《感想》海のはじまり②
【海のはじまり】
▶連続ドラマ
全員素晴らしすぎましたが、キリがないのでわたし的思い入れのある3人の感想を。
目黒蓮の演技は本当にすごいと改めて思う。
そして、こういうテイストが本当に合っている。
海の父としての未熟さや危うさ、弥生に対して無神経なほどの過去や水季への執着が目や言葉の発し方に表現されていて、かわいそうでありながらも常に夏に抱いたイライラする感情。今をときめくアイドルグループのエースがこういう役を演じてしまうとどうしても「目黒くんかわいそう」みたいな演じる中の人に気持ちを寄せられてしまいがちになる。もちろんファンの人にはそういう気持ちもあったと思うが、世間の反応としては目黒蓮ではなくあくまで月岡夏として見られていて反応されていた。それが、当たり前でありながらとてもすごいことだと思う。
見るだけで辛いほど苦しいことの連続だった有村架純の弥生。
ずっと明るくて元気で笑顔なのに、ひたすら痛々しく見える。見ているこっちが苦しくて(それは過去のことを視聴者が序盤で知っていることを除いても)笑顔を見せるたび、余計に辛く悲しく見えてくるのが凄かった。ちゃんと笑顔なのに、顔は引き攣っていないはずなのに引き攣った笑顔に見える。弥生の過去によって出来上がった闇と、夏と海と水季の間にしかない弥生には入れない3人だけの世界への悲しみ嫉妬…。夏と海の親子の絆に対して思うこともいっぱいあるだろうし、死んでしまった水季への海の母親という存在への思いと、夏の元カノそれも子どもを産んだという存在への思い、が内面的なことなのにひしひしと伝わってくる。
一貫して、夏と海と水季の家族物語の中では弥生が悪いところは一切ないのにいつも苦しい立場であり悪者であり続けた。
視聴者にどうか幸せになってほしいと願わせるほどの弥生が出来上がったのは弥生の人物像はもちろんのこと何より有村架純が演じたからだと思う。
圧倒された大竹しのぶの朱音。
よく子どもも孫も同じようにかわいいけど、やっぱり子どもには孫とは違うかわいさがいくつになってもあるとか、結局はいつまでも子どものほうがかわいいとか言う。私は成人した子どもも孫もいないからその真意はわからないけど、その言葉を体現するような人。
まだまだ小さい孫の海が母親を亡くしてしまいなんとしてでも海を育てないといけない責任感だけで朱音はしっかり生きているけど、水季が死んでしまったことを水季の産みの母親というこの世にたったひとりしかいない立場で直面しているのも事実。身内の死は悲しくて当然だけど、順番通りなんて保証がないのも当然だけど、自分の子どもに先立たれる悲しみはまた他の死と向き合うのとは違うはず。
その中で、自分が生きるだけで精一杯なのに孫を生きさせなければいけなくて、その上孫の父親とその彼女が出てくることに複雑な思いが生まれるのは当たり前。
誰に対しても"普通"にしているけどキャパオーバーな感じで気持ちが不安定で、発する言葉に嫌味が含まれていたりその嫌味な自分に気持ちが落ちたりする感じがひしひしと伝わってきて可哀想な立場にあることを分かりながらも最後まで好きになれなかった。
人として、母として、祖母として、色んな朱音が正常な大人として機能している部分とそれを凌駕する心の揺らぎが正常な大人としての機能を妨げる姿を痛々しくも嫌悪感を抱かせつつも人間としてわからなくもない姿として演じているのがさすがだった。
ドラマあるあるなただの嫌味な人でも、ただの良い人でもない、人間として持ち合わせる複雑さをリアルに演じてドラマの人物と大竹しのぶ自身の境目を曖昧にするのが本当に上手すぎて怖い。(褒め言葉)