第25回 クリード チャンプを継ぐ男(2015 米)
「火曜はロッキー」も今週から新展開に突入します。というのも、ついにスタローンも世代交代というものについて考え始めたのです。
今回紹介する『クリード チャンプを継ぐ男』からシリーズは息子世代に軸が移ります。あのアポロがこさえた隠し子のアドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)が主人公です。
義母メアリーに実子同様に育てられ、エリートコースを歩んでいたアドニスは、父親への憧れとボクサーへの夢を捨てきれず、地位とクリードの名を捨ててフィラデルフィアへ向かい、ロッキーに師事するというちょっと不安を覚える筋書きです。
もはや議論の余地なき爺さんとなって筋肉を失い、息子のセイジまで病で失った直後のスタローンの元に駆け出しだったライアン・クーグラー監督がひょんな縁からこの企画を持ち込むことに成功して今作は作られました。
それまでの主演、監督、脚本全て自分という世界の北野方式をスタローンはやめ、助演兼製作という一歩引いたところから作ったのが勝因だったのでしょう。今作は大評判を呼び、スタローンはラジー賞名誉挽回賞なる変な賞を貰い、アカデミー賞でも助演男優賞にノミネートされる程でした。
ロッキー本来の魅力である王道と家族愛、そしてマイケル・B・ジョーダンのステロイドっぽくないムキムキボディと根性溢れるボクシングシーン、完成度の高い一作です。
クリード チャンプを継ぐ男を観よう!
真面目に解説
隠し子と家族愛
アドニスは隠し子なので施設に入っていました。それをアポロの未亡人であるメアリー(フィリシア・ラシャド)が引き取りに来るところから映画は始まります。
アポロはファイトマネーをちゃんと運用していたらしく、メアリーはアポロが死んだ後も大金持ちです。そしてアドニスを我が子同様に大事に育て、アドニスは大学を出してもらって銀行員になります。
メアリーにとってアポロはかけがえのない夫だったわけですが、それにしたって浮気して作った隠し子を存在を知るや引き取って大切に育ててあげる度量を持った女性がどれほどいるでしょうか?
夫が男といちゃついているのに耐えてきたのを思えば何でもないのかもしれませんが、世の母親がこんな度量の持ち主ばかりなら戦争など起こりません。実態は限りなくブリジット・ニールセン寄りだからこそ戦争が起こるのです。
しかし、アドニスはファイターとしての生き方を変えることができずに死んだアポロの息子なので遺伝子レベルでファイターなのです。
ボクシングと貧困
アドニスは銀行に勤めながら暇を見てはメキシコへ行き、酒場で行われる野良試合に明け暮れています。誰に教わる事もない我流ですが、アポロの息子なのでメキシコのドサ回りボクサーなど問題ではありません。
しかし、アポロの息子なのでそんな楽な試合ばかりやって満足できるようなタマではなく、メアリーにも相談せず銀行を辞め、『ロッキー3』に出てきたアポロがボクシングを始めたジムへと向かいます。
思えばロッキージュニアも銀行を辞めました。ボクサーの息子は銀行員に向かないという事なのでしょう。
ジムはリフォームされて綺麗になっています。仕切っているのはリトルデューク(ウッド・ハリス)なるトレーナー。そう、あのデュークの息子です。
しかし、メキシコで15戦全勝という戦績をアピールしてもアドニスは相手にしてもらえません。金持ちにボクサーは無理というのがリトルデュークの主張です。
至極尤もな話です。金持ちはボクシングをやらないし、やっても大成できないというのは世界のボクシング関係者の共通認識です。ボクシングは貧困から抜け出すためにやるものという美学がボクシングの世界にはあるのです。
そこでアポロは金持ちなのを利用し、頭にパンチを当てたら車(フォード・マスタング)をやるという賭けボクシングを提案し、挑戦してきた世界ランカーを殴り倒します。そして俺も施設育ちだからそれなりにハングリーだという結構筋の通った主張を展開します。
しかし、続いて出てきた世界チャンピオンのダニー・スタントマン・ウィーラー(アンドレ・ウォード)に見事に殴り倒され、アドニスは車を取られてしまいます。
メアリーはそんな息子の秘密の遊びはお見通しで、自力でケツも拭けなくなるほどのアポロの過酷な負傷歴を語って大反対です。メキシコはメキシコでも男を買う程度ならメアリーはこんなに怒らないでしょう。それだけアドニスが大事なのです。
結局二人は親子の縁を切り、アドニスは父の最愛の人が居るフィラデルフィアへと飛ぶのです。
足に来る
そしてアドニスはアパートを借り、ロッキーの店へと向かいます。アドニスは写真を見ただけでどの試合か分かるほどのアポロマニアで、『ロッキー3』のラストの秘密の試合の存在も知っています。
アドニスはロッキーにトレーナーになってくれるよう頼みますが、ロッキーはトミーのトラウマもあってか断ります。
しかし、あんまりアポロに詳しいので親戚か何かかとロッキーは考えましたが、まさかの隠し子だったのでびっくりです。そして自分がアポロを殺してしまったと後悔の念を語り、メアリーと同じような事を言って断っちゃうのです。
そしてロッキーは3戦目の結果を聞かれ、アポロが勝ったと答えます。事実がどうあれ俺のKO勝ちとか言える訳が無いので、アドニスの作戦勝ちです。
その夜、下の部屋の音楽がうるさいので文句を言いに行くと、出てきたのは綺麗なお姉ちゃんです。たちまち態度を軟化させるアドニス。所詮はボンボンです。しかし大丈夫、女に弱くても世界チャンピオンになれるのがフィラデルフィアです。
そして翌朝、アドニスはこれまたリフォームされたミッキーのジムへ向かいます。ロッキーはジムからは手を引き、ロッキーの(後付け)幼馴染のピート(リッチー・コスター)なる男が仕切っています。
アポロの息子なのを隠して会費を払って入会はしたものの、ピートは息子で有望株のレオ(ガブリエル・ロサド)に夢中で構ってくれません。
ボクシングジムなんてそんなものです。よほど有望でないとトレーナーは相手をしてくれるものではありません。出来る事ならアマチュアの会員など取らずにプロだけ育てていたいというのがボクシングジムの本音なのですから。
インファイターアドニス
不貞腐れ気味にアドニスがロードワークに出ると、昨夜の姉ちゃんのポスターが貼ってあります。彼女はビアンカという歌手だったのです。ライブハウスで何か前衛的な歌を披露するのに聞き惚れるボンボンアドニス。
演じているテッサ・トンプソンは海外ドラマでちょいちょい見かけますが、本物の歌手でもあるので流石に上手です。
そしてバイセクシャルであることを公言しています。ホモソーシャルの極致であるロッキーシリーズにはぴったりでしょう。
そしてアドニスはロッキーの仕事を強引に手伝うスパイダー・リコ戦術を取り、アポロとロッキーの特別な絆を利用して「オジキ」と呼んで距離感を縮めるインファイトでロッキーに迫り、どうにかトレーニングメニューを作ってもらいます。
帰ったアドニスがメアリーに留守電を入れていると、またビアンカが音楽を鳴らし始めます。そして唐突に飯に誘いに行っちゃいます。アドニスは男に取り入るのは上手なのにナンパは下手です。
ところがビアンカも満更ではないので上手く行きます。バイセクシャル同士は惹かれ合うというのはLGBTの世界ではよくある話です。そして同性愛は遺伝するというのは科学的根拠はなくとも経験則として広く信じられています。
そしてアドニスはビアンカとフィラデルフィア名物のステーキサンドを食べながらお互いの生い立ちを紹介しあって距離を縮めていきます。
ビアンカは進行性の難聴で、徐々に耳が聞こえなくなるという一昔前のエロゲみたいな設定です。今のところこの設定が生かされているとは言い難いですが。
とにかく現実ではそうはないスピードで二人の愛も進行していくのです。
時代の移ろい
ロッキーは恒例の墓参りに行きます。そこでポーリーが死んでいることが知れるのです。もうポーリーが若い男に入れ揚げるロッキーに嫉妬する姿は見れないのです。何と悲しい事でしょうか。
ロッキーは久しぶりにジムに顔を出します。ピートはレオを見てくれるよう頼みますが、ロッキーの本命がアドニスであり、遺伝子レベルで逆転不可能な事をまだピートもレオも知りません。
そしてロッキーはアドニスを育てる決意を固め、古式に則って鶏を追いかける事から始めさせるのです。
何しろアドニスは自己流で来たのでパンチングボールやスキッピングロープ(縄跳び)、シャドーボクシングといった基本的なトレーニングもやった事が無いので上手くできません。
一方ビアンカとは自宅デートで作曲を手伝っていい事しちゃうほどの仲になっています。勿論女は足に来ることも知らないのです。
足に来るけど…
一方ピートとレオの親子はアドニスと試合をしようと持ち掛けます。明らかに分が悪いのでロッキーは難色を示しますが、アドニスは大乗り気で内弟子宣言をしてアパートを引き払います。
ロッキーはここで初めてビアンカの存在を知り、お待ちかねの「女は足に来る」宣言をして、ポーリーの部屋にアドニスを住まわせます。ロッキーもトミーの苦い経験から、足に来ない範囲で女といちゃつかせといた方が得策と学んだのでしょう。
そして何故かポーリーの部屋にはジュニアの写真が飾ってあり、彼女とバンクーバーへ移住したというあんまり必然性のない設定が語られます。そして部屋にはポーリーの遺品である足に来そうな雑誌が残っています。
そしてロッキーはアドニスを治安の悪い所にあるジムへ走らせます。そしてコネを使ってセコンドやグローブ職人、スパーリングパートナーを揃えて本格的なチームを結成します。
自分で何もかもやっては自分のような根性と筋肉しかないボクサーにしかならない事をロッキーは学んだのです。傭兵のボスとかをやった経験が生きたのでしょう。
そして思惑通り、基礎を身に着けてアドニスはロッキーに似ない本格派のボクサーに成長していくのです。
負けヒロインの攻勢
かくして試合を迎えますが、アドニスがアポロの息子である事をピートは調べて知ってしまいます。ロッキーはここでアポロの息子と知れるのは為にならないと口止めしますが、どうなるかはまあご想像のとおりです。
一方アドニスは緊張しまくっています。グローブをはめた後でウンコをしたいと言い出して試合開始が伸びる有様です。
しかし、試合の方は両者ばっちり仕上げた身体でノーカットで試合をする気合の入りまくったものです。1ラウンド通して殴り合うんだから半端じゃありません。スタローンも若い衆が根性出してくれて嬉しい事でしょう。
とにかく気合が入っているシーンなのでここだけは是非ご覧ください。私はこれを見てジョーダンが出るというので普段はあまり観に行かないスーパーヒーローものの『ブラックパンサー』を観に行きました。
そしてアドニスは2RKOでレオに勝利し、ロッキーの家でビアンカも連れてお祝いです。ビアンカはアドニスに曲なんて作っちゃって、足に来る事をおっ始めます。見ているのは『ロッキー』の頃から居る亀(意味深)だけです。濡れ場なんてシリーズ始まって以来の事です。
しかし翌朝、アドニスをアポロの息子だとピートがマスコミにばらしたせいでニュースになっています。隠し事をしたと怒るビアンカ。ビアンカは気難しい割にチョロいのですぐ仲直りしてしまいますが、アドニスがアポロの息子だというのでマスコミは大騒ぎです。
本場へ行こう
この騒ぎでアドニスにチャンスが舞い込みます。拳銃所持で刑務所に入る予定のチャンピオン、リッキー・コンラン(アンソニー・ベリュー)の収監前の最後の試合のオファーが来たのです。
アドニスを殴り倒したウィーラーとの対戦が決まっていましたが、記者会見でウィーラーを殴りつけて骨折させたため対戦相手が決まらずにいたのです。
ウィーラー役のアンドレ・ウォードもコンラン役のアンソニー・ベリューも例によって本物のボクサーです。この出演が効いてかどっちも世界チャンピオンになりましたが、ウォードの方がずっと成功しました。世の中バランスがとれる仕組みになっているものです。
コンランが当時のボクシングシーンのトレンドを物語っています。刑務所に入る前に試合をというのは成金趣味で有名なあのフロイド・メイウェザー・ジュニアがやりました。
コンランは地元のリヴァプールで試合をします。イギリス人ボクサーは最近のトレンドです。イギリスも国力が衰退し、ボクサーが育つほど貧しくなったという事でもあります。
そもそもアドニスの階級はジュニアヘビー級です。ジョーダンの体格を考慮しての事でしょうが、これも時代の移り変わりを感じさせる設定です。
ボクシングは17階級あり、階級ごとに盛り上がりが異なります。その中でもヘビー級は別格の存在で、少し下の階級はヘビー級で通用しない選手ばかり集まって全くの不人気というのが長年の流れでしたが、近年これは変わりつつあります。ヘビー級だけが特別という時代は終わろうとしているのです。
アドニスは悩みつつオファーを受けることを決意し、ロッキーは心配しつつも最後は根性しかないと原点に立ち返った考えに基づいてトレーニングに入るのです。アドニスが決して天才型ではないのがこの映画の肝です。
筋肉と命は買えない
自らスパーリングパートナーを買って出てノリノリのロッキーですが、どうにも体調が思わしくありません。なんと肺ガンになっていたのです。
エイドリアンがガンで死んだトラウマから化学療法を拒絶するロッキー。しかしアドニスが感づき、ロッキーは分かったような分からないような理屈で強がってそれでも治療を拒否します。でもロッキーも本当は死にたくないのです。
一方アドニスはビアンカが大きなステージに立てるというので応援に行きます。しかし、ロッキーの件でイラついているところへリトルクリード呼ばわりされて喧嘩騒ぎを起こし、留置所でもロッキーに当たり散らします。こういう所はボンボンです。顔を潰されたビアンカにも距離を置かれてピンチです。
もはやボクシングしか残っていないアドニスは、ロッキーが治療をしないと俺もボクシングをやめると脅して治療に踏み切らせます。そして病院でロッキーに見てもらいつつトレーニングを再開するアドニス。考えれば迷惑な話ですが、フィラデルフィアの人は許してくれるでしょう。
そして二人三脚で治療とトレーニングに励む二人。ロッキーは苦しい抗ガン剤治療にどうにか耐えていますが、アドニスも子供の代わりにバイク野郎に追いかけてもらって気合を入れます。
フーリガン
そして二人は敵地リバプールへと乗り込みます。例にもよって記者会見では小競り合いです。コンランが港湾労働者の息子であるという無駄にリアリティのある設定が語られれます。
ロッキーの策略でビアンカもやって来て会場のサッカースタジアムへ行くと何やらプレゼントが届いています。メアリーが星条旗柄トランクスを送ってくれたのです。最後の最後にメアリーはアドニスの挑戦を受け入れてくれたのです。泣かせにきています。
会場に出ればもう完全にノリがサッカーです。リバプール中のフーリガン気質の貧乏人が集まっているのでしょう。
最近はやんごとなき人も観るようになりましたが、それでもでサッカーは貧乏人が主要顧客です。貧しい人達が夢を乗せて応援する、そういうスポーツです。そしてそれはボクシングも同じです。
コンランもコンランで、宴会やサンダーリップの業界でよく見る火を吹くパフォーマンスをしながら入場してきます。金持ちになったとは言えやる方も本質的には観てる方と大差ない人種なのです。
そして今回もリングアナはマイケル・バッファーです。あれで1試合何千ドルか稼げるというのだから楽しそうな仕事です。
最後は根性
前述の通りアドニスは天才型ではないので、コンラン相手に苦戦を強いられます。メアリーもテレビ観戦で見守っています。エイドリアンと言い、ボクサーの妻にはこういうメンタリティが必要なのです。
アドニスはロッキーイズムを発揮して泥試合に持ち込み、コンランと観客を自分のペースに引きずり込むことに成功します。こうなると根性のある方が勝つのがボクシング物の力学です。
それでも実力差があるのでアドニスは実際のボクシングで起きたら100%レフリーストップになりそうなダウンを食らいますが、そこはロッキーの弟子なので根性を見せて起き上がります。
目が塞がってドクターチェックを受けますが、見えないはずのドクターの出した指の数をロッキーのサインで答え、これまで作中封印されていたビル・コンティのロッキーのテーマが鳴って大詰めとなります。憎い演出です。
こうなるとアドニスは実質ロッキーなので強く、逆にコンランをダウンさせます。もうメアリーが完全にアドニスが勝つ気でいるのが実にほほえましい。
そしてコンランが起き上がったところで最終ラウンドのゴングが鳴り、僅差の判定でコンランが勝ちます。そしてコンランから次のチャンプだとねぎらいの言葉を貰います。コンランは不良なのでタイマン張ったらマブダチ理論が通じるのです。
そして父親の呪縛から解き放たれたアドニスは観客の大歓声の中でビアンカにキスをしてフィラデルフィアへと帰っていきます。
そしてロッキーはしんどそうにアドニスといちゃつきながら一緒にロッキーステップを上がり、感動の中で映画は終わります。
BL的に解説
アドニス×
ロッキーはジュニアの育て方を間違えたため、彼女とカナダへ逃走してしまいました。カナダは同性結婚のメッカなので、腐りきった私は邪な想像をしてしまったのですが、残念ながら彼女は本当の女性であったことが次作で判明します。
それにトミーのトラウマ級の失敗もありました。ロッキーはあの件で自分には指導者としての才能が無いと痛感したはずです。
しかし、ロッキーは非常に落ちやすい状態にありました。エイドリアンばかりかポーリーもこの世の人でなく、息子は女と逃げた後、リコやリトルマリーも姿がありません。完全なやもめ状態です。
そこへ若い男が再び自分を慕って言い寄ってくるのです。しかも最愛の男の一人であるアポロの忘れ形見です。ロッキーの脳裏にはカリフォルニアの海岸での、ジムの地下での情事が鮮明に蘇るのです。
それでもロッキーは優しいので、アドニスの将来を案じて最初は自制心を見せました。最愛の人の面影を見つつも、その最愛の人を殺してしまったという自責の念があるロッキーの複雑な心境が伺えます。
しかし、アドニスに「オジキ」呼びされ、気を引くために仕事を手伝う求愛に負けてトレーニングメニューを作ってあげます。アドニスの「先っちょだけ」作戦の前にロッキーはKO寸前です。
鶴田浩二やダニー・トレホならともかく、実の叔父の事を本当にオジキなんて呼ぶ人があなたの周りに居ますか?居るとすればガッツォさん寄りの人種だけです。つまりオジキ呼びはホモなのです。
そして、この呼び方をするという事はアドニスはアポロとロッキーが兄弟以上の仲なのを知っているという事です。むしろオジキではなくお袋です。
まさかメアリーもそこまで話すとは思えませんので、これは男同士の直感で導き出された結論です。アドニスは遺伝子レベルでロッキーを知っているのです。
そしてロッキーは愛した二人の墓参りをしてトレーナーとして本格的にアドニスを仕込む決意をします。かねて頼まれていたピートとレオの件をほったらかして。
そしてロッキーはミッキー仕込みの鶏トレから始め、自分に出来ない事は人に頼むという地に足付いたプランでアドニスを仕込みます。勿論女は足に来ると釘をさすことは怠りません。トミーの失敗はアドニスの育成で生きたのです。
期待通りアポロは素質を発揮し、レオ相手に勝利を納め、二人は完全にズボズボの仲になります。
そしてタイトルマッチが来たところでロッキーは肺ガンに倒れます。愛した者が皆去った今、死んでも別にいいと強がるロッキーですが、アドニスは「居候の俺は悲しませてもいいわけだ」と思いっきりジェラシーを燃やします。
しかし、ロッキーはロッキーで心にもない事を言っちまったと後悔します。既に過去の男達(とエイドリアン)への愛をアドニスへのそれが上回りつつあることを体で感じているのです。
オジキのやけっぱちな言動に若いアドニスは露骨にいじけ、警察沙汰を起こしてロッキーを拒絶します。父親に似ずちょっと素直になれないところがあるのがアドニスの萌えポイントです。
そしてアドニスは一緒に戦おうとロッキーを口説いて治療を決意させます。思い出してください。この戦法は『ロッキー3』でいじけるロッキーをアポロが口説いたのと同じ手法です。やっぱりアドニスは遺伝子レベルでロッキーを知っているのです。
そしてアドニスが寄り添い、ロッキーは辛い抗がん剤治療を耐え抜きます。もはや夫婦です。エイドリアンならともかく、ポーリーではこうはいかなかったでしょう。もはやビアンカにはコンドームほどの存在感もありません。
そしてアドニスはコンランとの激闘を経て父親の呪縛から解放され、ロッキーと一緒にロッキーステップでデートをして映画は終わります。肺ガンはどうにかなりそうですが、今度は大腸ガンにならないかだけが気がかりです。
リトルデューク×アドニス
何故リトルデュークはアドニスのトレーナーを断ったのでしょうか?金持ちだからモノにならないというの確かにその通りかもしれませんが、やるだけやらせて判断しても遅くはなかったはずです。
そしてトレーナーの収入はボクサーのファイトマネーの何%という歩合になっています。アドニスはたとえ弱かったとしてもアポロの息子という肩書で一定の人気が望め、金になる選手なのです。
あのデュークの息子であり、自身も世界チャンピオンを育てるほどの手腕を持つリトルデュークがその程度の事が分からないはずがありません。それをにべもなく捨てた。裏が無いと説明できません。
思うに、リトルデュークはアポロが嫌いなのではないでしょうか?『ロッキー5』でロッキーがトミーに入れ揚げたせいでジュニアはグレかけました。同じことがデューク父子の間でも起きていたとしたら?
デュークにとってアポロは最愛の人でした。ロッキーはトミーを兄弟のように思っていたと言っていましたが、デュークはアポロを息子も同然などと言っていたのです。リトルデュークが面白いはずがありません。
リトルデュークにとってアポロは大好きなパパを取った男です。面倒見の良いデュークの事ですから、アドニスも孫のように可愛がってくれたのでしょう。だとすればリトルデュークにとってアドニスなど顔も見たくない相手なのです。
リングに無理矢理上がったアドニスだって、相手をしなければいいものを、わざわざ自分の育てたボクサーに相手をさせて始末するのです。
これは間接レイプです。俺こそがデュークの息子だ。お前なんて使用済みコンドームだ。デュークを取ったアドニスに、アポロにそう思い知らせる為の嫌がらせです。
しかし、二人の仲はこの後思いがけない方向に進展していくのです。
アドニス×コンラン
コンランは無教養な貧しい港湾労働者の倅であり、ボンボンで七光りのアドニスに激しい敵意を燃やしています。
その一方で自分は地獄を見て富を掴んだ男であり、リバプールの貧しい人達の代表である事に強烈な自負を持っており、収監前に試合をして妻子に金を残しておこうと思う程度には家族思いです。
アドニスとの試合をコンランは嫌がりますが、妻子の為ならと渋々承知します。根は優しい男です。そう、ロッキーのように。
そしてリバプールは港町です。BL的理論で読み解けば海の男は勿論ホモですが、イギリスの場合もっと根が深いのです。
英国海軍は元をたどればバイキングの子孫のホモ貴族が船乗りを誘拐してこき使い、世界中で女子供を犯して回っていた海賊です。同性愛の蔓延が健軍以来深刻な問題としてついて回っているのです。
しかし現代に至っても英国海軍の実に半分は男性経験の持ち主であるとされ、ウリ専に機密を漏らすアホが問題化しています。スナックの姉ちゃんに漏らす我が国は何と健全なのかと感動さえ覚えます。
海軍出身の船乗りが多いのは万国共通であり、従ってイギリスの港町はホモが多いのです。貧しい港湾労働者の息子が処女で居られるわけがないのです。まして不良少年ともなれば尚の事です。
しかし、コンランの予想に反してアドニスはロッキーによって男の中の男に仕込まれており、大苦戦の末にかろうじて勝利を拾ったコンランは、アドニスに次のチャンプだと激励の言葉を残して刑務所へと入るのです。
刑務所でいじめられるのは、一に警官で二に有名人です。コンランの尻にガッツォさんの仲間の熱い視線が注がれます。家族思いのコンランなので、家族の件で脅しをかけられれば尻を差し出してしまうのです。
アドニスもいずれ強敵に敗れてベルトを失う時が来ます。その時コンランが現れて再起を促し、一緒にリバプールの港を走り込み、ユニオンジャックをあしらったトランクスを授ける。そんな風景が目に浮かびます。歴史は繰り返します。男の友情はビートルズのように永遠に色あせないのです。
お勧めの映画
独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します。
『ロッキー』『ロッキー』『ロッキー』
『ロッキー2』(1979 米)
『ロッキー3』(1983 米)
『ロッキー4/炎の友情』(1985 米)
『ロッキー5/最後のドラマ』(1990 米)
『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006 米)
『クリード チャンプを継ぐ男』(2015 米)
『レイジング・ブル』(1980 米)(★★★★★)(上品なボクシング映画)
『リベンジ・マッチ』(2013 米)(★★★★)(そして悪魔合体)
『ランボー』(1982 米)(★★★★★)(根暗な側面の出たスタローン)
『エクスペンダブルズ』(2010 米)(★★★★)(ねじの外れたスタローン)
『ベスト・キッド』(1984 米)(★★★★)(空手バージョン)
ご支援のお願い
本noteは私の熱意と皆様のご厚意で成り立っております。
良い映画だと思った。解説が良かった。憐れみを感じた。その他の理由はともかく、モチベーションアップと資料代他諸経費回収の為にご支援ください。
私は限りなくコンラン寄りの出自です