労働基準法・労働時間、休憩、休日
労働基準法32条の労働時間とは、使用者の明示又は黙示の指示によって、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう、労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかどうかによって客観的に定まる。労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。
労働時間になる
・自由利用が保障されていない休憩時間や出張旅行時間、事業場間の移動時間、待機時間
・受講義務のある教育訓練時間
・安全・衛生委員会の会議時間
・安全衛生教育時間
・特殊健康診断の受診時間
労働時間にならない
・通常の休憩時間や出張旅行時間、事業場間の移動時間
・受講義務のない教育訓練時間
・参加義務のない会議時間
・一般健康診断
・労働時間は、事業場を異(こと)にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
・坑内労働(鉱山の坑内やトンネル工事など)については、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。ただし、この場合においては、休憩の一斉付与及び休憩の自由利用の規定は適用しない。
労働基準法第64条の2
使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
1.妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性・・・坑内で行われるすべての業務
2.前号に掲げる女性以外の満18歳以上の女性・・・坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの
法定労働時間
・使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間(就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいう。)について40時間を超えて、労働させてはならない。1週間の各日については、休憩時間を除き1日(午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいう。)について8時間を超えて、労働させてはならない。
※継続勤務が2暦日にわたる場合は、たとえ暦日を異にする場合であっても、1勤務として取扱い、当該勤務は始業時間の属する日の労働として、当該日の1日の労働とする。
・商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業及び接客娯楽業のうち常時10人未満の労働者を使用するもの(以下単に特殊事業という)については、特例として1週間の法定労働時間は44時間とされている。
・休憩は、労働時間の途中に一斉に与え、自由に利用させなければならず、これを休憩の3原則という。
①途中付与の原則
②一般付与の原則
③自由利用の原則
・使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
※残業時間が何時間であっても、1時間の休憩を与えれば違法ではない。
労働基準法第41条【労働時間等に関する規定の適用除外】
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.別表第1第6号(林業を除く)(土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業)又は第7号(動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業)に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
・休憩時間は一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に労使協定があるときは、この限りでない。当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届ける必要はない。次の場合は、労使協定を締結しなくても、休憩を一斉に付与しなくて差し支えない。
①坑内労働の場合
②運輸交通業、商業、金融広告業、映画演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業又は官公署の事業の場合
・使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。
・休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害(そこな)わない限り差し支えない。
次の者については、休憩を自由に利用させなくても差し支えない。
①坑内労働をしている者、警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者。
②乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者であって、使用者があらかじめ所轄労働基準監督署長の許可を得たもの。
③児童福祉法に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として哺育を行う者(同一の居宅において、一の児童に対して複数の家庭的保育者が同時に保育を行う場合を除く)
・休憩時間中の外出を許可制とすることは、事業場内において自由に休息しうる場合であれば差し支えない。
・使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。この規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
※4週間を通じ4日以上の休日を与えることとした場合には、その4週間の起算日を明らかにする必要がある。また、起算日からの4週間ごとに4日以上の休日があればよく、どの4週間を区切っても4日の休日がなければならないとういことではない。
・休日は、暦日の午前0時から午後12時までの休業をいう。ただし、8時間3交替連続作業の交替制においては、継続24時間でもよいとされている。
・あらかじめ休日(労働義務のない日)と定められている日を労働日(労働義務のある日)とし、その代わりに他の労働日を休日とすることを休日の振替という。この場合は、あらかじめ休日と定められた日が労働義務のある労働日に振り替わっているため、休日に労働させたことにはならず割増賃金の支払は必要ない。
※休日の振替であっても振り替えたことで週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えたときは、時間外労働の割増賃金の支払義務が生じる。
・休日に労働を行った後に、その代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除することを代休といい、この場合は休日労働に関する割増賃金の支払いが必要。
・法35条に定める休日(①毎週少なくとも1回の休日又は②4週間を通じ4日の休日)を法定休日という。そのため、週休2日制の場合、その1週間のうち1日が法定休日であり、ほかの1日は法定外の休日となる。
・労働基準法第4章(労働時間等)、第6章(年少者)及び第6章の2(妊産婦等)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次のいずれかに該当する労働者には適用しない。(法41条該当者)
①農業又は水産・養蚕・畜産業に従事する者
②事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
③監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を受けたもの
※林業に該当する者は法41条該当者ではない。
ただし、法41条該当者であっても、深夜業の規定と年次有給休暇の規定は適用される。
高度プロフェッショナル制度の対象労働者に係る労働時間等の適用除外
「労使委員会(賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とする者に限る)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出た場合において、次表②に掲げる労働者の範囲に属する労働者(対象労働者)であって書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意(本人同意)を得たものを当該事業場における次表①に掲げる業務に就かせたときは、労働基準法第4章(労働時間等)で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。これは、一般に高度プロフェッショナル制度と呼ばれる。」
①対象業務・・・・高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして定める次のa~eまでの業務のうち、労働者に就かせることとする業務(当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む)と受けて行うものを除く。以下、対象業務という。
a 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
b 資産運用(指図を含む)の業務又は有価証券の👋その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
c 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
d 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
e 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務
cd②対象労働者の範囲・・・高度プロフェッショナル制度により労働する期間において次のa及びbのいずれにも該当する労働者であって、対象業務に就かせようとするものの範囲
a 使用者との間の次の方法による合意に基づき職務が明確に定められていること
使用者が次のアからウまでに掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあっては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)
ア 業務の内容
イ 責任の程度
ウ 職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準
b 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均所得(毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額の1月分から12月分までの各月分の合計額をいう)の3倍の額を相当程度上回る水準として定める額(1,075万円)以上であること。
③健康管理時間の把握措置・・・対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(労使委員会で休憩時間その他対象労働者が労働していない時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(以下、健康管理時間という)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法※タイムカードによる記録、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法。ただし、事業場外において労働した場合であって、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができる※に限る)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
④休日確保措置・・・対象業務に従事する対象労働者に対し、1年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。
⑤選択的措置・・・対象業務に従事する対象労働者に対し、次のaからdまでのいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに順するもので定めるところにより使用者が講ずること。
a 労働者ごとに始業から24時間を経過するまでに11時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、深夜の時間帯(原則午後10時から午前5時までの間)において労働させる回数を1箇月について4回以内とすること。
b 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1箇月当たり100時間又は3箇月当たり240時間を超えない範囲とすること。
c 1年に1回以上の継続した2週間(労働者が請求した場合においては、1年に2回以上の継続した1週間)(使用者が当該期間において、法定の年次有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く)について、休日を与えること
d 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1箇月あたり80時間を超えた労働者又は申出があった労働者に健康診断(労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目であって脳・心臓疾患との関連が認められるもの及び当該労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況その他心身の状況の確認に係る項目を含むものに限る)を実施すること。
⑥健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置・・・対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であって、当該対象労働者に対する有給休暇(法定の年次有給休暇を除く)の付与、健康診断の実施その他の措置のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずること。
⑦本人同意の撤回に関する手続・・・対象労働者の本人同意の撤回に関する手続き
⑧苦情処理措置・・・対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
⑨不利益取扱いの禁止・・・使用者は、本人同意をしなかった対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
⑩~⑬・・・その他厚生労働省令で定める事項
⑩決議の有効期間の定め及び当該決議は再度の決議をしない限り更新されない旨
⑪労使委員会の開催頻度及び開催時期
⑫常時50人未満の労働者を使用する事業場である場合には、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師を選任すること。
⑬使用者は、次のaからeまでに関する対象労働者ごとの記録及び①に関する記録を前記⑩の有効期間中及び当該有効期間の満了後(原則)5年間(当分の間、3年間)保存すること。
a 本人同意及びその撤回
b 合意に基づき定められた職務の内容
c 支払われると見込まれる賃金の額
d 健康管理時間の状況
e 前記④⑤⑥⑧に規定する措置の実施状況
f 前記⑫の規定による医師の選任
なお、この決議の届出をした使用者は、表③の健康管理時間の状況及び表④から⑥の措置の実施状況を、決議の有効期間の始期から起算して6箇月ごとに、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に報告しなければならない。
・労使委員会の要件
①当該委員会の委員の半数については、管理監督者以外の者の中から、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合には、労働者の過半数代表者)に任期を定めて指名されており、使用者の意向に基づくものではないこと。
②当該委員会の議事において、議事録が作成され、かつ、5年間(当分の間、3年間)保存されるとともに、当該事業場の労働者に対する周知が図られていること。
③当該委員会の運営に関する事項として所定の事項に関する規定が定められていること。
※労使委員会を設置したことについて、行政官庁に届け出る必要はない。
・労使委員会の決議の効果
労使委員会において、休憩や変形労働時間制、時間外・休日労働、代替休暇、みなし労働時間制又は年次有給休暇に関して、その委員の5分の4以上の多数による議決による決議が行われたときは、当該決議は、これらに係る労使協定等と同様の効果を有するものとされる。また、このように決議で定めた場合には、労使協定であれば行政官庁に届出を要するものであっても、三六協定に代わる決議を除き、当該決議を行政官庁に届け出る必要はない。