そうだった。ラジオから流れるからラジオ体操だった。
どこか遠くで目覚まし時計が鳴っている気がした。時間が経つにつれて、少しずつその音の輪郭がはっきりしてくる。
…これ、どこで鳴ってんだ?
少し考えを巡らせたところで気付いた。
…あ、俺の目覚ましだ。
ハッと目を覚まして時間を確認する。
朝6時。
危ない、寝過ごすところだった。隣を見ると、8歳の息子がまだグーグーと寝ている。
「おい、起きろー。行くぞ」
息子の体をゆすると、眠そうにしながらもノソノソと起きてきた。一緒に1階のリビングへ行くと、いつもの通り息子はソファですぐに二度寝を始める。その間に僕はうがいをしたり顔を洗ったりして、最低限の身支度を整える。
ヒゲは…いいか。しょうがない。
寝ぐせは…なおすか。仕方ない。
そんなことをしていると6時20分を過ぎる。
「おい、行くぞー」
二度寝していた息子を起こし、2人で玄関を出る。息子は寝ていた姿のまま。着替えすらしていないが、まぁ起きて行くだけマシかなと思う。
息子の夏休みが始まった。
それに伴って、こども会のラジオ体操も始まった。学校からスタンプカードをもらってきていて、こどもたちは毎朝近くの公民館前へ行く。
今日は10人弱くらい。こどもメインで親もチラホラ。今日の担当がラジオの電源を入れると、公民館周りが途端に慌ただしくなった。
なんか、夏って感じだなぁ。
昔、僕が小学生だった時も、今と変わらずラジオ体操があった。同じようにスタンプカードを持って近くの公園に行っていた時を思い出す。
6時30分になると、ラジオ体操の番組が始まった。アナウンサーが「おはようございます!」と言うと、割れんばかりに元気のいいこどもたちの挨拶が返ってくる。今日もどこかの小学校からの中継をしているらしい。
YouTubeや録音機器もある中で、今住んでいる地区のラジオ体操は、本当にラジオから流れるオンタイムの番組を流す。この時代に珍しい気もするが、これがなんとも言えない良い雰囲気を醸し出す。
全国のどこかで、朝も早くから僕らと同じようにラジオ体操をしている人がいる。なんだか、それだけでその人たちと繋がれたような気にすらなる。
「ラジオ体操第一、よーい!」
ラジオから一際大きな声がした。
公民館の前でみんなが円になって、それぞれ間隔を空ける。ピアノの心地よいリズムが流れ始める。ラジオに合わせて体を動かしながら、ふと空を見上げた。
今朝も、いつもと変わらず青くて高い空だった。
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