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アブダビのエモいラマダン太り
これまでのあらすじ
ブルネイのモスクの写真は意外にも評判が良かった。しかも、シェーのギャグが分かる『ゆーしんけん』さんから、ラマダン太りのエモさについてコメントをもらった。そこで、俺が社長を務めるブルネイの会社の子会社があるドバイではなく、敢えてアブダビのエモい写真について、ハードボイルド小説風に語ることにした。
砂漠の街、アブダビ。昼間の熱気は容赦なく、ラマダンの静寂は砂粒一つすらも飲み込むほどだ。だが、日が沈み、アザーンが響くと、街は生き返る。断食を解く瞬間、水に群がり、デーツの甘さに安堵する。探偵稼業の俺だって、その流れには逆らえない。
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ラマダン中は、探偵業の依頼は減る。人々が信仰に向き合い、心を清める神聖な月だからだ。しかし、夜の宴には狂おしいほどの誘惑がある。溢れる料理、笑い声、そしてデーツの柔らかな甘さが、疲れた心と体を癒してくれる。
そんなある日、いつものようにあの女――そう、イボンヌからまたしても奇妙な依頼が舞い込んだ。
『フェラーリ・ワールドで売られている47,300ディラハム(約180万円)のBlackBerry端末、一体誰が買うの?』
というものだ。確かに、俺も似た機種を持っているが、フェラーリのデザインが加わっただけで180万円とは、石油成金を鴨にしたボッタくり話だ。オバマが大統領時代に使っていた頃のBlackBerryも、今じゃ時代遅れの代物だが、もしこの端末を持っている奴がいるなら、そいつも過去に囚われているのだろう。
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ラマダンが続くと、体に変化が現れる。ズボンがきつくなり、体が重く感じる。だが、それもまた一種の快感だ。仲間と囲む食卓、満ちる幸福感――それが今の俺の現実だ。フェラーリ・ワールドでは、腹の出っ張りをカモフラージュするために、赤いシャツに黒いサングラスを身に着け、赤と黒の闇に溶け込んだ。
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ラマダンが終わり、イードが近づく頃、鏡に映る自分は見慣れない。体重計が示す現実――『ラマダン太り』
だが後悔なんてない。その重みは誇りだ。家族と過ごした夜、再会した友との笑い声。それが俺の心を豊かにし、体にも刻まれた。ラマダン太り、それは神聖な月がくれた、愛と絆のエモさの重みなのだ。
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武智倫太郎