宮沢賢治『注文の多い料理店』
『わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます』
頁を捲った一行目の言葉で、読者は一気に宮沢賢治の世界へと引き込まれる。私たちが大人になるにつれて失っていった何かを、彼は大切に大切に拾い上げて、それを紡いで物語にしているのだと感じる。だから私はこの一行だけで、「どうしてそんなに泣きたくなるような言葉を書くのだろう」と目を潤ませてしまった。
解説には「つめくさの香りがする物語」とあった。アス