ADHD、「推し燃ゆ」を読んで
「推し燃ゆ」を読んだ。以下ネタバレあり。
「推し」や「発達障害」など、若者の間で話題になってるキーワードをうまく取り入れていて、とても面白く読めた。
発達障害や精神疾患によってバイトも勉強も上手くいかない。何もかも不器用。その若い時間の多くを、推しに捧げてる。推しは彼女にとって、人生を彩る一部、なのではなく、現実世界がうまくいかない彼女にとって、人生の全部なのだろう。
似たような発達障害や、精神疾患を持つものとして、主人公と自分を重ねながら読んでいた。
「またそのせいにするんだ」 「せいじゃなくて、せいとかじゃ、ないんだけど」
自分も同じ会話をしたことがある。親戚にどうして普通にできないのか、と言われた時に、発達障害や過保護な環境要因が重なって上手くいかない、と言ったら「そのせいにしない!」と言われ「せいとかじゃないんだけど」とこう返した。
「あかりちゃん、落ち着いて、落ち着けば平気だから」
前の職場で、私自身何回も言われた。落ち着いてもミスをする。焦ったら余計ミスをしてしまう。余裕がなさそうに見える。余裕があるとは、どういうことなんだろう。
共感は救いになる。主人公が自分と似ている境遇にある創作物は、自分だけじゃないんだ、という、一時的な救いになる。
だが、この創作物を書いている作者は、私と同い年。この創作物の主人公、あかりのように現実世界がめちゃくちゃになっているわけではなく、たくさんの賞を受賞している、新進気鋭の若手作家。
読み終えた後、
・自分の分身のような主人公のあかりへの共感
・作者と自分が同い年なこともあり、作者と自分の比較
の二つの感情が、私の中に残った。
なぜあたしは普通に、生活できないのだろう。人間の最低限度の生活が、ままならないのだろう。
創作物として、エンタメとして、消費するには、かなり自己投影できる部分が多すぎたため、大分苦しかったが、その感情を書ける作者の文才に感嘆した。