
戦争の森、アルベロベッロへ (古代ローマの遺跡とプーリア州を巡る旅21)
2024年11月7日木曜日(六日目)
3時間のバスの旅

古代には「ネアポリス」と呼ばれた海沿いの古都ナポリに別れを告げ、アドリア海に面した湾岸都市バーリを目指す。
ナポリからバーリへは地図上で見るよりもずっと隔たりがある。
ナポリからアドリア海側へは、イタリア半島を背骨のように南北に貫くアペニン山脈に阻まれ、最短距離で交通網が接続していないためだ。
鉄道では少々便が悪く、私たちはバスを選択した。
ヨーロッパの格安旅行では定番のFlixbus。
09:30ナポリ発→12:35バーリ着という経路だ。
事前に予約して一人7€ほど。
日本の旅行と比べて、事前準備をしっかりとしておくことで交通費が格段に安くなることがヨーロッパ旅行の極意である。
ナポリ中央駅の南側にバスターミナルが集まっている場所があり、Flixbusの乗り場はその中にあった。
看板が出ているので見つけるのは容易い。
3時間ほどバスに揺られた。
戦争の森、アルベロベッロへ

定刻通りにバーリへ到着した私たちは一息つくまもなくバーリ中央駅の券売機でアルベロベッロ行きのバスのチケットを買った。
定刻通りについてくれたおかげで13:05発のバスに間に合いそうだ。
アルベロベッロ。
言わずと知れた南イタリア、プーリア州の世界遺産である。
その変わった響きの由来はこの街の古い呼び名である“Sylva Arboris Belli”=戦争の森から来ているという説が有力である。
この辺りには古くから武器を作るのに適したオークの木々が豊かに茂っていたらしい。
プーリア州に線路を敷く私鉄FSEがTRULLI LINKというバーリとアルベロベッロを直接つなぐバスを出している。
鉄道だと1時間半以上かかるところ、このバスは1時間で着く。料金は片道5€ほど。
乗り場はBARI LARGO SORRENTINOという名前でバーリ中央駅のすぐ南側、バスが出入りする一角にあった。
バスの車窓からは広大な平野を眺めることができた。このあたりのカルスト地形の低地は"イトリアの谷"と呼ばれている。
Hodēgetria型の聖母(左腕で幼児イエスを抱く構図)のフレスコ画が見つかったことが地名の由来らしい。

聖母が指し示すのは人間の救いの源。
人は救われます、ソースはこれです、というような。
この辺りには魅力的な村が点在している。
ロコロトンド、オストゥーニといった土地にも訪れてみたかったがそれはまた今度の機会に。
隣の席の男性がおもむろに柿を取り出して、かじりはじめた。
その汁が服に飛ばないか心配しているうちにあっという間にアルベロベッロまでついてしまった。
とんがり屋根のトゥルッリ

駅で下ろされた私たちは旧市街を目指して歩いた。
駅の近くにとんがり屋根と白い壁のトゥルッリ風の建物に葡萄のつたが絡まっているのを見つけ、期待が高まる。
しかし、それきりトゥルッリらしき建築物は見えてこない。

もしや、アルベロベッロは規模のそれほど大きくない観光スポットなのではないかと心配になりかけた頃、歩いて10分ほどで教会のある小高い丘に着き、そこから旧市街の一望することができた。
不安は一気に払拭された。

トゥルッリは見渡す限りにあった。
さて、散策をはじめよう。
つづく