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さらば、高床式開放鶏舎よ!

 今期は3つの農場を閉鎖し、9月末までに解体を終えた。ビルト&スクラップ。つまり、最新式の農場を建て、古くなった農場を解体するのだ。今回解体している農場は、私が入社した32年前には、最先端の農場として君臨していた。そして、私はこれらの農場で鶏の飼い方を一から学んだ。

 今の最新式の鶏舎と比べ、換気はカーテンの開け閉めを手動で行わなければならなかった。1日中鶏舎内を歩き、少し暑ければカーテンを開けた、少し寒ければカーテンを閉めたのだ。いつも鶏の状態を把握し、判断し、カーテンをコントロールした。エサは一日4回、列ごとに設置してある給餌機を走らせた。餌箱や水樋はプラスチックで大きく波打っているために、人間はエサが均等になるよう、しっかり水が飲めるよう、確認しながら鶏舎内を歩き回った。集卵が始まると卵がケージにひっかからないよう、確認しながら歩き回った。鶏の状態を確認しながら歩き回った。そして時間ができると鶏舎内の通路を箒で掃いた。

考えてみると、昔は鶏舎内を徹底的に歩き回り、鶏や環境を歩きながらチェックし、掃除をしながら歩き回った。自動ではなく手動であるがために、鶏、餌、水、空気の流れ、ありとあらゆるものを五感で感じながら飼育した。

いい刑事は『現場百篇』というが、よい鶏飼いもまさに『現場百篇』だと思う。

おっと、話がそれました。解体した開放鶏舎農場に話を戻す。

さらば、私を鶏飼いとして育ててくれた鶏舎たちよ。愛鶏園を支えてくれた農場よ。本当にありがとう。彼らは愛鶏園の歴史そのものであり、私たちの宝物です。


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