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「言葉のお守り」を携えて
ふと、今年2月に読んだ本を
あらためて読み返したくなった。
それが、「愛の本 他者との<つながり>を持て余すあなたへ」
社会学者・菅野仁先生の本。
もともと、「友だち幻想」にとても感銘を受け、同じ著者のこの本をたまたま書店で見つけ、手にとった1冊だった。
振り返ってみると、
2月にこの本を読んだときの私は、
ひどく「他者」との関係に疲れていて、
失恋の悲しみ、婚活疲れ、
30歳になるということへの焦りがピークで、
家族のちょっとした一言にもイラっとして食ってかかり、ここに来て私、反抗期到来か!?みたいな「やさぐれ期間」だった。
友人と繋がっているSNSもLINE以外全てアンインストール。テレビも基本つけない、みたいな外界から極力刺激を受けないようにしていた期間。
その時に出会った本書が「心の処方箋」になってくれて、そこからいつのまにか、あれよあれよと状況は好転して今に至る。
原点に返り、自分を救ってくれた言葉を
思い出そうと、再読した。
正直、辛かったときとは感じ方が違う。
なんでこの一文にマーカーペンが引いてあるのだろう。そんな風に思う箇所もあった。
きっと、この本の言葉や考え方は
当時の私を救い、ひとまずの役目を終えたのかもしれない。
と同時に、この本を読むと「初心にかえる」というか、そうだ、「これは心にとめておかなくてはいけない」とあらためて思わされた。
人間関係での傷はこれからも新しくできるだろうし、今の大切な人たちとだって、これからも
関係性を構築する努力を続けていかなくてはいけない。
違う二人が歩み寄るプロセスを味わうことが「親しさ」の一番の醍醐味だし、そこに人間の豊かな<生のあじわい>もまた体験できると思う。たとえ恋人だろうが夫婦だろうが、「他者」だという意識をもつことが大切だ。
「純度100%の関係を相手に求めない」
人々が「同じである」ことに期待してつながりをつくるよりは、「違っていること」を前提としながら、その異質性をベースにつながりや信頼を作っていく知恵と楽しさを求めていくことが、きっととても現実的な考え方なんだと思う。
いまある自分をまるっきり変えようとか変えたいとかあまり思わないほうがいいと思う。…いまよりましになりたいという願望っていうのは「アリ」かもしれないけど、まるっきり変えようというのはよくないよ。
まず、自分の「傷つきやすさ」をそれ自身として自分の中で認めてあげること、「こんな自分はダメだ」ではなく、「これが自分なんだ」と自分で自分を認めてあげること。これが第一の出発点だよね。
ちょっと元気が出てくると、人はもうちょっとマシな自分を必ず求めるようにできているのではないかと思えるからね。
大切なのは、このちょっと元気が出たときの「他者」や「社会」への踏み出し方だと思う。
優しい口調で語りかけてくれるような書きぶり。自分以外全ての人を「他者」として考えると、100%は分かり合えないからこそ、いかにお互い尊重し、思いやりながら関わっていくかが大切だという当たり前のことに気付かされる。そして、分かり合えないからこそ、分かり合えた時の喜びを感じることができると。
そして、まるっきりじゃなくて良い、ちょっとの勇気を出して、他者と関わってごらん、と背中を押してもらえるような気がする。
<いまよりちょっとましな自分>を求め、それをめざして一歩踏み出すこと。相手にすべてわかってもらおうと期待しすぎないように、でも自分を表現し、自分を他者に開いていくことをあきらめないこと。自分の可能性にとって「壁」のように立ちふさがっているかにみえる「社会」に対して、なんとかたじろがない<力>をちょっとずつ身に付けていくこと…。「幸福のデザイン」にとって必要なことは、つまりこういうことだとぼくは思う。
期待しすぎない、でも諦めない。
「悲観主義は気分に属し、
楽観主義は意志に属する。」
大学の時に聞いてなるほど〜と思い
本書でも引用されていた言葉。
「幸福をデザインする。」
わたしは、この本をこれから先ずっとお守りにしていくだろう。
そして、友人関係に悩んでいた小中高生の頃の私がこの本に出会えていたら、どれほど救われていたか。
将来、思春期に突入した我が子が人との距離感に悩んでいたら、この本を机の上にそっと置いておいてあげたい。そんな一冊。
言葉は目に見えない。
けれど、言葉は人を深く傷つけられる。
その逆も然り。
言葉は人を救い、励まし、勇気や原動力を与えることができる。
そして、時に言葉は「戦争」へ人々を向かわすような、エネルギーも持っている。
これは、大学時代の現代文学の教授の言葉。
「欲しがりません、勝つまでは」など、
短くてわかりやすいスローガンで、人々を戦争へと向かわせることだってできたのだ、と
そんなことを言っていた。
脱線してしまったが、
「言葉」は、自分の心を救う「お守り」になると思う。そして、そんな「お守り」を携えて
これからも社会に出て、時には傷つき傷つけたりしながら、日々の生活を送っていきたい。そして、大切な人との関係性を築いていきたい。
そして、自分も「お守り」になるような言葉を
発することのできる人間になりたい。強く、優しい人でありたい。
読書感想文のような、
そうではないようなまとまりのない文章に
なってしまいました。
わたしの、これからもずーーっと、手元においておきたい本の一つを紹介してみました。
読んでくださり、
ありがとうございます。
ちなみに、上半期読んだ「小説」たちの記録は
こちらにまとまっているので、よろしければお読みください!
おしまい。