかと思うほど、単価が高ければ儲かるビジネスだと思う。
農業は人件費以外にも設備費用がかかるのだが、はっきり言って大したコストではなく、人件費が最も大きいコストである。とはいえ、果樹ビジネスは初期の設備投資が大きいのだが、半分は補助金が出るし、初期投資の回収を急がなければ組織は十分運営できると思う。
当然だが、農園がこの半分の規模(0.75ヘクタール)になれば、売り上げも人件費も半分になる。つまり農園の大きさと売上単価をベースに組織の大きさを設計することができる。果樹ビジネスはビジネス規模の自由度は高いが、レバレッジが効かない低リスク低リターンだ。個人でもやり始めてみる価値は十分にあると思う。
農業はシンドイのか?
農家で働くのはシンドイが、組織で農業をやるのは、チームで役割を分担し各自の裁量で作業をしてノウハウを共有しながら仕事ができるので、楽しいのではないかと思った。では両者は何が違うのか?
農家の下で農作業をしながら常に頭の中をよぎっていたのが、
「俺は奴隷なんかじゃない。俺は人間だ。それを教えてくれたのが、ここの農家や、外国人技能実習生らなんだ!」by加藤(金八先生)
農家の下で働くということは、自主性というものを一切認められず農家の指示に従って時間単位で管理されて働かされるということだ。こういう環境下で農園主に作業を追い立てられ、サボることは許されず、使える労働力はとことん使い切るというやり方を受けて、正直、農家での仕事はシンドくって長くは続けられないと思った。しかも農家の言う通り働いていても、収穫量が時間当たり30%アップしたり、摘果の効率が上がったり、草刈がうまくなったりと、農作業のプロフェッショナルにしかなれないからだ。
私は農作業のプロフェッショナルではなく、おいしい果物をつくれるような秘訣と栽培方法と管理方法を知って、果樹栽培のプロフェッショナルになりたいのだ。しかしながら、それは言語化されていないし体系化もされていない。農家は人を効率的に使えれば良くて、そもそも栽培や経営のノウハウを言語化して教えて人を育てる必要性がない。だからこういうノウハウを知ろうと思ったら、自分が疑問に思ったことを、一々農園主に聞いて確認していくしか方法がないのが現状だ。(これは勘ですと返答されることが多いが)
結局、自分で農園をやり始めていろいろな困難に遭遇した時に、農家の師匠に相談しながらトライ&エラーを繰り返してやっていくしか今のところ方法はない。だが、こういうことをやり続けていても将来的な発展性はないので、今後は勘を分析してデータ化とマニュアル化をし、勘が必要な範囲を狭めていくしかないと思う。なので、ここを組織(チーム)としてノウハウを共有しながら作業を分担してやっていければ、農地を拡大し、人を増やし、安定的な品質の果物を生産していくことが可能だと思った。これができて初めて農業もビジネスとして軌道に乗り、仕事としてやりがいが生まれてくると思う。
農業は楽しいのか?
自然の中で樹木に囲まれて働き、収穫時には自然の恩恵を受ける。そして自分が作った果物を食べてくれた人たちが喜んでくれたなら、それ以上に嬉しいことはないと思うし、自分も楽しくなれる。こんな気持ちに共感できる人であれば、農業は楽しいと思えるはず。
もちろん、そこに行き着く過程では大変なことも多いが、樹木の世話を楽しんでやれるならそんなに大変なことでもないと思う。おいしい果物を作るために、肥料や水をやって、木の形を整え、強い果実だけ残すために摘果し、良い色を付けるためにシルバーシートを張る。すべての作業はおいしい果物を作るために集約されている。仕事として良いものを作ることに集中でき、仕事のストレスの大半を占める大企業特有のブルシット・ジョブのようなものは一切ない。
なおかつ、自然の中で生活し、これから何十年も生きていく樹木に触れ合ってその成長を手助けしていく仕事をしていると、農業は自分も自然の一部であることを思い出させてくれる仕事でもあることに気が付いた。子供の頃は自然の一部(ただの猿)だったのに、大人になり、都会の生活が長くなったせいで忘れ去られていた野生が復活するみたいな感じです。
そんなわけで、私は小学生の頃の空き地や野原を駆け回っていた時の身体記憶が戻ってしまい、すでに野生化しています。そんな自分の変化も日々楽しい毎日です。
農業やるにの、拠点をどこに置くか?
今回は田舎生活の基盤としてサブスクリプション型のホテル(27,500円/月)を4か月間だけ借りていた。都会に本拠地(家を購入済みか、賃貸済み)を置いて、田舎には農作業の期間だけいるというのであれば、サブスクリプション型の家を借りるのがベストだと思うが、田舎は家賃が安いので、別荘代わりに賃貸で借りるというのもありだと思う。
実際に田舎に住んで思ったのだが、都会で育った人が本拠地を田舎に置くのはお勧めしない。田舎の特徴である濃ゆい人間関係と狭いコミュニティに嫌気がさすからだ。そんな環境から距離を置き、逃げ場を作るためにも2拠点生活は良いと思う。あたりまえだが田舎は人が少なく、新しいことが頻繁に起こるわけではなく、常に暇で平和なので、どうしても保守的で他人に対する関心・干渉度合は高くなる。このような空気感や付き合いが平気ならば、もしくはあしらい方に慣れているのであれば、田舎を拠点にしても問題はないと思う。
農業で2拠点生活は可能なのか?
農場の設計次第だが、単価が高く品質も高い果物を栽培できれば、正社員として半年働いて300万円の年棒を得ることは可能だと思う(もっとお金が欲しければ、自分が資本を出して農園主=パートナーになれば取り分はさらに多くなる)。後の半年は自分の好きなことでお金を稼ぐようなことができれば自分の収入として総計500万以上の年収が可能であると思われる。これだけ稼げれば、自由に拠点を移動して生活していくことは可能だと思う。
結論としては、農業で果樹を管理する正社員に十分な報酬を出せれば、2拠点生活は可能である。農作業自体は簡単なものが多いので、趣味で農業を楽しみたい人も受け入れられる。よって下記のような人には向いていると思う。
農業を生活の基盤(正社員)として、残り半年で自分のやりたい仕事や勉強、趣味をしたい人。
春夏や、秋冬だけ田舎に来て、田舎生活を楽しみながら、農作業の楽しみと体力作りのために働きたい人。
このようなライフスタイルに興味のある方は、是非ご連絡ください。
私の場合は農場の仕事だけで給料は十分なので、残り半年は都会で遊び、海外でサーフィンをして過ごすことになる。
田舎+都会+海外の3拠点生活の始まりです!
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