私の断片1

私を形作っている言葉たちをまとめました。
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どんな時代になったとしても、多種多様な喜びの息を。
R帝国 中村文則 中公文庫

「人々が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福なのだ」

R帝国 中村文則 中公文庫

「いつかさ」
彼女はそう言い、私の顔を見て微笑んだ。
「いつかあなたが落ちぶれたら、わたしは会いにくるよ」

最後の命 中村文則 講談社文庫

「でも、本当を言うと、俺はそれほど、未来を楽観してるわけじゃないんだ。これは性格かな・・・・・・。もしも君がエリコのことに関係していて、それをやがて思い出して、またおかしくなるかもしれない。それでどうしても、君は生きていくのが、辛くなるかもしれない。ひょっとしたら、君はずっと、このまま治らないかもしれない。もしもそうなって、ずっと考えて、どうしたらいいかを考えて、それでも、どうしようもなかったら」
 強くなってきた風が、窓をカタカタと揺らした。
「俺も一緒に、狂おうかと思うんだ。・・・・・・1人で狂うのは、嫌だろう?」

最後の命 中村文則 講談社文庫

「我々は、限られた範囲での偶然の連続による人生というショウを見せられている観客である」

教団X 中村文則 集英社文庫

幸福とは、世界に溢れる飢えや貧困を無視し、運の良かった者達だけが享受できる閉鎖された空間である。

中村文則『R帝国』
中公文庫

人間とは自分を善人と思いたい種族であり、世界とは無関心の悪によって成り立つ。
教団X 中村文則 集英社文庫

ときどきおれは思うんだ、門を出て小径をトコトコ走り、小径の終わりのあのつるんとした顔の、ほてい腹の樫の木のとこで折り返してくるあの2時間くらい、自由なことはなかったと。全ては死んでいるがすばらしいーーー生きてから死んだんでなく、生きる前に死んでいるのだから。

アラン・シリトー
河野一郎訳
『長距離走者の孤独』集英社文庫

これきり自分は腐ってゆくんだと思った。それでいいんだと思った。早く腐りきってしまえと思った。
 長い人生むだばかり。明日なんかもうない方がいいんだと思った。が、そう思いながら、やっぱり私は、明日がくると、おんぼろ部品で組み立てた自転車に乗って、眠りたりない真っ赤な目をして、工場へ出かけてゆく。
 そんなときふいに、しめった井戸の底から、ぽかっと青空を見たような気持ちだった。

畑山博『つかのまの二十歳』より 
時間のない町
集英社

「善というものは、心の中からくるものなんだよ。善というものは、選ばれるべきものなんだ。人が、選ぶことができなくなった時、その人は人であることをやめたのだ」

アントニイ・バージェス
乾 信一郎 訳
「時計じかけのオレンジ」早川書房

「何かになりたい。何かになれば、自分は生きていける。そうすれば、自分は自分として、そういう自信の中で、自分を保って生きていける。まだ、今の自分は、仮の姿だ。」

中村文則 『何もかも憂鬱な夜に』 真下のノートより 集英社文庫

「こんなことを、こんな混沌を、感じない人がいるのだろうか。善良で明るく、朗らかに生きている人が、いるんだろうか。たとえばこんなノートを読んで、なんだ汚い、暗い、気持ち悪い、とだけ、そういう風にだけ、思う人がいるのだろうか。僕は、そういう人になりたい。本当に、本当に、そういう人になりたい。
これを読んで、馬鹿正直だとか、気持ち悪いとか思える人に・・・・・・僕は幸福になりたい。」

中村文則 『何もかも憂鬱な夜に』 真下のノートより 集英社文庫

僕が早熟を装って見せたら、人々は僕を、早熟だと噂した。僕が、なまけものの振りをして見せたら、人々は僕を、なまけものだと噂した。僕が小説を書けない振りをしたら、人々は僕を、書けないのだと噂した。僕が嘘つきの振りをしたら、人々は僕を、嘘つきだと噂した。僕が金持ちの振りをしたら、人々は僕を、金持ちだと噂した。僕が冷淡を装って見せたら、人々は僕を、冷淡なやつだと噂した。けれども、僕が本当に苦しくて、思わず呻いた時、人々は僕を、苦しい振りを装っていると噂した。
どうも、くいちがう。

太宰治 「斜陽」 新潮社

女らしくするのが嫌だった。優等生らしくするのが嫌だった。人間らしくするのも嫌だった。どれも自分を間違って塗りつぶす、そう感じたのはいつ頃だったろう。器用にこなしていた〈 らしさ 〉のすべてが疎ましくなって、すべてを濾過するように〈 僕 〉になり、そうしたらひどく解放された気がした。女子高に来ると他にも〈 僕 〉たちはいっぱいいて、松生はのびのびと〈 僕 〉であることができた。

松村栄子『僕はかぐや姫』 福武書店

「産んでと頼んだわけじゃないのに生まれてきて、生きるって決めたわけじゃないのに、人間として生きることさえ選択してもいないのに、女性として生きるって決めつけられて何の選択権もないなんて、とても理不尽な話だって昔思ったんじゃないかな。
『ちょっと待って』って言いたかった。だから、男の子になりたいかどうかはともかく、とりあえず女の子ってことはこっちにおいといてって

松村栄子『僕はかぐや姫』 福武書店

裕生の中ではそれは透明な人間性という意識だった。性以前の透明な精神性。

松村栄子『僕はかぐや姫』 福武書店

「美しい女の死はこの世でもっとも詩的な主題である」と書いたエドガー・アラン・ポーは、むしろ生きようとする女の身になって考えたことはなかっただろう。私は誰かの詩に謳われたくはなかったし、死ぬのも御免だった。私は私自身の詩を見つけようとしていたのだ。

レベッカ・ソルニット『私のいない部屋』
左右社

「弱虫は、幸福さえもおそれるものです。綿で怪我をするんです。幸福に傷つけられる事もあるんです。」 

太宰治 人間失格


人間を見る度に、「あれはいつか必ず死ぬ生き物だ」と呟くことにした。多感な時期だった私を苛々させた、看護婦を初めとする様々な女達が目に入る時も、「あれは肉に過ぎない」と呟くことにした。【悪意の手記】

アレックスは笑って「簡単なクイズ」を出してくれた。
「医師である父親と、その息子が交通事故に遭いました。父は即死、息子はまだ息があります。彼はそのまま救急外来に運ばれましたが、そこで彼を担当した医師がいいました。自分の息子の手術は出来ない。どういう状況でしょう?」
その時まさに彼女が目の前にいたから、私には答えが分かった。
「担当医師が母親やった。」
「正解。でも、結構な数の人が答えられへんねん。死んだ父親が幽霊になって戻ってきた、とかめちゃくちゃなこと言う人もおるんやで?世界にどれだけ女性医師がいると思ってんのって。」

西加奈子 わたしに会いたい 
「Crazy In Love」 より 集英社

「言葉がもし改革によって貧困化すれば、思想もまた貧困化する。」

読書について ショウペンハウエル著 
斎藤忍随 訳 訳者あとがき より

「良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである」

読書について ショウペンハウエル著 
斎藤忍随 訳

「汝、非礼な翻訳者よ、すべからく翻訳に値する書物を自らあらわし、他人の著書の原形をそこなうなかれ。」

「読書について」
ショウペンハウエル著 斎藤忍随 訳
『著作と文体』より

いいこと、ジュリエット、このことをよく覚えといてちょうだい、評判なんてものは、何の役にも立たない財産なのよ。あたしたちが評判のために、どんな犠牲を払っても、けっして償われはしないのよ。名声を得ようと躍起になっている者も、評判のことなど気にかけない者も、苦労の多い点ではどちらも同じよ。前者はこの貴重な財産が失われはすまいかといつもびくびくしているし、後者は自分の無関心をいつも気に病んでいるの。そんなわけで、もしも美徳の道に生えているが、悪徳の道に生えている茨と同じほどの量だとしたなら、いったいなぜこの二つの道の選択にあたしたちは頭を悩ますのでしょう、あたしたちは自然のままを、思いつくままを、そのまま素直に信用していればよかりそうなものじゃありませんか?

悪徳の栄 マルキドサド 
澁澤龍彦 訳

自殺と犯罪は世界に負けることだから

中村文則 何もかも憂鬱な夜に 集英社文庫

小さなものを見つめていると、生きていてもいいと思う。
雨のしずく・・・・・・・・濡れてちちんだ革の手袋・・・・・・・・
大きすぎるものを眺めていると、死んでしまいたくなる。
国会議事堂だとか、世界地図だとか・・・・・・・・

安部公房 箱男 新潮文庫

なんということだろう、少々ばかりの力と才能とを持った連中が、得意然とぼくの面前でおしゃべりをしているのに、ぼくは自分の力と自分の才能に絶望しているんだから、神様、あなたは私にいっさいを与えてくださったが、なぜあなたはその半分を差し控えておいて、その代りに自信と自足を下さらなかったのでしょう。

若きウェルテルの悩み ゲーテ 高橋義孝訳
新潮文庫

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