Samurai - ライナークニツィアのボードゲーム
もう25年ほどの話である。
新卒で社会人になったそのオフィスの近くに、偶然ボードゲーム屋を見つけた。
凄く小さなお店で、どうやってそんなお店を見つけたのかは思い出せない。
しかしそのお店には当時見たこともなかったドイツをはじめとした外国のゲームばかりがあり、少しお金を払うことでゲーム体験や大会などに参加することができた。
世界にはアナログゲームのデザイナーの専属プロの方が沢山おり、その中でもジレンマ系が得意な、ライナークニツィアのファンになった。
彼の手になるゲームは大半を購入した。
チグリスユーフラテス
ラー
フリンケピンケ
ロストシティ
ぱっと過去の記憶をたどっただけでもこれだけ出てきた。
その中でも一番やりこんだのが、Samurai (侍)である。
このゲームは本当に素晴らしかった。
なんとiPhoneのアプリになっていた!
頑なにAndroidユーザーの私も、iPhoneに変えようかと悩むぐらいである。
何がそんなにいいのか。
それは特殊な勝者を決めるルールにある。
細かいことは省くが、自分の持っている武力を集結して、日本全国に散らばっている兜、仏、田畑のシンボルを集めるのがメインの作業だ。
それぞれ複数のシンボルがあるが、それぞれの得点も異なる。
ゲームの最後に得点を集計して勝者を決めるわけだが、ここに一癖あるのである。
まず、そもそもどれかのシンボルで単独トップ得点を取らなければならない。
いずれもトップを取っていなければ、負けが確定(だれもどのシンボルでもトップを取っていないような状況であればシンボルの総数勝負になるが、それは滅多にない)。
1つでもトップを取った人たちの中で、もう1つ、つまり2つのシンボルでトップを取っている人がいれば、その人が勝利。
ただ中々そう上手くはいかない。
で一番よく発生する勝敗条件、それは —— 何か1つトップを取った人はそのシンボルを除き、残り2つのシンボルの総計で多い方が勝利、というものなのである。
これが本当に素晴らしい。
どれかでトップを取らないといけないのに、それだけでは勝てないのである。
例えば兜を独占して全て手に入れたとしても、他のシンボルを手に入れてなければほぼ負けが確定してしまうのだ。
つまり万遍無く3つのシンボルを集めながらも、どれか一つでトップを取れるよう常に駆け引き、計算をしなければいけない。
どれを集めるか?足らないのは何か?トップを狙ってるやつ以外はどれぐらいあれば勝てるのか?そして、どの相手のどのシンボル収集を邪魔するのか?
選択肢が常にたくさんあり、しかしどれも一長一短。
まさにジレンマを楽しむゲームなのだ。
自分の手元を隠すふすまのような小道具も用意されているから、誰がどのシンボルを幾つ集めているかは、行動を監視し数え続けなければならない。
その上で自分は万遍無く、そして何か一つは突き抜けなければならない。
おぉ、なんとこの世、現代社会の縮図ではないか!?
完全なるゼネラリストではダメなのである。
それでは売りのない、何も出来ない人になってしまうのだ。
かと言って、どれか一つしか出来ない人はつぶしが効かない、機転が利かないということで、それもダメなのである。
何か一つは他の人より抜きんでていて、かつ他のことも平均以上に出来なければならない。
なんと生きづらい世の中なのか!
いやいや、ゲーム自体は本当に駆け引きや自分なりの戦略を考えていくのが純粋に楽しいので、そんなこと考えずともただただ楽しめばいいわけだが。
機会があればぜひ、やってみて欲しい。