《感想》東京タワー
【東京タワー】令和版
▶連続ドラマ
恋の正解はなんなのか
恋の不正解はなんなのか
答えのないものだと思う。
答えを出すべきではないものだとも思う。
人の気持ちは移ろいゆくものだから。
婚姻関係にある以上、パートナー以外との恋愛は法律的にも道徳的にも良くないことだと思うけど(全て清算してから新たな恋を始めるという選択ができることだから)人間が人間として生きていく以上勝手に心が動いてしまうこと自体は究極的には誰にも責めることができるものではないとも思っている。
だけど、透(永瀬廉)の若さゆえの甘さや馬鹿さも、詩史(板谷由夏)のもの寂しい満たされていない大人からの目線もどちらも微妙にわからない私は2人の恋を始めの頃の耕二(松田元太)の目線に似た一歩引いた感じで見ていた。
数年前の自分だったら透の詩史にのめり込む気持ちがわかったかもしれない。
恋愛は人生においてもっとも年齢や経験に左右されるものだと思う。
だから嫌いにならなくても好きな相手と合わなくなる瞬間がくる。
好きになることはもちろんだが、結ばれるかどうかは(付き合うことも結婚することも)タイミングで決まる気もする。
この瞬間の透にとって詩史はこれ以上ない素敵で魅力的な女性なのだろうけど透が年齢を重ね経験を重ねた先に見える詩史のその魅力はむしろ人としての未熟さに見えるかもしれない。
不倫だからダメだとか、年齢差があるからダメだとかそんなことではなくて、透が感じる奇跡に思えているその運命は本当は運命なんていう綺麗なものじゃないことがわかってしまうから、切なくて苦しい。
でもそういうことが分からなくなるほどの盲目さを生み出すものが恋愛であるし、善し悪しは置いておいてそういうことを考えず今思う気持ちにただまっすぐにのめり込むことができるのが若さなんだとも思う。
それでいうと恋愛を一種の遊びのように楽しんでいた耕二が耕二自身の知らぬ間に喜美子(MEGUMI)を心から愛してしまっていたことは透以上に良くも悪くも人間の恋愛らしさを感じた。
途中、ホラー映画並の怖いシチュエーションがこの作品に似つかわしくない滑稽ささえ生み出していたけど、思春期の娘・比奈(池田朱那)からすれば母親の恋する姿を見たくなかっただろうし母親への嫌悪感を耕二を通して募らせて狂っていくのもまあわかる。
そんなめんどうな時に人生イージーモードで遊んできた耕二が面倒事の種である喜美子を放りださ(せ)なかったのは耕二さえ気づいていない恋愛感情が生まれてすでに大きくなっていたから。
人間なんてそんなものだと思う。
虚勢を張っていても、軽口を叩いていても、頭でわかっていても心は、感情は、留まることを知らない。
4人みんなが誰かを傷つけ、誰かの人生を変えてしまうほどに迷惑をかけているから、全くもって許されることではないけれど、これからの人生で良くも悪くも思い出として残る短い恋になったんだろうな。
永瀬廉の理屈っぽい理論っぽい頭の良さで人を馬鹿にして遠ざけていながらも寂しさいっぱいの透。
板谷由夏の名誉も地位も財産も持ち合わせているのに満たされていなさそうな大人に見えるけど本当は精神的に未熟な詩史。
松田元太の単純バカだからこそ素直で取り繕うことも上手く嘘をついて交わすこともできない耕二。
MEGUMIの自分自身やこの先の人生について諦めて日々楽しくなさそうな喜美子。
全員、普段のキャラクターとは違うキャラクターだったのに雰囲気からそれぞれの役そのものになっていて役者凄いと思った作品。