夢に叫んだ船出
aiさんのお題は夢に叫んだ船出です
「いいね」
そういって背中を後ろに傾けたら、箱に頭がコツンとあたった。
ここには荷物をいっぱい詰め込んで出てきた。
といっても、入れたものといえば思い出ばかりで、今手元に形として残るものは、何一つとしてないのだけど。
僕がこの地に来たとき、まず爽快感を感じた。
開放感とも呼べる。
青々しい社会の見えない空と、太陽の輝く海とが合わさって、まるで青春時代に戻ったかのようだ。それは僕の血を湧き立たせるほどに赤く、そして青かった。
晴天でよかったなと思う。
これがもし雨だったら、僕は涙を流されながら、空と海と大地を悲しみに染め上げて、それはすごく好きなのだけど、きっと叫び声をあげたとしても、吸収されてしまう。それもすごく好きなのだけど。
今日ばかりは、どうしても、どこまでも、どこまでも、届いてほしいなんて思いながら、叫び声を上げたかった。
***
他人の船を出ることにして、初めて自分の船を作り上げて、出航することができた。沈みゆく船なんてもういやだった。僕はこれから、自分ひとりの身で、死にながらも、海を泳ぎきってもいいかななんて思っていた。
けれど、やっぱりどうしても、記憶のかけらと思い出たちは、暗く深い夜闇のなかを照らす光のように、星のかけらになってくれるから、持ってきた。
僕もいつか、誰かの光になれるように。
僕が光ることで、誰か大切になる人に、これから見つけてもらえるように。