劣悪な労働環境なのに、応募が殺到した超超超ブラックな人材募集広告
「採用ブランディング」という言葉があるように、採用とブランディングは非常に親和性が高い領域です。
訴求する対象は違えど、企業の魅力を高め、適切な人材を引き寄せるという点ではまったく同じ。
ということで、今回は採用ブランディングについて少し深めていきます。
1. そもそもブランディングができている会社は、採用にお金をかけない
拙著【愛され続ける会社から学ぶ 応援ブランディング】を出版する際、日本中の応援されるブランド(会社)の経営者さんをインタビュー取材しました。
※内容は弊所サイトのブログにある【応援されるブランド】シリーズをご覧ください。
これは取材先に限らず言えることですが、ブランディングが確立されている会社ほど採用にお金をかけない傾向があります。
お金をかけずとも、人が自然と集まってくるといった方が正確でしょうか。
※ここでの〝お金をかけない〟という表現は、採用にかける広告などの費用を指しています。面接にかけるコストや時間は含みません。さらに補足しておくと、採用後の人材育成には多額のお金をかけるブランドが多いです。
たとえば、広島県にある有名な複合型書店・ウィー東城店さんの場合だと、募集をしていなくても「お店で働きたい」という方が続々と応募してくるといいます。
実際は働いている人が定着しているので、お断りすることの方が多いそうです。
※よろしければウィー東城店さんのインタビュー動画も合わせてご覧ください。
2. 1回の募集で5000人もの人が応募した伝説のリクルーティング広告
あなたの会社では人材を募集すると何人くらいの応募がありますか?
実は、1回の募集で5000人もの人が応募した伝説のリクルーティング広告があります。
しかも、報酬はわずかにも関わらず、労働環境が劣悪で命の保障はないという超超超超超ブラックな人材募集です。
信じられますか?
それはイギリスのアーネスト・シャクルトン卿が出した南極探検隊員の募集広告です。
実際、南極探検では絶望的ともいえる遭難に遭い、隊員たちはこの広告通りの状況に遭遇します。
これは100年以上前の特殊な人材募集の話ですが、今の採用事情に一石を投じる内容ではないでしょうか?
美辞麗句を並べ、体裁良くデザインを整えた採用ページで、ホワイトな労働条件を羅列してたとしても優秀な人材は集まるとは限りません。
もちろん、労働条件や賃金は会社を選択する要素の一つですが、それだけでは自社に合った人が集まるとは思わないのです。
仮に集まったとしても定着するかは別の話。
事実、労働条件だけで人が定着するのであれば、中小企業より労働条件が良い大企業の離職率がゼロになるはずです。
私は採用では会社のネガティブな要素も含めて、できる限り正直に包み隠さず伝えるべきだと考えています。
最初に言えば「説明」、後から言えば「言い訳」です。
入ってから伝えるから「こんな会社とは思わなかった」となるのです。
個人的には、優秀な人を集めようという考え方自体が、採用ブランディングから少しズレているような気がします。
なぜなら、先の隊員募集広告で求めたのは「優秀な人」ではなく、「怖いもの知らずで名誉と賞賛を勝ち取りたいという価値観を持った人」だからです。
シャクルトン卿が求める価値観を持つ人たちが集まったからこそ、奇跡的に全員生還することができたのではないでしょうか?
3. ブランドの共感者を集めるためには…
応援ブランディングの専門家としての見解ですが、応援されるブランドをつくる上で集めないといけないのは「優秀な人」ではなく、「自社ブランドの理念と価値観に共感する人」です。
仮に南極探検で集まったのが、ただ優秀なだけの人であれば、おそらく全員生還することは難しかったと思います。
なぜなら、優秀な人ほど正常な判断(撤退)をすると思うからです。
採用でもブランディングでも重要なのは「誰に対して訴求するか」。
そして、その人たちが価値と感じるものをダイレクトに伝えること。南極探検隊員の募集であれば、【成功の暁には名誉と賞賛を得る】ことです。
さらに、人の心が動かさなければ、採用もブランディングも成功することはありません。
では、人は何に対して心が動くのか?
それは、ミッションやビジョンという会社の価値観が、経営者のフィルターを通して〝本心〟として伝わったときです。
あなたは真剣に、そして本心として自社の価値観を伝えていますか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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※全国の応援されるブランド11社の経営者との対談動画を、YouTubeの応援ブランディングチャンネルで公開しています。こちらもぜひご覧ください。