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ツンデレ童話:妄想力が加速するツンデレ童話の世界観

 T Kさんに妄想力を刺激されたので、愛読者のサブリナさんがさらにツンデレ童話の世界観に没入できるように、ツンデレ童話にはどのような隠されたメッセージが込められているのか、今回は作者自らが紐解いてみたいと思います。

 シャルル・ペローやハンス・クリスチャン・アンデルセン、ルイス・キャロル、オスカー・ワイルドといった歴史に名を残す童話作家たちは、単なる子供だましの紙芝居作家ではありません。彼らの作品は文学として高く評価されており、後世の文学者たちによって、どのようなメタファーとして解釈すべきかを巡り、文学論争が繰り広げられることすらあります。一方で、武智倫太郎のツンデレ童話は、まだ誰もその隠されたメッセージを解説してくれる人がいません。だからこそ、作者自らがその意図や背景を読み解く必要があるのです。

童話とは

 日本では、長年にわたり『まんが日本昔ばなし』が高視聴率の番組として放映されてきたこともあり、『桃太郎』や『一寸法師』、『かぐや姫』といった古くから伝わる物語が、すべて『昔話』として一括りにされる傾向があります。しかし、欧州では、童話 (Fairy Tale)、寓話 (Fable)、民話 (Folk Tale)、神話 (Myth)、伝説 (Legend) といったカテゴリーごとに区別され、それぞれに共通点や相違点が存在します。これらの違いについては、別のコラムで詳しく解説する予定です。

 一方で、童話や寓話には、王政や政治を批判する強烈な風刺が込められていることが少なくありません。その最も典型的な例が、ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる短編童話『裸の王様』(原題:『皇帝の新しい服』)です。1837年に発表されたこの物語は、権力者の虚栄心や無能さを鋭く風刺しています。王や皇帝が自らの権威を疑わず、それを指摘できない周囲の人々の姿は、権力構造の危うさを象徴的に描き出しています。この物語は、社会や政治を批評する童話の代表例といえるでしょう。

『眠れる森の美女』では、100年間の眠りという設定が、王族にかけられた『呪い』や停滞状態を表し、王政や保守的な政治体制が社会を前進させられない状況のメタファーとして解釈されています。この物語の最も有名なバージョンを手がけたのは、17世紀フランスのシャルル・ペローです。彼の童話集『昔々のおとぎ話(Histoires ou contes du temps passé)』(1697年)に収録されており、フランス語原題は『La Belle au bois dormant』です。また、19世紀のグリム兄弟によって『いばら姫(Dornröschen)』というタイトルで再解釈され、物語のバリエーションがさらに広まりました。

 また、『シンデレラ』は一見、単なる玉の輿物語に見えますが、実はもっと深いテーマが潜んでいます。王子との結婚というモチーフは、階級の移動や不平等への希望を示す一方で、王族や貴族社会の形式主義や冷淡さを暗に批判しています。特にシャルル・ペローのバージョン(1697年、仏題『Cendrillon ou la petite pantoufle de verre』)は『ガラスの靴』や『カボチャの馬車』といった象徴的な要素を加え、物語の普遍的な魅力を確立しました。一方で、グリム兄弟の『アシェンプテル』では、動物の助けや義姉たちの残酷な結末が描かれるなど、よりリアリスティックでダークな要素が特徴です。

 さらに注目すべきは、『シンデレラ』には中華版の『葉限』やアラビア版など、異なる文化に起源を持つ類似の童話が存在する点です。これらの物語は、社会的不平等や階級構造への批判という普遍的なテーマを、世界中で共有している証拠でもあります。

 一方、武智倫太郎による『マッチ売りのツンデレ童話』では、物語の舞台としてデンマークが選ばれていますが、これは単なる背景設定ではありません。デンマークは、現在も自治領であるグリーンランドを抱え、不動産デベロッパーあがりのドナルド・トランプがその買収を提案し、武力行使も辞さない姿勢を示した地域でもあります。

 この背景を取り入れることで、物語は歴史的な王政批判を超え、現代の国際政治への風刺にまで視点を広げています。

 物語の中でツンデレ少女たちが直面するのは、日産買収や階級闘争にとどまりません。

 最終的には、超大国である米国との対立という壮大な運命にも向き合うことになります。このように、童話や寓話は単なるエンターテインメントではなく、過去から現代に至るまで、社会や政治を批評する場として重要な役割を果たしているのです。

武智倫太郎

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