家族に伝える経済シリーズ(35):ビジネスの始まりに必要なもの ー 資金とその集め方
大体、何かビジネスを始めようと思ったら、まずは手続き費用が数十万円〜百万円くらいかかるんや。これがスタートの第一歩ってところやね。
それで、いざ事業を始めるとなると、場所がいるやろ?
オフィスビルの事務所を借りるのに、毎月数十万円は覚悟せんとあかん。
何か商品を売るにしても、商品や原材料の仕入れ費用や、製造するための設備費、水道光熱費がかかる。
そして、それを作る人や売る人が必要やから、人件費もかかるわけやね。
さらに、商品やサービスを売り出すには広告宣伝費もかかる。
で、売れたら売れたで、その管理――会計、経理、人事とか――にもお金がかかる。税金も払わなあかんから、経理は欠かせんのや。
とにかく、いろんな原価やコストがかかるわけやね。
つまり、商売を始めるにはかなりの資金がいる、ということなんや。
アイデアや技術だけではなかなか難しいもんやね。
昔は、元手をちょっとだけ用意して、こじんまりと始めて、少しずつ大きくしていく……なんてこともできたかもしれんけど、今はそんな悠長なことを言ってられんことも多いんや。
せっかく新しいビジネスを始めたとしても、それが人気になったら、すぐに真似するライバルが出てくるからな。だから、ある程度の規模で始めて、早くに実績を出さんとあかん。
さて、どうしようか……お金が必要なんやけど、手元にない場合は?……まずは借りることを考えるやろうな。銀行が貸してくれるかもしれん。あそこはお金を貸すのが商売やから。
でも、期限が来たら金利をつけて返さなあかんし、そもそも成功するかどうかわからんビジネスには銀行もなかなかお金を貸してくれんね。(「下町ロケット」(注)を読んだらええで)
返済したらまたお金がいる。そしたら、・・・また借りる?
それだけで経営者は忙しくなるわけや。
本業に専念する余裕があるんか?……って話やな。
世の中には、資金繰り(お金を用意すること)ばかりが仕事みたいな社長もおる(苦笑)。
実際には、ビジネスが軌道に乗れば、銀行もお金を貸してくれるようになる。それも続けてやね。だって、返してもらえる目処が立つから。
でも最初はしぶるわけや。何の保証もないビジネスには慎重になるやろうな。
そこで、このビジネスの元手を準備する方法として、「株式会社」という仕組みが考えられたんや。
最初は、友人や知人が資金を出し合ってビジネスを始める、っていう発想やったんやろうな。でも、大きな資金を何人かで集めるってのは、なかなか難しいことやね。
(注)「下町ロケット」:
池井戸潤による日本の小説で、町工場がロケットエンジンのバルブシステムの開発に挑む姿を描いた作品。技術力と経営の困難に直面しながらも夢に向かって奮闘する姿が共感を呼び、テレビドラマ化もされて大きな反響を得た。