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三鷹歌農書 321-340


明日ひらくつもりなりしが寒気来て爛れるごとく萎るるオクラ
三鷹歌農書 (三二一)
トルネードみどりあかるく列なして巻き始めたるハクサイ畑
三鷹歌農書 (三ニニ)
金華山はPapa Gontier(ゴンティエ親爺)とMadame Hoste(オスト婦人)の嫡子にてレディー・ヒリンドンとも                三鷹歌農書 (三二三)
絹ずれの匂ひをレディー・ヒリンドン洩らしつつ蕾ほぐされてゆく
三鷹歌農書 (三二四)
行進を一花(いつくわ)合図すマーチングバンドあるいはサフラン区画
三鷹歌農書 (三二五)
刀豆の脱皮と言はむ色硬さあかがねに身を絞りてゆくを
三鷹歌農書 (三二六)
蛤のましろき足のするり伸びうごきだしたるソラマメのたね
三鷹歌農書 (三二七)
パイナップルセージ咲き継ぎ散り敷くを目に痛きまで時間は裸
三鷹歌農書 (三二八)
もふもふのうごきだしさうなるすがたアーティチョークの花枯れ果てて
三鷹歌農書 (三二九)
ローゼルの発酵ハニーぷくぷくとルビーの泡の弾けて薫る
三鷹歌農書 (三三◯)
外側の花弁を盾にオフィーリア傷つきながら咲く秋薔薇(あきさうび)
三鷹歌農書 (三三一)
標高四十八.◯七センチを目指すなる黄金千貫のモンブランなり
三鷹歌農書 (三三二)
先つぽのフサフサ摘んで引つぱつて針をみちびく数珠玉通し
三鷹歌農書 (三三三)
羽根に角、牙の代はりにトンガラシ着飾つて秋の季節を踊る
三鷹歌農書 (三三四)
摘まれてもダンスは続くヒソップにトゥルシー統べて茶碗にボレロ
三鷹歌農書 (三三五)
空青く地にあかあかとラズベリー分かりやすさを秋は良しとす
三鷹歌農書 (三三六)
打ち伏せる菊花のうへを正装の隙一つなき蟷螂の行く
三鷹歌農書 (三三七)
大根は間引きなくして生らぬもの播きつぱなしは可哀想だよ
三鷹歌農書 (三三八)
熟れすぎの柿とキウイをともに煮て鍋にあかるき枯野色ジャム
三鷹歌農書 (三三九)
稲の秀の刈れよ刈れよと金色(こんじき)の波騒立ちて鎌をいざなふ
三鷹歌農書 (三四◯)


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