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三鷹歌農書 181-200


霜月もみどりの若さ競ふらしホップ実ればイチョウ葉を出す
三鷹歌農書 (百八十一)
勢ひにまかせて空へ太りゆく糸瓜、マッコウクジラかお前
三鷹歌農書 (百八十二)
サフランはばくだんだつたか空へ落ちみどり炸裂させんとしをり
三鷹歌農書 (百八十三)
豊かなる夕焼け雲の太れるを畝のサツマイモの頭(づ)をみて想ふ
三鷹歌農書 (百八十四)
白昼の眼底写真まぢまぢと葡萄ひとつぶ見つめてしまふ
三鷹歌農書 (百八十五)
崩落をめざすゴーヤが重力に任せて種を実の底へ遣る
三鷹歌農書 (百八十六)
開きひらき開かず締むるキャベツにも思春期きつとあるのであらう
三鷹歌農書 (百八十七)
秋ぞらに足場築かんともがきつつ木通(あけび)とホップが蔓絡めあふ
三鷹歌農書 (百八十八)
竜田姫カブにダイコンニンジンも引き連れ土の中も華やぐ
 三鷹歌農書  (百八十九)
ヘブンリーブルー放ちて天空の青き力を吸はせる慣らひ
三鷹歌農書 (百九十)
締め殺さんとせしや或いは縋しりかヘビウリ干からびて葡萄の枝に
三鷹歌農書 (百九十一)
ヘビウリの赤くなりたる腹を捌き種取るはわれとヘビウリのため
三鷹歌農書 (百九十二)
健康な人の言ひ分さもあらん雄日柴(オヒシバ)引つこ抜くなりわれは
三鷹歌農書 (百九十三)
さつと揚げさつと茹であげオランダ煮あとはまつたりナスを馴染ます
三鷹歌農書 (百九十四)
ギンナンも足元にさへ及ばざる肌彫るやうな蒅(すくも)の匂ひ
三鷹歌農書 (百九十五)
美しくなりたる分を戻しゆくブドウに星の滅びゆくさま
三鷹歌農書 (百九十六)
降りられず格子の上に自らの重みに堪ふる糸瓜を見上ぐ
三鷹歌農書 (百九十七)
何でもなき者こそなべてを宿せると成り損ねたる茄子(なすび)がわれに
三鷹歌農書 (百九十八)
善哉にせむと灰汁抜きかさねつつ磨きあげたる櫟の渋味
三鷹歌農書 (百九十九)
葡萄牙ポルトの美酒の転生を梅酒の古りてかぐろきに愛づ
三鷹歌農書 (二百)

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