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文色みち【ショートショート集】

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私が書いた約1000~2000文字前後のショートショート(掌編小説)をまとめておくマガジンです。
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#ホラー

恐怖が木霊するとき【#ショートショート】

僕は小さなころから怖い物知らずだった。 知らない人には平気で声をかけるし、見たこともない虫も素手で捕まえられる。お化け屋敷にも一人で入れるし、ホラー映画も好き好んで観ていた。 学校行事などの肝試しも、驚かす側が拍子抜けするほどに僕は驚かない。リアクションが薄いといわれればそうなのかもしれないが、人より特別とは思ったことはなかった。 そんな僕がたった一度だけ、恐怖を覚え、脳裏に焼き付いている記憶がある。 小学生のころだ。僕が学校から帰宅すると、一軒家である我が家の様子が

ドライフラワー【ショートショート】

一年ぶりに田舎にある実家に帰ってきた。 二階にある自分の部屋は学生当時のまま。母がそのままの状態で残しておいてくれたようだ。物の位置は変えずに掃除は隅々まで行き届いている。 一階のリビングから笑い声が聞こえてきた。 実家には父と母、そして三つ年下の妹がいる。自分だけが家を出て東京で一人暮らしをしていた。 部屋の中で懐かしさに浸っていると、一カ所だけ自分の記憶にはない物が存在しているのに気づいた。 学習机の上に花束。ドライフラワーだった。 それを手に取り眺めてみる。