《感想》テレビ報道記者〜ニュースをつないだ女たち〜

【テレビ報道記者〜ニュースをつないだ女たち〜】

▶︎特別ドラマ



最近のテレビ報道にはうんざりすることも多々あるし、もう必要ないのではないかと思うことも多々あるけれど。
それでもその世界に飛び込み全力で魂を燃やして生きている人、生きてきた人たちはいるんだと、当たり前のことではあるが考えさせられた。


曽根(仲間由紀恵)の働いていた時代はテレビが情報を知る主要なツールだった。
女性が働き続けることこそ困難だったがテレビ業界が煌びやかな世代。

平尾(木村佳乃)の働き始めた時代はテレビが当たり前にある存在でありかつ1番栄えた時代だと思う。
曽根よりは女性でも働くことが可能にはなったけど女性であることが取り上げられる時代。
テレビ業界が煌びやかな世代、けれど自分が責任ある立場になったときには全く想像していないような時代になってしまった世代。

真野(江口のりこ)は曽根のような時代に憧れて育ったものの働き始める頃には時代が変わりだしテレビの力が弱くなるのを目の当たりにしたのだと思う。
テレビ業界の煌びやかさを知っているのに現実はどんどんその煌びやかさから離れていった世代。
女性でも働き続けるということは可能になったけど、その分の我慢を女性が強いられた上で成り立つことが当たり前でありひとりで仕事と家庭の両立ができてこそ働く女性であるという目で見られる世代。

和泉(芳根京子)はテレビは見てきたけどほほぼずっとSNSもそばにあった中で生きてきた。
テレビを見ない、持っていない人がいることをわかっている世代。
わたし自身はほぼほぼ彼女と同じ時代を生き、似た道を辿ってきているので彼女の気持ちがよく分かる。
コロナの時も守るべきものが少なく身軽ではあるものの社会に出て比較的すぐコロナ禍になり孤独と現実の厳しさを突きつけられた。
‎元々、良くも悪くも諦めがちな考え方を持つ世代なのにそれを加速させられるような環境になってしまった。
和泉の真野に対しての物言いのような不躾な人は周りにはいないけど考え方はかなりリアルに「あんなもの」だと思う。
トラブルもめんどう、ぶつかったり戦ったり悪口を言うくらいなら静かに辞めてしまえってタイプが多い。とにかく1番楽そうなめんどうにならなさそうな自分の心的にざわつきの少ないアンパイな道を求める感じ。私もそうだし。
だから必然的に和泉の目線で見てしまうのだが、この世代にテレビ報道記者はかなり難易度が高い仕事だと思う。

でも、どの世代も悩みは違えどみんな悩んで生きている。
こんな時代は嫌だと思うことも多いけど、曽根が見たら働き続けて頑張れば女性でも役職をもらえるなんて夢みたいな世界だろう。
逆に和泉からするとそんなに頑張りたいと思える曽根や平尾に対しての羨ましさがあるだろう。
真野からすると和泉なんてぴよぴよすぎるし考え方が違いすぎて宇宙人だろうけど平尾からすると真野だってまだまだ子どもに見えるだろうし。
どの時代が良いとか正解というのはないのだけど、揺るぎない事実としてあるのは曽根から平尾へ、平尾から真野へ、真野から和泉へ、直接でなくてもバトンが渡っているということ。
テレビ業界だけではなく、私もまた誰かのバトンを受け取っていて、誰かが望んだ未来に生きているんだと思った。



そして何より思うのが一視聴者である私たちよりも、彼女たちのような人こそが今のテレビ報道に対して疑問を抱いたりうんざりしていたりするのではないだろうか。

この先、テレビがどうなっていくかは分からない。
ただ、私がテレビっ子というのもあるけれどテレビ報道でしか伝えられないことや変えられないことがあると思っているし(規模や方法という面でSNSという無秩序な世界の中の字によるニュースだけでは到底追いつけない影響力があるという意味で)テレビ報道が本当の意味でその影響力を正しく扱いいつまでもテレビがそういう存在であってほしいと願う。
真野が殺人事件の時効の法改正にテレビの力を使ったような使い方をしてほしいとも思う。


どの業界でもあることだが、現場の人間は本気で戦っていたり熱意を持っていたりする。
お金のことや企業としての関わりなど簡単ではないことがあるのは百も承知。でも、それを取り仕切る上の人間が欲にまみれて頑張った人間の努力もろとも潰してしまわないように。
これはフィクションだけど、きっと曽根や平尾や真野や和泉のような人たちが一生懸命テレビ報道を意味あるものにしようとしてきたし、今もなおしているはず。
テレビの変革期、今本当にオワコンになるか否かかかっている時だからこそどうかその思いが上に立つものに届くよう切に願う。

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