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先生の忘れられない寒冷ギャグ〜『茄子がまま』に~


ギャグの寒さで地球温暖化が止まるなら苦労しないよ。

皆さんこんにちは、ピラミ△です。

実質、北極顔負けなソレでリアルな気温は下がらずとも、体感気温は下がるのが寒いギャグってもんです。サムい、と表現するのが正しいのでしょうか。

ひとのときを想うのがJT。
人の時を凍らすのがSG(サムいギャグ)。

あったらいいなをカタチにするのが小林製薬で、なかったらよかったのがこのギャグ最悪です。「小林製薬」と「このギャグ最悪」を掛けるのはあまりに無理やりですが、今日はわたしがスベる話ではありません。ちょっとスパイクの紐、結びなおしますね。

さて、サムいギャグといえばオヤジギャグ……ですが、ヤツらはどこにでも現れますよね。油断も隙もありゃしないワケです。たとえば、親がテレビを観ながら呟くとか、親戚の集まりで酔った叔父が繰り返すとか、上司が渾身のテンションでぶち込んでくるとか、枚挙に暇がありません。そんな風に、皆さんの脳は知らぬうちにオヤジギャグで汚染されているのです。

そーゆーのが嫌だからハイセンスな仲間のいる環境を選んだのさ。

とか、

周囲のオヤジギャグに対しては徹底的にコレと戦い殲滅した。今の環境には満足している。

なんて人もいるかもしれません(それはそれで息苦しい環境じゃない?という思いはさておき)。

しかし、彼らのようにサムいギャグを忌避している人も、サムいギャグの弊害を甘んじて受け入れている人も、ほぼ全ての人が、かつて一度は通ったであろう、『サムいギャグの源泉地』があるのです。

そう。それは、学校。

そこに潜む、サムいギャグを言う先生こそが我々の通過儀礼的存在です。


小学校、中学校、高校……どのステージにもサムいギャグを言う先生が必ず一人はいる不思議、あると思います。ハンマーブロスの出現頻度を思い浮かべてもらえば大体合ってます。

余談ですが、
・年中半袖短パン小僧
・掃除中に「ちょっと男子ぃ〜!」と怒る女子

こういった存在――実際にいたかどうかは重要ではなく、イメージが結晶化されて、とある世代以降のほぼ全ての日本人の心に住んでいる存在――に限りなく近づきつつあるのが“サムいギャグを言う先生"(以下、サムギャ先生)です。

わたし・ピラミ△が採取したデータによりますと、かつての学び舎にサムギャ先生と呼べる教師がいたか、という質問に対し、実に100%が「いた」と回答しました(調査人数4人・自分含む)。

そんなワケで、ここからはわたし自身の体験談を記そうと思います。サムギャ先生によるサムいギャグ、そしてそこから得た発見とある種の心の動き――それら諸々をこの場を借りて昇華させたい。僕も/私も、その手のギャグ食らったことある〜って人がいたら、なんか分からないけどなんとなくちょっと嬉しい気がします。よく分からないけど。

「なすがまま」

すでにピンと来た方もいるとは思いますが、中学生だった当時のわたしにとって、これはとてもとても衝撃的な発言でした。

世の中にこんなサムいギャグをかますやつがいるのかと。そんな発想があったのかと。

その言葉を発したのは、中学校で理科を担当してくれていたS先生でした。

S先生はとても優しくて生徒から慕われていましたが、時折落とすサムいギャグ爆弾の威力がヤバい、と生徒たちから一目置かれていました。

とある日の授業で、植物の維管束(いかんそく)について生徒に学ばせるため、先生はいくつかの野菜を用意してくれました。

ナス、きゅうり、大根、人参…。用意された野菜は他にもたくさんありましたが、忘れました。例の発言のおかげ(せい)です。逆に言えば、ナス以下、4つの野菜は、時を隔てた今もなお鮮明に覚えています。

S先生は言いました。

「えー、これから野菜を切って、断面を皆で観察しましょう。その前に皆さんに伝えておきたい大事なことがあります

普段は優しく、時におちゃめな先生が、少し真面目なトーンで話し始めたので教室は少しザワザワし、やがて静まりました。大事なことってなんだろう。危ない実験でもするのかな?

おもむろにナスを手にした先生が言葉を続けます。

「えー、『なすすべがない』という言葉がありますね。ナスはこんなにもスベスベなのに、ナススベがないというのはおかしいと思いませんか」

ここで、教室にいた8割の生徒が先生から目を逸らしました。さっと顔を伏せたのは、悲劇が今生まれていることを見たくない、そんな思いからだったのでしょう。

S先生は満足そうにナスを撫でまわしています。

「というのは冗談で、ここからが本当に大事なお話です」

ああよかった。これぐらいで済むなら我々も笑って流せる。人的被害はほぼない。大事な話をする前の合図のようなものだったんだ。徒競走で鳴るピストルのようなものだ。実弾の入った銃口をコチラに向けられた洒落にならないが、空砲を空へと響かせるなら、僕らはただ走るだけだ。

さぁ、重要なこととは何ですか。聞く準備は整っています。クラスの皆の集中力は、あらためてS先生に向けられました。

S先生はナスを頭上に掲げました。そして言いました。

「えー、『なすがまま』という言葉がありますね。じゃあ皆さん、ナスがママならパパは誰なんでしょうか。そう、パパはこのきゅうりなんです! ナスがママならきゅうりがパパ! 勉強になりましたねー! それと……」

こいつは何を言っているんだ。

死角からの攻撃でした。一度、緊張を生み、それを弛緩させ、存分に油断したところを急襲。クラス全体がマヒャドを喰らい、なかには己の死を覚悟したのか、ぎゅっと目をつぶっている生徒もいました。

ナスを持ち、大事な話があると引っ張りに引っ張り、最終的にはサムいギャグを満足げに言い放つ。バラエティー番組の収録だったら全ボツにされたうえで、2度と呼ばれないクラスの滑り方をしていますが、S先生はそこらへんの嗅覚がぶっ壊れているうえに、呆れるほどのライオンハートなので、何なら薄っすら口元に笑みを浮かべております。

飛びそうになる意識のなか、歯を食いしばり、心中で「伝えたいのそれかい!」と礼儀としての突っ込みを入れましたが、その先の記憶はありません。気づけば中学校を卒業していました。すみません、これは嘘です。

さきほど、クラス全員がマヒャドを喰らったと言いましたが、正確にはほんの数人、氷耐性を持つ生徒もおり、彼らはS先生の発言のサムさは「間」や「言い方」に起因するものであり、根幹となるアイディア自体は悪くはないという考えを持っておりました。その考えはひとえに、件の発言がS先生オリジナルであると信じていたからこそでしょう。

しかし、それが借りものであったならどうでしょう。

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