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三鷹歌農書 721-740

釜に火を起こせば鍋の薄氷にたまゆら靄のたちて消えたり
三鷹歌農書 (七ニ一)
米に水ひと晩吸はせカルデラを蒸籠(せいろ)に作り蒸しやすくせよ
三鷹歌農書 (七ニニ)
宝船のごとくに一輪車(ねこ)に白菜を積み上げてキムジャン(キムチ作り)会場に向ふ
三鷹歌農書 (七ニ三)
鉢巻をほどきハクサイの締まりたる玉取るときの重さが嬉し
三鷹歌農書 (七ニ四)
スタートのレースフラッグ振るごとくふかし布引いて蒸米を臼に
三鷹歌農書 (七ニ五)
搗き始めは潮いくつか餅に生(あ)れど打たるるほどに跡かたもなし
三鷹歌農書(七ニ六)
搗くほどに木臼に餅のいきいきとひかりはなてるほどにつやめく
三鷹歌農書 (七ニ七)
時を継ぎて餅つきうたは武蔵野も「めでためでたの若松様よ」
三鷹歌農書 (七ニハ)
足腰を定めて杵を振り下ろすただ真ん中を打つことをのみ
三鷹歌農書 (七ニ九)
三テコは三人(みたり)の杵の三拍子餅仕上げんとトレモロめきて
三鷹歌農書 (七三○)
岩稜に降りて染み込みゆく雪の割りしハクサイの山に撒く塩
三鷹歌農書 (七三一)
ハクサイの海を渡れる盥ぶね塩揉みせんと鍋を漕ぐなり
三鷹歌農書 (七三ニ)
巨大なる手ごねハンバーグにあらずハクサイ十玉に塗る薬念(ヤンニョム)ぞ
三鷹駅歌農書(七三三)
肋骨に筋肉付けてゆくごとくハクサイの襞にヤンニョムを塗る
三鷹歌農書 (七三四)
大きなる寒牡丹一つ咲かせむとキムチの壺に詰むるハクサイ
三鷹歌農書 (七三五)
横倒しにすれば車輪(ホイール)抱くごとく搗き終へし臼を洗ひ浄めつ
三鷹歌農書 (七三六)
大役を終へし蒸籠を休ませる日向ぼつこをしてもらふなり
三鷹歌農書 (七三七)
餅搗きとキムチ作り(キムジャン)同時進行しヤンニョムからみ餅をいただきぬ
三鷹歌農書(七三ハ)
七草を知りて順番あるも知りカルタみたいと札書く少女
三鷹歌農書 (七三九)
ほつほつとみどりの芽吹く雪の野を七草粥を大鍋に煮る
三鷹歌農書 (七四○)

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