見出し画像

ツンデレ童話:貧者の贈り物

 倫太郎はnoteで無料記事を書き続ける生活を送っていた。そのため、サブスク収入やアフィリエイト収入もなく、金銭的に余裕がなかった。そんな彼が愛読者であるサブリナのために考えたのは、できるだけお金をかけずに準備できるクリスマスギフトだった。

 そこで思いついたのが、ツンデレ童話の続編として、O・ヘンリーの『賢者の贈り物』をパロディ化した『貧者の贈り物』という無料記事を書くことだった。

 しかし、執筆を始める前に、倫太郎は早々に壁にぶつかった。『賢者の贈り物』の原題は『The Gift of the Magi』であり、これを直訳すると『マギの贈り物』となる。この『Magi』とは、聖書に登場する『東方の三博士』を指す言葉である。

 東方の三博士は、星に導かれてベツレヘムを訪れ、イエス・キリストの誕生を祝ったとされる人物たちだ。彼らが捧げた『黄金』『乳香』『没薬』は、クリスマスにおける贈り物交換の象徴としても知られている。このように、『Magi』という言葉は物語の中で象徴的な役割を果たしている。

『The Gift of the Magi』では、主人公の夫婦ジムとデラが、お互いのために自分にとって最も大切なものを犠牲にして贈り物を用意する。その行為が、三博士の贈り物と重ね合わされており、タイトルには『最高の贈り物を贈る知恵深い行為』を讃える意味が込められているのだ。

 つまり『The Gift of the Magi』における『Magi』は、無私の愛と贈り物の象徴であり、クリスマス精神そのものを表している。ここで倫太郎は、重大な問題に気づく。

 原題を直訳すると『マギの贈り物』となるため、日本語で洒落として機能する『賢者』と『貧者』という言葉遊びが成立しないのである。言葉遊びを活かしたパロディを書こうという計画は、最初の一歩から大きな課題に直面してしまったのだ。

 それで倫太郎はO・ヘンリーのパロディを諦め、新たな挑戦として『ツンデレ童話:ゴート・ポイント』という物語を執筆することに決めた。

ツンデレ童話:ゴート・ポイント

プロローグ

 昔々――といっても、タイムパラドックスのせいで少し未来の話だ。

 未来世紀秋葉原の夜空は、華やかなイルミネーションに彩られていた。クリスマスを楽しむ人々はプレゼントを心待ちにし、笑顔で夜を過ごしている。しかし、そんなきらびやかな世界の裏では、不気味な陰謀が進行していた。

 悪の秘密結社『ポイ活団』は、政府と結託し『マイナチップ』を全国民に埋め込み、ポイント経済を利用して完全な支配体制を構築しようと目論んでいたのだ。

『こんなこと、絶対に許さない!』

 クリスマスの精神を守るため、ツンとした態度ながらも心優しいヒーローで『ザンパンマン』の弟の『サンタマン』が立ち上がった。彼は愛車の『ツンデロイド9000』に乗り込み、未来世紀秋葉原の夜空を軽やかに駆け抜ける。

 彼の旅路の鍵となるのは、世界的なポイント財閥であるパステル家の令嬢カンナと、彼女が生み出した革命的なポイントシステム『ゴート・ポイント』だった。

第一章:ゴート・ポイントの目覚め

 夜空を静かに滑るツンデロイド9000。その座席に座るサンタマンは、クリスマスプレゼントの配達を終えるべく奮闘していた。しかし、袋の中を確認した瞬間、ふと手にした謎めいたアイテムに目を留めた。それは、彼のこれからの戦いを左右する存在となる『ゴート・ポイント』だった。

 ゴート・ポイントとは、パステル家が極秘に開発した新世代ポイントシステムだ。ブロックチェーン技術と強力なRAP暗号を組み合わせたこのポイントは、既存のマイナチップ制度を覆す可能性を秘めていた。ただし、使用には特別な『音声生体認証』が必要で、これを解除できるのは開発者であるカンナだけだった。

 サンタマンはそのポテンシャルに興味を持ちながら、カンナを訪ねることを決意した。

第二章:相棒募集とパステル・カンナとの出会い

 未来世紀秋葉原の高級住宅街。その中でもひときわ目を引く豪邸に住むのが、パステル家の令嬢カンナだった。ポイント経済の頂点に立つ家に生まれながら、彼女はそのシステムに疑問を抱き、孤独な日々を送っていた。

『こんなにポイントがあっても、本当の私を見てくれる人なんていない……』

 ふとスマホを手にした彼女は、SNSにこっそり投稿を始める。

『べ、別に寂しいわけじゃないわよ! 私にふさわしい“相棒”がいるなら、考えてあげてもいいけど!』

 その投稿は、運命のようにサンタマンの目に留まった。投稿には『#ゴート・ポイント拡散希望』というハッシュタグが添えられており、彼はそのメッセージの裏に隠された熱意を感じ取った。

第三章:ゴート・ポイントとRAP暗号

 サンタマンはツンデロイド9000をカンナの屋敷に向かわせ、夜空から彼女の窓辺に現れた。

『な、何よ! 勝手に人の家に来るなんて非常識じゃないの!』

 顔を赤らめながら怒るカンナに、サンタマンは投稿を示しながら静かに言った。

『この#ゴート・ポイント拡散希望の投稿……お前が書いたんだろう? 俺はお前を信じてここに来た。』

 カンナはプイッとそっぽを向きながらも、どこか嬉しそうに答えた。

『べ、別にあなたなんかに期待してたわけじゃないけど……どうしても拡散する方法が見つからなくて!』

 彼女はゴート・ポイントの概要を説明し、RAP暗号の解除方法に彼女の声が必要なことを伝えた。
#なんのはなしですか

『このゴート・ポイントがあれば、ポイ活団のマイナポイント制度を一気に崩壊させられる。でも、拡散には私の音声生体認証が欠かせないの。』
サンタマンは笑みを浮かべ、彼女に手を差し伸べた。

『俺と一緒にポイ活団を倒そう。お前のゴート・ポイントでな。』

第四章:ゴート・ポイントとマイナポイント制度

 ポイ活団の巨大なサーバー施設。そこでは、全国民のマイナチップを制御するプログラムが稼働しようとしていた。

『急がないと、全国民がポイントの奴隷になる……!』

 サンタマンはカンナのゴート・ポイントをネットワークに接続し、作戦を開始した。しかし、最終的なシステム解除にはカンナの『音声生体認証』が必要だった。

『カンナ、今だ!』

 少し恥ずかしそうに顔を赤くしながら、カンナは叫んだ。
『マナコニワレヲオサメYoYoYo!!』
 その瞬間、RAP暗号が解除され、ゴート・ポイントが一斉にネットワークに広がっていった。稲妻のような光が走り、マイナポイント制度を支えるシステムが崩壊した。

『やった……これで、みんなが解放される!』

エピローグ

 ポイ活団の陰謀が打ち砕かれた未来世紀秋葉原。カンナとサンタマンは夜空を見上げながら、それぞれの思いを胸に抱えていた。

『……これで、本当の意味での相棒ができたのかも知れないわね。』

 サンタマンは軽く肩をすくめて笑う。

『そうだな。でもそろそろ、もう少し素直になってもいいんじゃないか?』

『だ、だから別に素直なんかじゃないって言ってるでしょ!』

 二人のツンデレた掛け合いに夜空の星が輝きを増し、ゴート・ポイントによる新たな未来がゆっくりと動き出していくのだった。

武智倫太郎

いいなと思ったら応援しよう!