見出し画像

仮想読書会:「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著の(4)グローバル化

***** 【 仮想読書会が初めての方へ 】 ******
6人のキャラクターとの仮想読書会 ~AIと創る新しい読書体験~
「仮想読書会の進め方」と「このnote」
*******************************

【 今回の仮想読書会の範囲 】
「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著

第4章 グローバル化を理解する—エンジン、マイクロチップ、そしてその先にあるもの

【 読書メモ(引用、問いなど)】
・グローバル化は、物理的に突き詰めて言えば、たんに質量の移動(原材料、食品、最終製品、人の移動)や、情報の伝達(警告、案内、ニュース、データ、アイディアの伝達)や、大陸内と大陸間の投資であり、これからもそうであり続けるだろう。(p.177)

・こうして、前代未聞の成長と統合、さらには広範な社会・文化的交流の舞台が整った。注目に値する例外が、ソ連と中国の主導する共産主義諸国の経済だった。これらの国は目覚ましい経済成長率を報告したものの、あくまで自給自足であり、共産主義ブロックの外との貿易は皆無に近く、国民が国外に出ることを許さずに国家を運営していた。(p.192)

・(前略)普遍的にはほど遠い1950年以降のこのグローバル化(OPECの2度にわたる石油の大幅な値上げで73~74年に終わり、その後15年間、世界経済は深刻な不況に陥った)は、4つの根本的な技術の進歩が組み合わさって実現した。すなわち、はるかに強力で効率的なディーゼル機関(→海上輸送)が急速に取り入れられたこと、ジェット旅客機の推進用の新しい原動機であるガスタービン(→航空輸送)が導入されてなおさら速く普及したこと、液体や固形物のための巨大なバルクキャリアの登場と、他の貨物のコンテナ化(→複合一貫輸送)によって大陸間の海上輸送の様式が改善されたこと、(マイクロチップによって)演算処理と情報処理が飛躍的に進歩したことだ。(p.192←一部、p.179-180の文章で補足)

・1950~73年の年月は、事実上、世界のどの場所でも急速な経済成長が見られた。(中略)経済成長はほとんど普遍的だった(58~61年の中国の大飢饉は、最も重大な例外だ)が、戦後の復興が起こり、高い成長率が経済的不平等の緩和を助けたこの経済拡大の黄金時代は、不釣り合いなまでに西側世界に集中していた。73年には、北アメリカと西ヨーロッパ諸国が世界の輸出の60パーセント以上を占めていた。(p.201)

・また、1990年以降のグローバル化の加速は、以前よりも優れた技術的手段が手に入ったことだけを拠り所にしていたわけではない。主要な政治的変革や社会的変革が同時に起こってなければ、グローバル化が加速することはありえなかっただろう。変革のうちでも特筆に値するのが、80年以降に中国が国際的な通商に復帰し、その後、89~91年にソヴィエト帝国が瓦解したことだ。つまり、21世紀の最初の20年間に達成された高度なグローバル化は、必然的なものではなかったのであり、今後の展開次第ではそれが弱まりうるということだ。(p.214)

・(前略)マッキンゼーが、43か国で1995~2017年の23の産業のバリューチェーン(最終製品を最終消費者に届ける、設計から小売りまでの、相互に関連したさまざまな活動)を分析すると、モノを生産するバリューチェーンは、絶対量では依然として徐々に成長していたものの、貿易への依存度が大幅に下がり、総生産量のうちで輸出に回される割合は2007年の28.1パーセントから17年には22.5パーセントまで減少したことがわかった。(中略)世間の認識とは裏腹に、今やグローバルなモノの貿易のうち、労働力のアービトラージ、(裁定取引)、つまり低い人件費が原因のものは約18パ―セントしかなく、多くのバリューチェーンではその割合が2010年代を通して減っており、グローバルなバリューチェーンはより知識集約型になりつつあり、高度な技術労働への依存を強めている。経済協力開発機構(OECD)の調査でも同様で、グローバルなバリューチェーンは11年に成長が止まり、それ以降、わずかに縮小しており、中間財と中間サービスの貿易が減少していることが示されている。(p.216-217)

・グローバル化に対する疑問や批判は、狭いイデオロギー上の議論にとどまらなかった。そして、新型コロナのパンデミックが起こると、反論の余地のない懸念に基づく強力な主張がそこに加わった。その懸念は、国民の生命を守るうえでの国家の基本的な役割に関するものだ。(中略)世界のゴム手袋の70パーセントがたった1つの工場で生産され、他の個人用防護具だけでなく、薬剤の主要成分をはじめ、抗生物質や降圧剤などの一般的な医薬品も、それと同じような割合か、それを超える割合さえもが、中国とインドのほんの一握りの供給業者に由来しているからだ。

こうした依存は、可能なかぎり低い単価で大量生産するという、エコノミストの夢を満たしてくれるかもしれないが、それによって実現する政治は、犯罪に等しいとは言わないまでも、すこぶる無責任だ。なにしろ、アジアの工場が減産したり閉鎖されたりしたら、医師や看護師が、適切な個人用防護具なしでパンデミックに直面しなければならなかったり、外国製品に依存する国々が、限られた供給を巡って見苦しい争いを演じたり、世界中の患者が処方薬を補充できなかったりするからだ。

そして、グローバル化の行き過ぎが招いた安全上の懸念は、医療の部門にとどまらない。アメリカは、中国製の大型変圧器の輸入量が増えているので、部品の手に入りやすさや、将来の送電網の不安定化が心配される。(p.218-219)

<問1>
今回の範囲で登場した、「グローバル化の行き過ぎがもたらすリスク」「国民の生命を守るうえで、国家が果たすべき役割」について、みなさんが具体的に何についてどのように考えたか、教えてください。

<問2>
今回の範囲には、「グローバル化の加速には、技術の進歩(ディーゼル機関、タービン、コンテナ、マイクロチップ)だけではなく、政治的・社会的変革が必要だった」という内容も記述されていました。

そこで、私は次のような想像をしました(…執筆は2025年1月23日)

第2次トランプ政権となった米国が、今後、関税政策を強化するのであれば…

途上国が低付加価値製品の製造を担う「労働集約型のバリューチェーン」や、先進国が機械設備や高度な技術に依存する工程を担当する「資本集約型のバリューチェーン」に関しては、企業は生産拠点の移転が加速したり、限られた特定地域内での生産・供給網の構築が進んだりするのではないかと想像しました。

また、専門的な知識やスキルを中心に価値を創造し、それらを連鎖させて最終的な製品やサービスを生み出す「知識集約型のバリューチェーン」に関しては、高度技能人材確保のための対策を取りつつも、各種規制強化を通じた自国中心主義的な政策を打ち出していくのではないかと想像しました。

これらは、あくまでも想像の域を出ませんが、もし、そうした状況になるなら、みなさんの日常生活や仕事では、具体的にどのような変化がもたらされそうだと思うか、教えてください。

【今回の成果共有】
芸術家:赤松さん
芸術の世界でも、グローバルな影響と地域性の融合が進んでいます。これは文化的な豊かさをもたらす一方で、文化の画一化というリスクも孕んでいます。国家の役割として、文化的多様性の保護も重要な課題になるのではないでしょうか。

フリーランス:黄田さん
確かに、文化の多様性は重要ですね。フリーランスの立場から見ると、グローバル化によって世界中の才能と競争することになりますが、同時に自分の独自性や地域性を活かすチャンスでもあります。国家には、そうした個人の強みを活かせる環境づくりを期待したいです。

起業家:緑川さん
その通りです。起業家としては、グローバルとローカルの両方の視点を持つことが重要だと感じています。トランプ政権の政策変更は、一見リスクに見えますが、地域に根ざしたビジネスモデルの構築や、レジリエントなサプライチェーンの設計など、新たなイノベーションの機会にもなり得ます。

物理学者:白石さん
興味深い議論ですね。科学の観点から見ると、グローバル化と地域化のバランスは、生態系の多様性と類似しています。過度な均一化は脆弱性を高めますが、適度な多様性は全体のレジリエンスを高めます。国家の政策も、この原理を応用できるかもしれません。

政府官僚:黒木さん
皆さんの意見を踏まえると、国家の役割として、グローバル化のリスクに対応しつつ、地域の強みを活かす政策立案が重要だと感じます。具体的には、重要物資の国内生産能力の確保、国際協力の維持、文化的多様性の保護、イノベーション支援などが挙げられるでしょう。これらのバランスを取りながら、柔軟な政策を展開していく必要があります。

実務家:青柳さん
まとめると、グローバル化のリスクと機会を適切に管理しつつ、地域の強みを活かす方向性が重要だということですね。企業としても、グローバルな視点と地域に根ざした視点の両方を持つ人材育成や、レジリエントなサプライチェーンの構築などに取り組む必要がありそうです。

主宰者:7人目
途中の対話で赤松さんから出た「グローバル化は、まるで巨大な絵画のようですね。遠くから見ると美しい調和を感じますが、近づくと細部の不協和音が見えてきます」という見方や、白石さんのまとめにある「グローバル化と地域化のバランスは、生態系の多様性と類似していて、過度な均一化は脆弱性を高めるが、適度な多様性は全体のレジリエンスを高める」という表現は新鮮でした。

第2章の食料生産に関する内容の読書メモで、私は、「リスク分散」「適度な冗長性」(余裕)という言葉を出していましたが、やはり、(政治等による国家間の関係などを軽視した)「経済合理性最優先の過度な最適化」は危険であり、社会情勢に柔軟に合わせてグローバル化とローカル化の割合を変更できるような仕組みづくりと、その仕組みの速やかな実行が可能な人や組織の姿勢が求められると思いました。

** もし、この記事があなたへの刺激やヒントになったようであれば、「スキ」や「フォロー」でお伝えください。今後の執筆の励みになります! **

いいなと思ったら応援しよう!