父親

未来を想像する事が大事だという人もいる
でも私は、過去に遡ってしまう性分だ

ああじゃなければ、こうじゃなければ
ああしていれば、こうしていれば…
過去に戻れないと分かっているのに
後ろを振り返ってしまってばかりだ

私の父親は酒乱だった
いつも優しいのに、お酒が入ると豹変する人だった
今日は大丈夫かな
今日は機嫌が良いかな
今日は大きい声と大きい音でないかな
今日は暴れないかな
今日は外の植木鉢割らないかな
今日は包丁でないかな
今日は警察来ないかな

父親の足音とドアの音で察する
あぁ、怖い音
あぁ、ご飯食べたくない
向こうの部屋に行きたくない
常に物音と顔色を伺う事が身に付いた

さっさと食べて部屋に戻ってた
せっかく母親が作ってくれた夕飯なのに
味なんて覚えてない

音楽かけてイヤホンしてるのに
喧嘩の音が聞こえる
早く終われ、早く寝てしまえ
CDの音が止まった
何の音楽聴いてたっけ、覚えてない
心に残った音は遠くから聞こえる喧嘩の音

当時の私は小学生で
自分の家が異常だと気付かなかった
これが普通、これをクラスメートも経験してて
皆同じ気持ちで、皆同じく我慢して
皆同じく辛い思いしてるって信じて疑わなかった

「皆も辛い思いしてるのに、笑ってて偉いな。
私も笑顔で過ごせるように努力しよう。」

周りの子は昨日見たテレビ話
好きなアイドルの話
好きな音楽の話
好きな子の話
盛り上がってて、楽しそうで
私も皆の輪に入りたくて
学校にいる間だけでも笑って過ごしてみたくて…

でも

私には分からない話で、分からない世界だった
私は、そちらに行けないのだと察した

それと同時に疑問に思った
いつ、テレビ見てるの？
いつ、音楽聴いてるの？

#日記 #昔話 #過去 #トラウマ
#憧れ #暗い