AIバブルの終焉と新しい技術時代の始まり
バブル経済は、資産価格が過度に高騰し、最終的に大暴落する経済現象を指します。この現象は、歴史上多数の事例が見受けられます。以下のリスト以外にも、リーマンショックの翌年に発生したドバイショックや、日本のソーラー発電バブル、タワーマンションのプチバブルのような現象もあります。
バブル経済やバブル崩壊の厳密な定義には議論があります。また、景気循環についても議論がありますが、景気は好景気と不景気を繰り返すものです。
景気の循環で最も長いものは、コンドラチェフ波動と呼ばれる50年周期のサイクルがありますが、ライフサイエンスやAIがイギリスの産業革命から数えて第五波になるかどうかは、コンドラチェフ波動自体が仮説に過ぎないため、これからAIの時代になるという過大な期待をするのは、日本人が陥り易い土地神話のようなものに過ぎないかもしれません。
以下の国土交通省のポエムには『現在を第4の波として、これからナノテクノロジー、ライフサイエンス、ビッグデータ、ロボティクス、AIがけん引する第5の波が起きてくるとする考えもあります』と書いてあります。
小学校の高学年で学ぶモンゴル帝国や、大航海時代にはイタリアやスペイン、ポルトガルなどが世界制覇しそうな勢いでした。しかし、今世紀中にこれらの国々が再び世界制覇できるような時代が来る可能性は、まず考えられないのと同じで、歴史的観点からは、コンドラチェフ波動自体があるかどうかすら疑わしいという考えもあります。
日本人にとって常識の範疇の歴史的なバブル景気
1637年:オランダのチューリップバブル
17世紀:日本の江戸時代の貨幣改鋳による元禄バブル
1719年:フランスのミシシッピ計画バブル
1720年:イギリスの南海泡沫事件。バブル経済の語源
1840年代:イギリスの鉄道株バブル、鉄道狂時代とも呼ばれる
1915年~1920年:日本の株式・土地・コモディティの上昇(大戦景気、大正バブル)
1920年代後期:1929年ウォール街大暴落要因の米株価バブル
1930年~1931年:アンゴラ狂乱
1950年~1953年:朝鮮特需による日本の株投資バブル
1972年~1973年:日本列島改造論による日本の不動産バブル
1980年代後期~1991年:日本の株と土地の異常な上昇によるバブル
1990年代後期 ~2000年代初期:アメリカを中心にしたドットコムバブル(インターネット関連の企業株バブル)
1994年~1995年:メキシコのペソ危機(テキーラ・クライシス)
1997年~1998年:アジア通貨危機。特にタイの不動産バブルが中心となった
2007年~2008年:サブプライムローン問題からリーマンショックにつながったアメリカの住宅バブル
2004年~2008年:世界中の原油・石油等の資源バブル
2010年~現在:世界金融危機後の世界的な金融緩和政策による株価上昇
2017年~2018年:世界中の仮想通貨バブル
これらのバブル景気を大別すると、(1) オランダのチューリップバブルのように一度で終わるものと、(2) 南海会社バブルに続くミシシッピ会社バブルのように複数回繰り返して終わるものと、(3) 不動産バブルのように何度も繰り返すものの三つに大別することができます。
以下の記事はこれまで筆者が見たなかでも最もレベルの低い記事の一つです。
そもそも『失われた30年』が何のことを指しているのか理解不能です。失われた30年間連続で毎年実質経済成長率が5%という想定の話しなのか、GDPの話しなのか、累積貿易黒字額なのか、何を以って『失われた30年』を取り返すと議論しているのでしょうか? 何の定義もなしに取り返せるかどうかを議論すること自体が無意味です。
それから、以下のような点に関しても、まったく根拠のない話だらけです。
OpenAIへのアクセス数:ChatGPTを開発したOpenAIへのアクセス数が19億回とされていますが、これがどのようなアクセス(サイト訪問、API呼び出し、ダウンロードなど)を指すのか明確ではありません。また、このアクセス数が生成AIの影響力を示すものではありません。
GDP押上効果の7兆ドル:世界のGDP押上効果が7兆ドルに達するとの記述がありますが、この数字がどのように計算されたのか、またその具体的な意味や背景が不明確です。また、これが生成AI全体の影響を示すものであるのか、それともChatGPTやOpenAIの影響だけを示すものであるのかが不明確です。
GDPの統計手法:GDP統計に関する話も信じがたい話です。日本一国だけでも四半期のGDPの暫定値が発表されるのは、四半期の締め日から最速でも一か月後です。日本国内の年間GDPが確定するのは、早くても年間の締め日から最速で9か月後です。世界中のGDPの締め日や統計終了期日はそれぞれ異なっているので、2023年6月末締めのGDP押し上げ効果が、同年の8月中に分かることなどあり得ません。
確実に分かっていることは、今でも毎月OpenAI社が赤字を出し続けていて、破産する可能性が高まっているということだけです。
過去の技術ブーム、例えば、インターネットバブルと比較すると、AIの進歩はより実質的な影響を産業や社会に与えています。そのため、AIブームが終わるとしても、それは技術の成熟や適用範囲の拡大という形で進行する可能性が高いです。
AIの第四次AIブームは『複数回繰り返されたバブル経済』に類似する可能性があると考えられます。但し、AIの持つポテンシャルや影響範囲を考慮すると、バブルの崩壊が技術の終焉を意味するわけではなく、新しい形での進化や適用が期待されます。
次世代AI技術として有望視されている様々なアプローチ
ChatGPTやBardのようなLLMは、シリコン半導体ベースのノイマン型コンピュータの領域を超えることはできません。CPU、GPU、AIチップのいずれを選択しても、シリコン半導体ベースのデジタル計算機であり、膨大な計算には膨大なエネルギーが必要です。アルゴリズムの改良などで、消費電力を減らすことも可能ですが、削減できる余裕はそれほど大きくありません。
以下の技術の中には、AI倫理だけでなく、生命倫理や医療倫理も考慮が必要なものが含まれています。しかし、10年単位の国策としてのAI技術の開発テーマとして、多くの有望な技術が存在しています。
いずれのアプローチをとっても、AI倫理の重要性だけは変わらないテーマです。
量子コンピュータ
量子コンピュータは脳の動作を直接模倣するものではありませんが、非常に複雑な問題を効率的に解く能力を持つため、脳のような高度な計算能力を持つシステムとして注目されています。
ニューロモーフィックチップ
これは、生物の脳の神経回路を模倣するよう設計されたチップです。IBMのTrueNorthやIntelのLoihiなどのチップがこのカテゴリに該当します。これらのチップは、通常のハードウェアよりも効率的にニューラルネットワークを実行することが可能です。
オプティカルニューラルネットワーク
これは、光を用いてニューラルネットワークの演算を行う技術です。光の干渉や回折を利用して、ニューラルネットワークの演算を非常に高速に実行することが期待されています。
ブレインマシンインターフェース (BMI / BCI)
脳と機械を直接的に接続する技術で、脳の信号を読み取りまたは脳に信号を送ることで、人間と機械の間の相互作用を可能にします。
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バイオコンピュータ(オルガノイド知能)
このアプローチは、生物学的な方法を利用して計算を行うものです。
スパイクニューラルネットワーク
これは、生物の神経細胞のスパイクを模倣するニューラルネットワークのモデルです。
人工シナプス
人工シナプスは、生物の神経細胞間の接続点であるシナプスの機能や特性を模倣する電子素子のことを指します。
これらの技術やアプローチは、それぞれ異なる特性や利点を持ち、脳の動作や構造を理解する手助けとなり、その組み合わせからより効率的で高性能なシステムの構築が期待されています。