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製造業の人手不足はなぜ起こるのか?
「これから日本は100年もの間、人口減少が続き江戸時代と同じくらいの人数になる」
先日、東京大学の先端技術を研究する先生と話していたらこんな話題になった。この先生は「自分の技術で日本を救いたい」との崇高な想いを持っている立派な研究者の方だ。ちなみに今の日本の人口が1億2,359万人なので、江戸時代の3,000万人になると約1/4になってしまう。
まあ、確かに出生率1.20では人口置換水準2.07(人口を維持するのに必要な出生率)の約半分なので、単純に今生まれてくる子供の子ども世代は半分になってしまい、さらに孫世代は1/4となる。そう考えると、あながち3,000万人という数字は外れていない気がする…
でも、緩やかに人口が減っているだけでは人手不足は起こりづらい。なぜなら目に見える変化がないのだから。それ以上に、何らかの需給バランスが崩れているから慢性的に働き手が足りない状況に陥ってしまうのだろう。
「第三次産業への労働移動」
かのドラッガーは著書「明日を支配するもの」で「知識が中心の社会では移動の自由が不可欠だ」と述べていたが、自由な知の移動の結果、産業構造が大きく歪んだ。
明治時代には第一次産業従事者が60%、第二次産業20%、第三次産業20%の割合だったのが、僅か150年の間に産業構造は大きく変化した。
明治時代 現在
第一次産業 60% → 5%
第二次産業 20% → 25%(高度成長期は40%)
第三次産業 20% → 70%
付加価値の高まった知識産業に人が流れ着いた結果、人々は皆、第三次産業で働くことになった。
そういえば、製造業の採用の仕事をやっていた頃「なぜウチの会社にはこんなにも人が来ないんだ」と嘆いていた。でも良く良く考えてみると理に適っているのだ。なぜなら、就活対象の大卒者は毎年50万人ほどいるのだが、製造業に就職するのはそのうち僅か5万人。トヨタへのエントリー数と変わらない規模なので、トヨタが本気を出せば根こそぎ持って行かれてしまう人数なのである。
ちなみに製造業の企業数は66万社なので、仮に学生を均等に割り振ったとしても、10年に一度入社してもらえるかどうかの確率。まして99.5%を占める中小企業と巡り合わせる確率は限りなく低く天文学的確率となるだろう…
では、他の就活生はどこに行ってしまったのだろうか?
そうなんです。残りは第三次産業へ行ってしまい、第一次産業ともなると数千人しか就職しない状況である。
そう考えると、製造業の人材不足を解消するためには、隣の池に釣り針を落とした方が良さそうな気がします。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございました。