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洋服の唄

【あなたとシャツの詩】

あなたと買った
思い出のシャツを
今日
ひさしぶりにクローゼットからだして

あなたとのカラフルな思い出も
引き出されて
少しだけ
ほんの少しだけ
胸が痛くなった

あなたと買った
思い出のシャツのにおひを
大きく大きく吸い込むと

あなたの香水の香りが
鼻に抜けるようで
ほんの少しだけ
胸が痛いの

あなたと買った思い出のシャツと
今日、さよならをして

思い出だけが鮮明に縁取られていく感覚が
とにかく哀しく
とにかく悲しい

だけど今日も私は生きていく

好きな服を着よう
好きな私でいよう


______________________

大きく息を吸うたびに
胸いっぱいに
あなたの香りが染み込んで
浸透して
染み込んで
だんだんと馴染んで

やわらかく
私の一部になっていく

あなたにとっての
大事な皮膚のような
一部に、私はなりたい

そんな、服でいたい

______________

わたしは知っている

あなたが倒れこんで
ひとりで静かにしとしとと
泣き崩れる夜を

わたしは知っている

誰に怒っていいのかも分からずに
自分自身に怒りを向けた夜の静けさを

私は知っている

あなたが誰よりも優しくて
あなたが誰よりも
あの人
想いであることを

あなたの涙が染み込んだ
やわらかいシャツを
何枚も何枚も
洗濯機に入れて

止まっている洗濯機を何時間も眺めて
無心で
自分を責め続けた真夜中の静寂を

あなたは悪くない

わたしは知っている
わたしだけはあなたの味方であることを


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