令和阿房列車論~その2優等列車今昔
現在のJRの優等列車と言えば、新幹線と言って間違いはないと思います。
西を向けば東海道・山陽新幹線と九州新幹線、北を向けば北海道・東北新幹線、秋田新幹線、山形新幹線、上越新幹線、北陸新幹線があります。愛称を挙げるとキリがないので、ここでは割愛します。
在来線にも特急列車という優等列車がありますが、唯一の定期寝台特急の「サンライズ出雲・瀬戸」や北海道や九州を走る都市間特急、北陸本線や常磐線を走る特急を除くと短編成のローカル特急が中心となっています。
一方、昭和20年代の『阿房列車』に書かれていた国鉄時代の優等列車で特急列車と言えば、東海道本線の「つばめ」「はと」と山陽本線の「かもめ」のみでした。それ以外は特急列車より格下の急行列車が日本全国を走っていました。
さて、現在の優等列車は新幹線を含めてスピードや座席の質こそ向上しましたけれども、食堂車や車内販売、車内の自動販売機などの車内供食サービスはほとんどなくなりました。車内で飲食を必要とするときは、事前に出発する駅で駅弁や飲みものを買わなければなりません。
それに対して、昭和20年代の優等列車には食堂車や車内販売がありましたし、特に一等車を利用する乗客に対する給仕掛(ボーイ)もいました。『阿房列車』の作品の中でも百閒先生がボーイに(途中駅で)食べものを買ってこい!というくだりがよく出てきます。
昔は主要幹線でも一日に数本しかなく、しかも丸一日かかって走っていたので、飲食のために食堂車や車内販売が重宝されていました。けれども、いまは新幹線を含めて同じ区間を1時間おきに走っていたり、所要時間も数時間となって食堂車や車内販売の必要性が薄くなったのでしょう。