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NTT法改正の衝撃:競争環境と安全保障に迫る影響

 私のNoteでは、読者の皆さまからいただいた質問に対し、独自の見解を交えながら何でも解説しています。今回は『NTT法廃止の動きに関する見解』について質問をいただきましたので、NTT法を廃止しなくても、すでに厳しい状況になっている現状について解説します。

 2024年に可決された改正NTT法は、日本の通信インフラを担うNTTの役割を再定義し、その影響力を大きく変えるものです。この法改正により、NTTは国際競争力の強化を目指し、より柔軟な経営戦略を展開することが期待されていますが、他の通信キャリアにとっては競争環境に大きな変化をもたらし、公正な競争が損なわれるとの懸念が生じています。

NTTと他キャリアの違い

 NTTはかつて国営企業として全国にわたる通信インフラを整備し、現在も重要な電柱や光ファイバー網といった資産を保有しています。その規模はKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルと比較しても圧倒的であり、単なる通信事業者ではなく、国家の基盤を支える存在です。

 一方、他キャリアは市場競争力を高めるため、5Gや次世代通信技術の導入を進めているものの、NTTの持つインフラに依存せざるを得ません。これにより、NTTが自由な経営戦略を展開することで他キャリアとの差が広がる可能性があり、特にKDDIやソフトバンク、楽天モバイルは危機感を強めています。

改正NTT法による影響

1.ポジティブな側面
国際競争力の強化:改正NTT法により、NTTは外国人役員の規制緩和や研究成果の開示義務の撤廃など、より柔軟な経営が可能となりました。これにより、グローバル市場での競争力強化や技術革新が期待されています。

イノベーションの促進:研究開発の自由度が向上し、NTTは自律的に新技術の開発を進め、国内外の通信技術の競争力をさらに強化できると考えられます。

2.ネガティブな側面
公正な競争環境の崩壊:他キャリア、特にKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは、NTTの持つ膨大なインフラ資産が競争を不公平にする懸念を抱いています。NTTの自由な経営判断が、これら企業に不利な競争環境を生み出す可能性があります。

通信格差の拡大:NTTが地方や不採算地域から撤退するリスクがあり、全国一律の通信サービスが維持できなくなる懸念があります。これにより、通信インフラが都市部に集中し、地方の格差が広がる恐れがあります。

NTT以外のキャリアの危機感

 KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルといったキャリアは、NTTのインフラに依存しており、改正NTT法によってさらに競争環境が不利になることを懸念しています。特にNTTが国際展開を強化し、技術開発を推進する場合、他キャリアは競争力を維持するためにさらなる投資や技術革新を強いられることになり、競争圧力が増すことが予想されます。

 また、地方での通信サービス提供がNTTの撤退により他キャリアに移行することで、経済的な負担が増大するリスクも存在します。

今後の展望と業界再編の可能性

 改正NTT法は、業界全体に再編の動きを促す可能性があります。NTT以外のキャリアは、競争力を維持するために合併や提携を模索する可能性があり、特にNTTが地方から撤退した場合、その空白を埋めるために他キャリアの連携が強まると考えられます。

法律の撤廃と規制の見直し

 改正NTT法は、NTTの経営の自由度を高めるものですが、長期的にはさらなる規制緩和や法律の廃止が議論される可能性があります。実際、2025年の通常国会までに、外資規制や公正な競争環境、ユニバーサルサービスの見直しが付則で検討されると記載されています。政府や規制当局は、NTTのインフラ資産の分離や、公正な競争環境を確保するための規制見直しについて、今後さらに検討を進める必要があります

 一方、規制撤廃が進むと外資の影響力が強まり、国家の通信インフラが他国の影響を受けやすくなるリスクもあるため、慎重な議論が求められます。

高橋洋一氏の主張と実際の動向

 高橋洋一氏は、郵政民営化後の実例を引き合いに、NTTの研究成果の開示義務撤廃や外国人役員の就任が実質的に影響を与えないと主張しています。しかし、郵政民営化直後から、郵便貯金や簡易保険の資産運用で海外資産への投資比率が増加し、懸念されたリスクの一部が現実化しました。このことから、高橋氏の見解には再検討が必要であると考えられます。

安全保障リスクの増大と盗聴の可能性

 改正NTT法によって、外資によるNTT株式の保有拡大や外国人役員の増加に伴い、NTTが国家の安全保障に関わる通信インフラを運営する中で外部勢力の影響が強まる懸念があります。また、研究成果の開示義務が撤廃されることで技術の透明性が低下し、盗聴や監視機能がインフラに組み込まれる危険性が増加します。外部監査や評価が不十分な場合、通信内容が盗聴されるリスクや国家機密の漏洩リスクが高まるため、適切な監視や規制が不可欠です。

(発行するのを忘れていた『日本のサイバーセキュリティの危機的実体 』マガジン)

まとめ

 改正NTT法は、NTTに対して大きな経営自由をもたらし、技術革新や国際競争力の強化を目指すものです。しかし、他キャリアにとっては不公平な競争環境や通信格差、安全保障リスクといった課題が懸念されています。今後は通信業界全体での再編や政府による適切な規制見直しが求められ、安全保障と技術革新のバランスを取ることが重要なテーマとなるでしょう。

武智林太郎

#NTT法改正 #安全保障 #盗聴 #検閲 #サイバーセキュリティ

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