ちくわと母
こんにちは。株主会社Aikomiの加藤潤一です。
前回までは、認知症に関わるご本人やご家族を中心にお話してきました。
今回は少し趣向を変えて、私の母に関するお話をご紹介できればと思います。
弊社のサービスをお使い頂く際には、ご家族様に下のような内容で、ご家族様が覚えてらっしゃる認知症ご本人様の生活史や嗜好等をお聞きします。残念ながら認知機能が低下していると弊社からご本人に直接インタビューすることは困難なため、ご家族にお聞きするわけです。
インタビュー後に多くのご家族様が決まっておっしゃるのは、
「自分がどれだけ親のことを知らなかったのか、よくわかった」
という一言です。
このインタビューに限らず何事もそうですが、頭で考えている事や覚えている事を言語化するというのはかなり大変な作業です。
献身的に介護されてきたご家族からすれば、自身が言語化できるほど親のことを把握できていなかったと知ることは少々辛いことだとは思います。自身の落ち度のように感じられ、恥ずかしく思う方もいらっしゃるかも知れません。
ただそれでも弊社がご家族にこういったインタビューをお願いするのは、今現在のご家族自身の位置を把握して欲しいからです。
今知らない事は、弊社のサービスを使いながらお話をして、今後知ればよいだけですし、それはそれで新しい発見として楽しいものです。
ちなみにご両親の事をよくご存知なのは、一般的に娘様の方が多い傾向です。
ここからようやく私の母の話になるのですが、様々なご家族とお会いして、私も自身の母の事をどれだけ知っているか書き出してみようと思ったことがあります。
意外に私の母は昔の話を長男の私に良くしてくれたこともあり、それなりに書き出すことが出来ました。音楽はカーペンターズや加藤登紀子が好きだし、生まれはどこそこで、結婚前の仕事はこれこれをしてて、などなどそれなりの情報量を書き出すことが出来ました。
ただ、好物はなんだったか分かりません、というか気にしたことが殆どなかったなと。
それなりには一緒に外食に行ったりしたものの、和食か洋食の括りで、大抵、私や父親の意見が通って寿司や焼肉などだったでしょうか。
直に改まって尋ねるのも変なので、誕生日だったか母の日を利用して、何か食べ物を送ろうかと聞いてみました。
そうすると出てきた答えはなんと
「ちくわが欲しい」
40過ぎて初めて母親の好物を知りました。
思い起こせば、夏になるとキュウリをちくわの穴に詰めたおかずが良く出ていました。子供にとってはちくわなんて貧相なもの(ちくわ業者の方すみません)、またこれか、などと思っていたものですが、母親がきっと一番食べたかったものだったのでしょう。
よし、それじゃ中国地方の「あごちくわ」を食べたことないだろうから、意気込んで奮発して高級品を送ってあげました。でも結局は、
「これじゃない、これは好きではない」
と、食べなれた「ヤマサのちくわ」が良かったそうで、人の好みというものは分からないものだなと改めて思った次第です。
余談ですが、ご家族様にご両親の好物を聞くと、寿司、焼き肉、天ぷらなどとお答えいただくのが定番ですが、大抵ご本人の好きなものではありません。
自分の両親の好物が分からない方は、昔の食卓で良く何が出てきていたか一度思い出してみると良いかもしれません。
もしインタビューシートを使ってみたいという方がいらっしゃったら、メッセージ下さい。お送りします。
今回はこの辺りで。また次回。
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