見出し画像

チ。地球の運動についての雑感(メモ)

「チ。」を読んで感じた「満足の行く死」と「託すことの希望」は、現代の不安感や孤立感におそろしく響くテーマだ。人生100年時代という長寿が当たり前になる一方で、家族や共同体のつながりが弱まり、個々人はますますバラバラになり、人生の終わりに希望を託せる先がなくなっている。だからこそ、登場人物が託しながら満足げに死んでいく姿が、まさに共感を呼ぶ要因として強く受け入れられているのかもしれない。

そして、感情と科学の「隣り合わせの関係」も、「チ。」を読むとよくわかる。感情的なものは論理的なものであり、論理的なものは感情的なものだ。

科学が進むほどに、感情や感覚が理論から切り離される傾向があるけれど、実際に研究や発見の起点になるのは、感覚的な「違和感」や「もやもや」から生まれることが多い。そうした感情がきっかけとなり、それを理論で解き明かす。この両者が表裏一体で成り立つというギャップと共存の関係が、物語として描かれると、現代人にとって深い共感を生む。

「チ。」が触れる「信念をもって生きる」というテーマは、現代の社会構造への疑問とリンクする。特に、会社のような組織では、効率や成果が優先される一方で、個人の信念や探求が軽視されがちだ。

人間が「誰とでも交換可能」とされやすい現代社会において、目の前の仕事に追われるだけで、「真とは何か、そこから導かれる自己の信念は何か」を自分で追求する機会はますます少ない。

研究者という職業のように、自らの探求に時間を費やすことができる立場であれば、「信念を育む」ことが可能だが、そうでない場合、周囲の意見に流されやすくなる。

そのため、「チ。」の登場人物が命をかけて真理を追い求める姿は、自己を見つめ直す機会が減った現代の人々に強く訴えかけているのだろう。「信じる価値観を持つこと」「それに向き合う覚悟」が、今だからこそ共感を呼んでいるように思える。

いいなと思ったら応援しよう!

藍沢星那社会学ラボ
良かったらサポートしていただけると嬉しいです!いただいたサポートは、イラストや本の購入などの活動費に使わせていただきます🙇‍♀️✨️