『青い春を数えて』(武田綾乃)
※本書のネタバレを含みます
※少しネガティブな話も含みます
青い春の眩しさにあてられた私は、もう大人になってしまったのだと自覚した。
この本はあまりにも瑞々しくて青い。
その青臭さは、大人にとってあまりにも毒だった。
思春期の悩みを抱えた少女たちの短編集。
『失敗して友達に負けたくない』
『効率の悪い生き方はしたくない』
『誰も私を見てくれない』
『敷かれたレールを歩くつまらない生き方はしたくない』
青春って、どうして青春っていうのだろう。
そう思ったとき、「ああ、果実が熟れる前、青い実の春だからか」と気がついた。
失敗なんて、大人だってするんだから子供が気にすることではない。まして友達に負けるなんて小さなことだ。
効率の悪い生き方だって、時には大事だ。知識は今やインターネットでお手軽に調べられるが、頭の引き出しに無いと調べることすら出来ない。知識は多い方が楽しめる娯楽が増える。
大人になってからの方がよっぽど見て貰えることなんて無い。見てもらえていたとしても、皆口に出してなんかくれない。自分で自分を認めるしかない。
敷かれたレールを歩くのだって立派な生き方だ。第一自分が身に付けているものを買うお金は、自分の両親が汗水垂らして働いて得たお金だ。
こんなことを読みながら考えて、ああ、私はとっくに熟れた果実になっていたのだと気がついた。
小さな世界の小さな悩み。小さいけれど、でも、その世界で生きている子供にとってそれはとても大きな悩み。
だから青春は青春で、特別なのだ。
成長は不可逆だから。もう二度と、熟れる前の青い自分には戻れないから。
私にはそれが、眩しくて羨ましい。
青く苦い果汁が、私のなかに広がる。
大人になった。大人になってしまったけれど、私は大人になり損ねてしまったから。
友達と部活に一生懸命に取り組む人生の無駄も、引かれたレールを少し飛び越してみるのも今の私にはゆるされていないのだ。
だから私は、この本を閉じた。
跳ねた飛沫の宝石を永遠に抱えていたい青い春だった、