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確かにそこにいるんだけど

さっき母のいる実家から帰ってきました。
昔なら必ず、無事におうちに着いたよコールをしてたんだけど
今はなし。

なぜならもう
「気を付けて帰ってね。」も
「うちに着いたら電話してね。」もないから。
なんなら昨日、私が帰省してそばにいることも忘れてた。

下手に電話すると混乱するのでは?と思い、
私は電話するのを躊躇してしまう。

そうでなくても母はしょっちゅう電話をかけてくる。
体調が悪くなるのが不安で、記憶がなくなっていくのが不安で。

そばにいても、もう自分の話しかしない。
自分が不安なことを、繰り返し、ただ延々と話し続ける。
ほかのだれかを気に掛けるようなことは、もう言わない。
今はもう興味がないのだろう。

これがロング・グッバイか。
その言葉が妙に身に染みる。
母は少しずつ、そして今はもうすっかり昔の母ではない。
先月一緒に100円ショップに行けたのは、ほんとうに
奇跡のようなひと時だったんだなあとしみじみ思う。

母は今確かにそこにいる。
だけど私の言葉はもうあまり通じない。
実家の玄関先の金木犀も、今年はなぜか花をつけない。
家までも変わっていくようだ。
それがとても切ない。

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