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三鷹歌農書 2421-2440

サンザシの横の無花果サンザシを誘ひ挿し木の芽をふくらます
三鷹歌農書(二四二一)
イチジクが扇のやうな芽を吹きて挿し木仲間のサンザシを呼ぶ
三鷹歌農書(二四二二)
流星を子らに降らすと公園の実のたわわなる公孫樹に登る
三鷹歌農書(二四二三)
柄に二つ離れぬままに地に落ちて離れぬままにギンナン摘まる
三鷹歌農書(二四二四)
銀杏を枝に足掛け揺り落とす仙人役を引き継いでもらふ
三鷹歌農書(二四二五)
落とししは残さず集むギンナンを拾ふに飽きし子ら遊ばせ
三鷹歌農書(二四二六)
水吸はせ銀杏の実の肉を剝ぐ斯く煩悩を取り除くべし
三鷹歌農書(二四ニ七)
虎穴に入らずんばのわれぞギンナンを揉み洗ひして滑りを取りぬ
三鷹歌農書(二四二八)
ハマグリの子ども両手にあふるるとギンナン洗ひ終へておもふも
三鷹歌農書(二四二九)
天日干し終へしギンナン分けながら喜ぶ顔をおもふよろこび
三鷹歌農書(二四三○)
祖父(おほちち)の居間の瘤洗ひの柱トロンボンチーノの奇形果の一つに
三鷹歌農書(二四三一)
イチジクにカミキリ見つけ投げ飛ばすかつて昆虫少年なりしは
三鷹歌農書(二四三ニ)
雨降れば馬ふん堆肥を押しあげて村落つくるごとキノコ出づ
三鷹歌農書(二四三三)
ズッキーニから南瓜へと色変へてトロンボンチーノ身を固めゆく
三鷹歌農書(二四三四)
萎れゆく葉を置き去りにヘビウリの一輪ひらききりたる白さ #
三鷹歌農書(二四三五)
葉の枯れて愈(いよよ)ヘビウリ鮮やかに独り立ちせんと地を目指すらし
三鷹歌農書(二四三六)
ナスの株抜かれてパセリ粲粲と主役となりぬ一瞬なれども
三鷹歌農書(二四三七)
跡形もなく秋ナスの撤去されノラボウ菜の苗待つばかりなる
三鷹歌農書(二四三八)
地に着いてしまひさうなれば指入れてレタスの大き葉を折り取りぬ
三鷹歌農書(二四三九)
ハナアブの縞のハシゴを目になぞりソバの花蜜吸ふ心かな
三鷹歌農書(二四四○)


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