
23時のから騒ぎ
21時すぎ、仕事を終えて電車に乗り、
1時間半かけて帰宅。23時前。
珍しく遅くなったなぁと思いつつ、
ポストを覗きエレベーターに乗り、
部屋に向かう。
ふと部屋のドアの前に何かが落ちてることに気づく。嫌な予感。昆虫。
全身がこわばる。
よく目を凝らすと、あれだ。
蝉だ。
しかも仰向けになってる。
いのちの灯火が消えてるような静けさ。
でも、怖い。怖すぎる。
私は昆虫が超苦手。
数年前にベランダに蝉のなきがらを見つけたときは、風化を待った。半年間。
ベランダに出ることなく。
まず問題は、ドアの目の前にいること。
もし居眠り中だったら?
ドアを開けたタイミングで目覚めたら?
私の方に向かって来たら?
逆で、部屋の中に入って行ったら?
終わる。
「どうしよう」とひとり呟く。
ここまで1分。体感10分。
過去の経験から、
もう飛ぶことはないと判断して、飛ばないでと祈りながらそっとドアを開いた。
大丈夫、飛ばない。
祈りながら蝉をまたいで玄関に入り、
すぐにドアを閉めた。
一旦なんとかなったが、明日からどうするのか。
そもそもデンタルフロスを買い忘れたから、
この後コンビニに行きたい。
母にLINEで現状を伝えつつ、
ティッシュ数枚とゴミ袋を持って、
拾えないかチャレンジすることにした。
ポイっと袋に入れて捨てるのだ。
できない。絶対無理。
心折れてコンビニへ。
デンタルフロスを買って、玄関に向かうと、
共有スペースに地域の広報誌が積んでるのを発見。
(毎月あるやつ、昨日も一昨日もあったやつ)
もしかするとこれでスッと持ち上げて、
外にポイっとできるのでは?
うちは外廊下だから。
広報誌を握りしめ、部屋の前の廊下へ。
まだいる。当たり前だけど。
腰を落とし、水平にした広報誌を、
蝉の下に差し入れようとする。
バサバサっ!!
わぁぁぁぁああ。
飛ばなかったが、最期の力で羽根を動かした様子。
(あまりの恐怖に視覚的な記憶がない、音だけ)
ひとりうめき声を上げながら、再チャレンジ。
強く刺激しないように、角度を変えたりしながら、時間をかけて少しずつ紙の上に乗せていく。
「飛びませんように」と祈りながら。
乗ったぁ!
ぽいっと外に放り投げ、ドアを開けて部屋へ。
心臓がドキドキするし、胃もたれもやばい。
でも、私は確かにやり遂げた。
母にLINEで報告し、称賛と労いの言葉をたくさんもらった。
と言うことで、
動揺を静めるためにこれを書いてる。
夏も終わりに向かってるのかな。