《感想》アイのない恋人たち
【アイのない恋人たち】
▶︎連続ドラマ
1時間枠を9回という実質9時間もない短い時間の中で、それぞれの男女、男同士、女同士、各家族が余すことなく丁寧に描かれていてそのボリュームに満足感がすごい。
その上それぞれの動きがリンクしていたり、別の世界で動いていた者たちが繋がったりしていき最後はそれぞれの関係がドラマチックに綺麗に終わる。
なんて素晴らしい綺麗な作品なんだろう。
この作品は恋愛が中心ではあるけど、男女が絡み合う人間関係を恋愛というものを除いた場面で魅せるのが本当に上手すぎて人間世界の縮図を見ているように思わされるのが遊川作品の醍醐味。
30歳前後は自分自身の気持ちは学生時代からそんなに変わっていないのに急激に現実が見えてくる頃で自分が生きていく将来もなんとなく見えてしまう年頃。
仕事も家庭も生活水準も含めてある程度「これくらい」の人生が自分の人生なんだろうなと決めつけてしまう年頃。
人生百年時代、30歳なんて本当はまだまだ若造なんだけどどうしても学生時代に思い描いた夢を終わらせるべきだと思ってしまう。
そういう時期を生きている7人の男女が恋愛を通して諦めかけた自分の将来を輝かせる物語だった。
恋愛はしなくても生きていけるし絶対にしなくてはいけないことでもない。
とくに今の時代は恋愛に拘らずとも人と繋がりたいときに繋がることができるし、もしも人肌恋しくなったら一時的な温もりを手に入れることだって簡単にできる。
それでも恋愛からしか得られない養分はあるんだと感じた。
それは恋愛をすべきという意味ではなくて、スポーツからしか得られない養分、映画を見ることからしか得られない養分、料理をすることからしか得られない養分、ペットからしか得られない養分…みたいなものの一種として恋愛があるということだが。
その養分は真和(福士蒼汰)のように、注がれる愛で過去の自分を慰め乗り越え自分の力に変えたりするのだろうし、多聞(本郷奏多)のように時には考え方が変わるくらい新しい自分を作りだしたりするのだろうし、雄馬(前田公輝)のように大きな愛で相手を見れる人間になれたりする。
愛(佐々木希)のように抱いた愛が叶わなくてもその愛が他の愛を生み未来への希望になることだってある。
絵里加(岡田紗絵)、栞(成海璃子)、奈美(深川麻衣)の3人のような友情ができたりもする。
もしかしたら逆に失ったり壊れたりすることもあるかもしれないけど、そのことに臆病になりすぎず恋愛するのも面白いなと思わされた。
日曜22時枠、とっつきにくいけど沼になる作品が多いなあ。