戦争論と戦術論の変遷:古代からデジタル革命まで
戦争論や戦術論には、時代を超えて影響を与え続けている著名な古典があります。これらの作品は、古代から現代まで多くの指導者や軍事専門家に読まれ、戦争の基本原則や戦略、戦術の理解を深める上で重要な役割を果たしてきました。これらの作品は、単なる戦争や軍事戦術だけでなく、政治的・社会的な革命や独立運動の理論的基盤を提供し、多くの国や地域での変革をもたらす上で重要な役割を果たしてきました。その有効性は現代でも失われておらず、多くの軍人や経営者、参謀、戦略家などにとって必読の書として知られています。
非常に興味深いことに、現代の日本人著者による国際的に通用する戦争論や戦術論に関する本は、私の知る限り存在していません。日本で出版されているこれらの書物の大半は、たとえば『孫子兵法』を基にして現代のサラリーマンの出世術として書かれたノウハウ本であり、このような解説書には戦術や戦略書としての価値は一切ありません。あくまで、サラリーマン向けの出世の小技であり、国家や世論を動かすものではないのです。
この傾向がさらに顕著になるのが、ジャスミン革命以降のSNSを使った戦争論、革命論、社会運動論です。SNSを使ったマーケティングの本は、内容に大差のないものが大量に出版されていますが、これらの情報に私は一切価値を認めていません。
SNSを通じて物品やサービスを販売するノウハウと、SNSを通じて社会運動を効果的に行うための戦術書や戦略書には、共通する部分がなくもありませんが、根本的に異質のものなのです。
これまで私が書いてきた消費者運動や社会運動の記事を読んだ方はお気づきかと思いますが、私が述べていることはSNSを使った社会運動であり、その中には政治運動や、失われた日本の国力を復活させるための戦略や戦術も含まれています。
このシリーズは、比較的一般の方にも分かりやすいステルス値上げや物価高といった現象に対する消費者の防衛行動から説明を始めましたが、最終的にまとめようとしているのは、以下のような著書に匹敵する、現代のビジネスや社会運動でも活用できる戦争論です。
世界中で読まれている戦争論や戦術論
『孫子兵法』:孫武(紀元前6世紀頃)
心理戦、情報戦、戦略の計画の重要性を強調する東アジアの古典的戦略書。
『コモン・センス』:トマス・ペイン(1776年)
アメリカ独立戦争を支持する強力な論証を展開し、共和制を提唱。
『君主論』:ニッコロ・マキアヴェッリ(1532年)
統治と戦争に関する現実主義的アプローチを提唱する政治書。
『戦争論』:カール・フォン・クラウゼヴィッツ(1832年)
戦争を政治の延長として捉え、戦場での不確実性を強調する理論書。
『戦争概論』:アントワーヌ・アンリ・ジョミニ(1838年)
戦略や戦術を科学的に分析し、補給や作戦ラインの重要性を論じる書。
『共産党宣言』:カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス(1848年)
資本主義の矛盾を指摘し、プロレタリア革命を促進するための理論書。
『国家と革命』:ウラジーミル・レーニン(1917年)
マルクス主義に基づき、労働者国家の創設を主張し、暴力革命を正当化。
『遊撃戦論』:毛沢東(1937年)
ゲリラ戦を人民戦争として定義し、大衆を動員する戦術を説明。
『ゲリラ戦争』:チェ・ゲバラ(1960年)
キューバ革命を基に、ゲリラ戦術を体系化し、不正義な政府への反乱を論じる。
『地に呪われたる者』:フランツ・ファノン(1961年)
植民地主義に対する暴力革命の正当化を論じた著作。
『OODAループ』:ジョン・ボイド(20世紀)
迅速な意思決定と柔軟な対応を重視し、軍事・ビジネス分野で応用される戦術理論。
『戦略論』:バジル・リデル=ハート(20世紀)
間接的なアプローチによる戦略を提唱し、非対称戦争での有効性を強調。
ジャスミン革命(2010〜2011年のチュニジア革命)以降、SNSが革命や抗議活動に与える影響についての研究や著作が増え、SNSを用いた革命論や戦術を論じた著名な書物もいくつか出版されています。これらは主に、SNSを活用した現代的な抗議や政治運動の理論を探求し、革命の新しい形を考察しています。いくつかの代表的な著作を以下に紹介します。
『Twitterとガス弾: ネットワーク化された抗議の力と脆弱性』
"Twitter and Tear Gas: The Power and Fragility of Networked Protest"
著者:ゼイネップ・トゥフェックチー(Zeynep Tufekci, 2017年)
内容:現代の抗議運動におけるSNSの力と限界を分析し、アラブの春やオキュパイ・ウォールストリート運動などを事例に、SNSの役割を深く掘り下げています。
『広場と塔:フリーメイソンからフェイスブックまで、ネットワークと権力』
"The Square and the Tower: Networks and Power, from the Freemasons to Facebook"
著者:ニール・ファーガソン(Niall Ferguson, 2017年)
内容:歴史的な観点からネットワークと権力の関係を考察し、SNSが現代の政治運動を形作っていることを説明しています。
『共和国:ソーシャルメディア時代の分断された民主主義』
"Republic: Divided Democracy in the Age of Social Media"
著者:キャス・サンスティーン(Cass Sunstein, 2017年)
内容:SNSが民主主義に与える影響についての洞察を提供し、フィルターバブルやエコーチェンバーの問題に焦点を当てています。
これらの著作は、SNSが政治や社会運動、革命において果たす役割を深く掘り下げており、ジャスミン革命以降に見られるデジタル時代の革命戦術や理論を理解するための重要な文献です。
武智倫太郎
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