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三鷹歌農書 261-280


霜月はもはや名のみか三週間遅れのカブが追ひついてしまふ
三鷹歌農書 (ニ六一)
今年はや花を急ぐやブロッコリ花蕾泡立ちたちまち黄ばむ
三鷹歌農書 (ニ六ニ)
条播きの条に播きゆく麦粒に巻き込まれたるダンゴムシはも
三鷹歌農書 (ニ六三)
火に当ててあまみ引き出すニンジンの文語旧仮名こゑと目の二重唱(デュオ)
三鷹歌農書 (ニ六四)
おほかたは実り垂るるに天上へ無花果のみは打ち上げんとす
三鷹歌農書 (ニ六五)
落ちてきて弾けてあそぶ雨つぶのチコリの花に生(あ)るる星団
三鷹歌農書 (ニ六六)
雨の日は会津歌農書ひもといて一首一首を茶菓子のやうに
三鷹歌農書 (ニ六七)
つやつやのチョコの粒々エビスグサの種集めんと子らの車座
三鷹歌農書 (ニ六ハ)
お手伝ひ「本気で殴ればホームラン!」とトンカチ片手に子は蓮の実を
三鷹歌農書 (ニ六九)
蓮の実のハチミツ煮込みパンに乗せ許さざるべきことまた忘る
三鷹歌農書 (ニ七◯)
ヤマ・ソービニオン三月経て山爽にヌーヴォーの日は友の決めたる
三鷹歌農書 (ニ七一)
菊芋の伸びゆくままにはみ出るを剪定しつつ朝露まみれ
三鷹歌農書 (ニ七ニ)
どこまでも伸びて行きたかつた芋蔓を冠にして健闘讃ふ
三鷹歌農書 (ニ七三)
からからに弾倉乾き撃つばかりオクラの鞘は姿勢崩さず
三鷹歌農書 (ニ七四)
押し込むも逃げんとするも芽キャベツの脇芽刈り取りしつかと立たす
三鷹歌農書 (ニ七五)
鼻か尾かはた分身か公案を茄子の突起に示さるるとは
三鷹歌農書 (ニ七六)
霜月の鴨脚樹(いちやう)はいまだあをあをとifはlifeの中身とはいへ
三鷹歌農書 (ニ七七)
アルゲリッチロストロポーヴィチをちこちに花残らせて秋の菜園
三鷹歌農書 (ニ七八)
キャベツ丸ごとダッチオーブンに焼き蒸せば甘藍の名に偽りの無し
三鷹歌農書 (ニ七九)
そのかみの巫山の夢の紅バラの真夜のフレッシュストレートティー
三鷹歌農書 (ニ八◯)

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