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三鷹歌農書 581-600

手に包み赤瑪瑙(カーネリアン)の晶洞(ジオード)の泥を落として初採りビーツ
三鷹歌農書 (五八一)
ウチュウセンヤサイ見つけてきたる子に先に取らせてやるコールラビ
三鷹歌農書 (五八ニ)
去るものは去り実るもの実り師走の空に残るインゲン
三鷹歌農書 (五八三)
草枯れて紅葉も終へし片隅にしばらく春を見するバラたち
三鷹歌農書 (五八四)
あしひきの山に紅葉の降りゆくを見せてくれたるオオシマザクラ
三鷹歌農書 (五八五)
塩揉みにしたれば蕪のみづ溢れ青虫なども出てきたりけり
三鷹歌農書 (五八六)
奥三河古戸(ふつと)の舞の茂吉鬼カグラナンバン三鷹に天降(あも)る
三鷹歌農書 (五八七)
ブランボラーク焼いてブランデンブルク選帝侯の遊歩庭園(ルストガルテン)へと繋ぐ旅
三鷹歌農書 (五八八)
富士山を作つて壊しプールにす落ち葉堆肥の儀式其の一
三鷹歌農書 (五八九)
枯葉火山大爆発後のバタフライがさつがさつと落ち葉を掻いて
三鷹歌農書(五九○)
もやもやがやや晴れやかにダイコンを細かく切りて篭に入れ干す
三鷹歌農書 (五九一)
雪山の午後に溶けゆく雪のごと白ブロッコリーにオイルと塩を
三鷹歌農書 (五九ニ)
冬の日を咲き果(おほ)せたるくれなゐの深き薔薇(さうび)に歌人を見たり
三鷹歌農書 (五九三)
紅葉(もみぢば)を風が攫つてゆくまへに茶葉にせむとて摘む万里香
三鷹歌農書 (五九四)
さあ冬だ咲きまくるぜとわが予後などお構ひなしに伊太利亜野良坊(チーマ・ディ・ラーパ)
三鷹歌農書 (五九五)
咲き残る花も絶巓攀づる者も空に引き寄せられて放たる
三鷹歌農書 (五九六)
寸胴に醪(もろみ)おとせば匂ひたつ芋の酒精の見えぬオーロラ
三鷹歌農書 (五九七)
今か今かと目守(まも)る最初の初垂(はなた)れの滴の落ちて香りが爆ぜる
三鷹歌農書 (五九八)
澄み過ぎず濁りすぎずの薄霞コガネセンガン壜に眠れる
三鷹歌農書 (五九九)
蒸留器の底を焦がしてしまへどもこれぞ燻製酒(ラオホ)と肯ふわれら
三鷹歌農書(六○○)

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