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働く x 認知症のお話

こんにちは。株式会社Aikomiの加藤潤一です。

前回は認知症になったご両親への家族の想いについてご紹介しました。今回もご家族にまつわるお話をご紹介したいと思います。

昔は自営が多く、子供が親の仕事を見たり手伝ったりする機会は結構あったかと思いますし、社会的にも家族ぐるみのお付き合いもあって会社と家の距離が近かったような気がします。

ご家族様に認知症の親の生い立ちをお聞きすると、会社勤めの方よりも元農家の方であったりご自宅で商売をなさっていたりという方が多い傾向です。特に地方だとその傾向は顕著かもしれません。

そういったご家族の場合、やはり汗かいて朝早くから夜遅くまで仕事をしていた親の印象はとても強く残っているようです。インタビューでもその話題は良くでますし、そういった仕事に関するコンテンツに対して、ご家族としても認知機能を活性化させるような期待を持たれることも多いです。
なにしろほぼ毎日一つの仕事に従事していたわけなので、きっと思い出して色々なことをお話してくれるだろうと、期待が高まるのは当然のことかと思います。

ただ、ご本人にそのようなコンテンツをお見せした時には、結構期待とは異なる反応が返ってくることが多いです。

例えば、ある方はご自宅で食品関係の製造・販売をされていました。従業員を何人か雇うくらいの規模だったそうなので、それなりに繁盛していたようです。
記憶に強く残っているだろうという事で、当初からそのご商売に関する写真や動画などのコンテンツをお見せしていたのですが、Aikomiケアをしばらくお使いになり、活発にお話できるようになってから思いもよらない言葉が。

「食べ物つくるのはもうええわ」

仕事に関するコンテンツをお見せしていたのですが、実はご本人にとって仕事のお話は快刺激になっていたわけではなかったのです。
これにはご家族もびっくりされていました。

もしかすると自分自身を振り返ってみても、仕事のことを老後に家族と積極的に楽しく話せるかというと…どうでしょうか??
皆さんも楽しく話せるでしょうか?必ずしも皆が望んだ仕事をしてるわけでもなく、薄給で夜遅くまで仕方なく生活のために仕事をされている方も多いでしょう。
子供にはそういった姿や気持ちは家に帰って見せないので、子供にとっては親の心は計り知れないかもしれません。

逆に認知症になって仕事への想いが強く出てしまう方もいらっしゃいます。公務員や会社で責任ある地位についていた男性などは、ある時間になると出勤されようとしたり、介護スタッフを昔の部下のように扱ってしまう事もあるようです。女性の場合は昔は専業主婦も多かったので、夕方になると家族(すでに亡くなっているのに)のために夕飯を作らないといけないという想いなどからソワソワしたりすることもあるようです。
いずれも見当識を失って、満たされない想いや不安からそれを達成しようと行動されるわけですが、それもご家族からすると不可解なものとして目に映るでしょう。

ただ家族にとって考えないといけないのは、その人がこれまで何を大切にされてきたのかに想いを巡らすことでしょうか。

もう退職して何年もたつのに出勤されるのは、もしかするとご家族を自分が養わなければならないという強い想いを未だお持ちなのかもしれません。亡くなった家族のために夕飯を作ろうとするのは、ご自身がお料理が上手でご家族がおいしいおいしいと食べてくれていた思い出を大切にしているからなのかもしれません。

親の心子知らずと言われますが、どうにか親の心を知りたいものです。

今回はこの辺りで。また次回。

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