『ラグビー観るならスーパードライ』から『ジャスミン革命』を語る
先日サッカーW杯について記事を公開したところ、『このタイミングでサッカーですか?』との謎のメッセージをいただきました。そんなイミフ (意味不明の略語)なことを言われても、なんのことだか分からずに、フェイスブック(FB)を彷徨っていたら、どうやらそのタイミングは、日本中がバスケW杯で盛り上がっていたらしいことが判明しました。
スラムダンク を語ればよかったのかと思いましたが、サッカーやバスケには興味がないので、久しぶりに『X(Twitter)』を彷徨ってみたら『ラグビー観るならスーパードライ』というハッシュタグが『アサヒビール公式によるプロモーション』で流れていました。ここは『ラグビー観るならジョナサン・ジョースター』 の方が『ジョジョの奇妙な冒険』のファンには、分かり易いでしょう。
しかも、イーロン・マスクによると、ユダヤの陰謀により世界中でXのスポンサーを降りる企業が続出しているのに、このタイミングで『X』に広告を出すなど、ADLに喧嘩を売っているようなものです。
文藝春秋やトヨタ ならADL やSWC、アムネスティの名前が挙がった時点でタップアウト(総合格闘技用語の『ギブアップ』や柔道の『参った』の同義語)でしょう。
羅惧美偉観るなら男塾
羅惧美偉 (らぐびい)
以下にGPT-4がどれほど不勉強なのかがわかる実例を示します。民明書房 は漫画の男塾シリーズに登場する架空の出版社です。ギャグネタであるにも関わらず、実在している出版社だと勘違いしている人が少なからずいます。太公望書林、ミュンヒハウゼン出版、曙蓬莱新聞社なども架空の出版社などであり、ファクトチェックの重要性を示す好事例と言えるでしょう。
H.G. ウェルズから考察するファクトチェックの困難さ
1938年10月30日にアメリカで、俳優のオーソン・ウェルズが、小説家のH.G.ウェルズのSF小説『宇宙戦争』を基にしたラジオドラマが放送されました。この放送はドラマのギミックとして、ニュース報道の形式で進行されました。その結果、一部のリスナーがそれを実際のニュース報道と誤解して パニック になり火星人の襲来を事実と信じ込んだと当時の新聞報道では報じられました。
この事象は『メディアの影響力』や『公共の誤解』の好例として、メディア学、社会学、心理学、情報学など様々な分野の研究対象になっています。しかし、その後の研究では、実際のパニックはそれほど広範囲にわたるものではなかった可能性が示されています。
例えば、メディア研究者のW. Joseph Campbellは、この事件が『集団パニック神話』として誇張され、拡大解釈されたと主張しています。彼によれば、放送を聞いたリスナーの多くは、それがフィクションであることを理解していたとされます。
また、その他の調査でも、パニックに陥ったリスナーは全体の一部に過ぎなかったとされ、多くのリスナーは放送がフィクションであることを知っていた、または放送自体を聞いていなかったとされています。
但し、一部のリスナーが実際にパニックになり、その様子が報道されたことは事実です。
以上のことから、『宇宙戦争』の放送が広範なパニックを引き起こしたという説は、一部のリスナーについては事実である可能性がありますが、全体的には誇張された可能性が高いと考えられます。
現代であれば、SNSなどで一気に情報が拡散され、様々な社会現象が発生することが想定できます。現在、問題視されている ディープフェイクニュース 問題は、これらの悪影響を如何にして封じ込めるかが重要なテーマとなっていますが、これをAIで解析することには非常な困難が伴います。
例えば、1,000万人のSNSから、『宇宙人が襲来してきた』という情報が拡散されても、その話を拡散した本人が信用して発信したのか、ジョークネタとして発信したのか、あるいは、SNS情報拡散AIがユーザの意図に関係なく、自動的に拡散したのか判断するのが非常に困難だからです。
ジャスミン革命・SNS革命・FB革命・アラブの春
チュニジア のジャスミン革命はSNS革命とも呼ばれていますが、その情報が本当に自然発生的に拡散したものなのか、あるいは、当時のチュニジア大統領のベン・アリを打倒するために、Facebook、Google、アメリカ政府などが情報操作したのかは、いまだに分かっていません。
確実に分かっていることは、当時、SNSの情報拡散を検閲、統制しようとしたベン・アリ政権の意図に反して、FacebookやGoogleの社員が、検閲を妨げるためにチュニジアに技術者を派遣し、情報拡散を支援したことまでは確認できています。しかし、それ以上の詳細については、専門家の間でも諸説があり、決定的な定説はまだ存在しません。
私がジャスミン革命に詳しい理由は、ジャスミン革命発生時にチュニジアに滞在しており、革命の発生前、発生中、発生直後、終息後と、その変化の様子を現地で体験し、その経験を論文などにまとめているからです。
実際、現地にいて分かったことは、ほんの数時間前まで、にこやかで礼儀正しく柔和な人柄で『明るい北朝鮮 (チュニジアには革命発生前に秘密警察 や密告制度 がありました)』と呼ばれていた国の人々が、数時間後には暴徒と化していたこと、そして『リアルファイト に慣れていて良かった』と体感できたことだけです。
当時、チュニジアの方が日本よりもFBの普及率が高かったため、私のFBのつながりは、英語、フランス語、アラビア語の順で多かったですが、大半が政府高官や大学教授などだったので、彼らは情報を拡散することができませんでした。秘密警察や密告制度が存在するくらいなので、そんなことをしたら直ぐに逮捕される恐れがあり、恐怖感が強かったでしょう。
武智倫太郎