自分を動けなくする怪物を創らないこと
Tomokiです.12月に入って街はすっかりクリスマスシーズンだ.12月は僕の誕生月でもあって,一番好きな季節だ.イルミネーションに彩られた街と,少し冷えたスッキリとした空気が心地いい.いつになってもクリスマスは好きだ.色んなところに飾られたクリスマスツリーに温かい気持ちにさせられる.
昔から僕は心理学が好きで,色んな心理学をテーマにした漫画から,研究者が書いた書籍や,さらには論文に至るまで一時期漁ったことがある.それでもやっぱり漫画が一番手を出しやすかったし,楽しかった覚えがある.書籍も堅苦しいやつじゃなければ面白くて好きだが,やっぱりマンガよりかは少し覚悟がいる気がしているのでマンガがお気に入りだ.とはいえ内容の濃度はどうしてもマンガより書籍の方が濃いのだけれども.余談だが和書より洋書の翻訳本の方が気に入ることが多い.和書の心理学本は真面目で堅苦しいイメージがある(か,あるいは内容が薄い自己啓発本のどちらか両極端なイメージ)があるが,洋書は内容が興味深いながらユーモアを感じることもあって面白く読み進められて好きだ.
褒められることを求めてはいけない
その中でアドラー心理学が結構心に残った.「嫌われる勇気」もそういえばアドラー心理学だった.アドラー心理学は課題の分離して,他人の領域で土足で立ち入らないし,自分の領域に他人を立ち入らせないようにすることを大切にしている.また,人同士を横の関係として見て,縦の関係を作らないこととしている.それは,他人からの見られ方に依存して,自分を見失わない為だ.誰かに認められることを指針にすれば,己の指針を捨てて承認欲求に求めて動いてしまう.だからアドラー心理学では褒められることを,(同時に罰すること)を批判している.褒められるように動くということは暗に上下関係を自分が認めていることだからだ.
また,アドラーはトラウマの存在も否定している.過去の失敗が引きずって一歩踏み出せないのではない,自分が一歩踏み出したくないことを過去の経験を言い訳にトラウマという幻想を作り出して,自分の行動を正当化しているのに過ぎないのだと,思わず耳を塞ぎたくなるくらいの正論で殴り掛かってくる.しかし,これは見方を変えればとても救いのある話だ.すべてのトラウマや悪夢は自分が創り出しているに過ぎないというのだから,それならばそこから脱するのは動き出したくないと思った自分を認めて,トラウマだとか悪夢だとかの幻想を本当はなかったと認めることだ.
イヴ・サンローランはきっと夢中だっただけだろう
会期が明日までだったのでイヴ・サンローラン展を見てきた.なんとなく気になっただけで,別にイヴ・サンローランにそれほどの思い入れはなかった.だけれど,モード系のファッションは結構好きで大抵はそういった格好をしているので,見てみたら面白いかもと思って入ってみた.妻が気になっていたのもあるが.
色々な説明や理屈があってイヴ・サンローランが社会に受け入れられた理由や,その審美観を称える解説が多く書かれていたけれど,どこかそれは芯を食っていないような感覚があった.もっともイヴ・サンローランをほとんど知らない自分が語るのも烏滸がましいところだが,写真や制作したコレクションを見て思ったのはシンプルに「ああ,イヴ・サンローランは服を作るのが好きだったんだな」ということだけだった.色んなデザインに魅せられて,色んな民族の文化に魅せられて,それを楽しんでいるということだけがなんとなく伝わってきた気がした.別にこれが正解でも不正解でもどっちでもいいのだけれど,それが僕にとっては重要で,必要なファクターだったのだと思う.
社会に認められることを指針にしてはいけない.打算的になればそれは打算的に映るはずだ.正解にただ当てはめるだけのことをして,逸脱することを怖がれば,いつ踏み外すかを恐れてただ怯えるだけの毎日になってしまうと思う.何かを創りたいと思う気持ちは別に誰かの正解をなぞったり,権威に認めてもらうことじゃなかったと思う.でも,どこかで誰かと繋がりたいという気持ちはあるんだと思う.だから,僕にはイヴ・サンローランの服はどこか音楽的に見えた気がした.服としてのコードがあった上で,どういったハーモニーを奏でるか,どういったメロディを歌うか,そういった感覚で洋服を作っているように感じた.色んなところに旅をして,自分が好きな巨匠もまるで友人のように気軽に語り掛けるように作品を作ったんだと.
音楽をすることで動かない理由をなくす
そういったエッセンスを音楽をすることでなんとなく掴めるような気がしてきた.自分が思いつくメロディやコード,リズム,ハーモニーなんて,おそらく世界のどこかでほかの人も思いついているはずだ.でも,そのメロディに心が躍ったこと,ハーモニーに想いを馳せたこと,そのリズムに突き動かされたことは確かに今生まれたばかりの唯一無二だ.そんな重要で,でもとても簡単なことを音楽は教えてくれる.いつも口ずさむような,いつも爪弾きだすようなメロディでも,その時々によって違った音色を奏でだす.そんな気がする.
それはきっと音楽だけじゃなく,色んな事にもつながっていくような気がする.新しいもの,見たことのないもの,すごいこと,そんなものをいつの間にか追いかけているうちに,誰かに認められることをふいに求めてしまって,理解されないかもしれないと思って手を途中で止めてしまうことがよくあった.でも,それは僕自身が創り出した怪物だったんだ.それはひとつのトラウマだったんだ.やっていることはそのままでも,心持ちを変えて進んだら,未だ見ぬ世界に飛び出していける気がした.楽しいことをしよう.夢中になろう.そうやって続けている間に巡り合える奇跡がある.