日本の持続可能な未来人口:約3,000万人の真実 IV
現代の世界三大穀物とは何か?
皆さんは、世界三大穀物が何であるかご存知でしょうか? #三大穀物 や #五穀豊穣 などで知られる、主要な穀物の作付け面積や生産量は時代や地域によって変化していますが、現在、世界で最も多く生産されている穀物は、小麦、米、トウモロコシの順です。
小麦、米、トウモロコシは何科の植物か?
前回の記事で、多くの社会人が食物の三大栄養素(窒素、リン酸、カリ)について答えられなかったことについて触れましたが、その次に私が驚いたのは、世界三大穀物が何であり、これらがどのような植物であるかを知らない人が多かったことです。なぜなら、これらは私が学んだ時代には小学校で習う一般常識であり、教育カリキュラムが多少変わっても、少なくとも中学生までには学ぶべき基本知識だからです。小麦、米、トウモロコシは、いずれも #イネ科 に属する植物です。
人間の食料と家畜飼料としての生産比率
世界で生産されている穀物や芋類の用途は、カロリーベースで約50%が人間の食料に、残りの約50%が家畜の飼料に使用されています。
持続可能なイネ科植物栽培に必要な三大栄養素の量
植物を栽培する上で必要な肥料の量は、年間の収穫回数に依存します。日本の寒冷地では稲作が年に一度行われますが、温暖な地方では #二期作 や #二毛作 が可能です。これは小学校の教育カリキュラムに含まれているため、皆さんも覚えているかもしれません。一方、稲作が盛んなタイやベトナムでは、年に三度の収穫が標準であり、一部地域では年四度の収穫を行う田園も存在します。このような四期作を実施する場合、日本の一期作に比べて、栽培面積当たりの肥料の必要量は約四倍になります。
メコンデルタ地域における三期作の拡大と肥料投入
イネ科植物の栽培に必要な肥料の量は、稲の成長速度や収穫回数によって異なります。例えば、北海道でサイレージ(イネ科植物の葉を発酵させた家畜飼料)の生産に必要な肥料量は、1㎡あたり窒素8g、リン酸4g、カリ5gが平均値です。これは、年間で1㌶あたり窒素80kg、リン酸40kg、カリウム50kgのNPK肥料を必要とします。
世界中で問題となっている過放牧問題
日本の農林水産省や酪農業者がウェブサイトで公開しているイラストを見ると、家畜の糞尿が堆肥化し、その堆肥で育った牧草を家畜が食べる様子から、いかにも牧歌的で持続可能な循環農業のイメージが描かれています。
しかし、このような持続可能な状態を10年単位で維持するためには、牧場から牛乳や肉類などを持ち出さないという条件が必要です。このような閉鎖的な環境を『閉鎖系』と呼びます。この用語は、生態系や太陽系、銀河系などの単位としても用いられますが、閉鎖系からバイオマスの種類にかかわらず、木材、牧草、穀物、牛乳、畜肉など何かを持ち出すと、それはもはや閉鎖系ではなく、開放系となります。開放系はコップに入れた水と同じで、コップから水を飲むと、水を補充しない限り水は枯渇します。牧場を一つの『系』と見做す場合、牧場から得られる全てのバイオマスや食物の生産に使用された肥料を補充しなければ、僅か数年で土地は枯渇し、10年も続くと表土が流出し、 #砂漠化 してしまいます。
#過放牧問題 とは、牧草地や草原などの土地に、その地域が持続可能に支えられる家畜の数を超えて放牧することによって引き起こされる環境問題です。この問題は世界中の多くの地域で深刻な影響を及ぼしています。過放牧によって引き起こされる具体的な問題には以下があります。
土壌劣化:過放牧により、土壌を覆う植物が減少し、土壌が風や水に晒されやすくなり、侵食され易くなります。これにより土壌の質が低下し、地域の植物が育つ基盤が弱まります。
生態系のバランスの崩壊:牧草地の植物が過度に食べ尽くされると、特定の種が絶滅の危機に瀕します。これにより生態系全体のバランスが崩れ、多様性が損なわれます。
水資源の枯渇:過放牧地域では地表水や地下水の枯渇が問題になることがあります。家畜が消費する水の量が多いため、地域の水資源に対する圧力が増加します。
砂漠化の促進:土壌の劣化と植物の減少は砂漠化の進行を加速させます。植物が少なくなり、土壌が固まりにくくなります。乾燥した条件下では、風によって土壌が吹き飛ばされやすくなります。
過放牧問題への対処には、持続可能な放牧管理が不可欠です。これには、家畜の数を適切に制限し、放牧地の休息期間を設定すること、さらには放牧地の改良や植生の再生といった様々な対策が含まれます。過放牧の影響は深刻であり、その解決には長期的な取り組みと多岐にわたる戦略が必要です。土地の管理方法を見直し、自然環境と調和する持続可能な農業への意識改革が求められています。
日本の草原が砂漠化しない理由
多くの人々が、日本が砂漠化しないのは豊富な降水量があるからだと思いがちですが、この記事ではそうした誤解を正します。実際には、十分な降水量があっても、土壌に植物の成長に必要な三大栄養素が足りなければ、降雨量が多い国であっても容易に砂漠化が進む可能性があります。
日本の牧草地帯が砂漠化しない主な理由は、牧場に適切な量の化学肥料が施されているからです。また、日本が家畜飼料の大部分を輸入に頼っている点も、砂漠化を防ぐ要因の一つとして挙げられます。このシリーズでこれまでに述べてきた通り、もし日本が化学肥料や家畜飼料を輸入できなくなった場合、日本国内で支えられる人口の上限は最大で約3,000万人程度に限定されるでしょう。
本稿を通じて、過放牧が引き起こす問題の深刻さや持続可能な対策の必要性について理解を深めることができます。また、日本が砂漠化を防ぐための戦略とその戦略の脆弱性についても学ぶことができます。
これらの基本的な問題を理解することで、日本政府のエネルギー、食料、水の #安全保障 対策の不十分さとその危険性についても明らかになるでしょう。
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